第233話 久しぶりの
すぃっとベッドに寝ていたラファエルの手が、何かを探すように動く。
けれど何処にも当たらず、自分以外いないと気付いてバチッと目が開いた。
「ソフィア!?」
「はい?」
ガバッとラファエルが起き上がる。
ラファエルの動きを追っていた私は、すぐに返事をした。
ベッド脇にあった机の上に、お皿を置いていた態勢のまま。
「………な、にしてるの?」
「ラファエルに甘味をと思って」
夕食には早いし、でもそろそろ起きるかなと思って、昼に出来なかったお茶の準備と合わせ、アマリリスに提案されたホットケーキを用意した。
牛乳でバターも作れて、私はホクホクしていた。
ラファエルの口に合ったらいいんだけどな。
「………」
無言のラファエルにちょいちょいと手で呼ばれる。
素直に近づいていくと、ベッドに上半身だけ引きずり込まれた。
「わっ!? ちょ、ラファエル?」
「………はぁ……」
「………?」
「………何でもない」
「わけないでしょ?」
「………ソフィアが俺より先に起きてることなかったから、ビックリしただけ…」
あぁ、そうだったね。
実際には寝てなかっただけなんだけど。
逆にラファエルが小一時間で起きたことにビックリするけどね。
ルイスにラファエルは睡眠が短いと聞いてなかったら、私はまだこの仮眠室にいなかっただろう。
ライト達が毒殺未遂犯を探しに行ってからすぐにホットケーキを作りに行って良かったよ…
「気分はどう?」
「元々そんなに悪くなかったよ」
「顔色悪かったくせにぃ…」
苦笑するラファエルの顔色を窺う。
………顔色は、戻りつつある…かな。
「美味しそうな匂い。ソフィアが作ったの?」
「私は材料用意しただけ。ソフィーとアマリリスに作ってもらったんだ」
「あの香水臭い女に?」
………アマリリスの事、まだ許せないらしい…
でも、手は出させないわよ。
私の侍女見習いなのだから。
「ちゃんと後ろで監視してたから、怪しい物とか毒なんて混入してないよ」
「それは疑ってないけど。チップも埋め込んだし。そうじゃなくてあの女、料理できたのか?」
「元々器用らしいよ。まぁでないと呪具なんて作れないだろうけど」
「………」
疑わしい目を向けられている。
そんなに信用できないか。
………と思ったけど、ラファエルの視線は何故か私の手に向けられている。
「………まぁ、ソフィアが手を出してないことは確かか…」
「………何故心底安心する……」
あれか。
私の指に怪我がないか確かめていたのか。
ホットケーキぐらいは作れますけど!?
形は歪になるから焼く作業はしませんけど!!
「そんな事言うならあげないよ!?」
「いただきます」
「早っ!!」
一瞬でラファエルがベッドから消え、いつの間にかベッド脇の椅子に座っていた。
「ソフィアも一緒に食べよ」
………誤魔化した…
まぁ、自分の不器用は今に始まったことじゃないから、そんな事で不機嫌になったりはしないけど…
むぅ……
ちょっと料理の練習しよう…
し、刺繍できるんだから、練習したら綺麗に出来るよね!
私は向かい合わせになっていた椅子を、ラファエルの隣に移動させる。
隣り合わせに座って、私はラファエルがホットケーキを口に運ぶのをお茶を飲みながら見た。
「うわ、ふわふわだね。この間のプリンとかいう菓子とはまた違う食感」
「美味しい?」
「うん、美味しいよ。作り方教えてくれる?」
「いいよ」
ラファエルが笑顔で私と話してくれる。
………ああ、やっぱりこれがいい。
この雰囲気が1番好き。
久々にラファエルと2人きりでゆっくりと出来るこの時間が、凄く嬉しいと改めて思う。
あのままラファエルが私から離れていかなくて、本当に良かった。
カップを置くと、目の前に一口サイズに切られたホットケーキが…
………!?
ハッと見ると、ラファエルがニッコリと笑っていた。
これはあれですか……?
あれですね……!?
「ちょ、ラファエル?」
「はいソフィア、あーん」
ラファエルの言葉に確信し、カァッと頬が熱くなっていく。
これは、カップルがする定番の“あーん”ですね!?
ぶんぶんと首を横に振るけれどラファエルは引かず、あまつさえ私の腰をフォークを持つ手とは逆の手で固定する。
「ら、ラファエル!! 私にはハードルが高いと思うの!!」
「何言ってるの。自分から俺に口づけてくる度胸があるなら、これぐらいなんでもないでしょ」
「度胸って何!?」
「大丈夫だよ。ちゃんとソフィア用のフォークだし。本当なら俺のだろうけど、まだ毒が抜けきってるとは限らないし」
「そういう事じゃなくて!! むぐっ!?」
抗議する言葉を発していた隙に、ラファエルにフォークを口に入れられた。
危ないから!!
喉突いちゃうから!!
「美味しい?」
「………ビックリしすぎてそれどころじゃないから…」
「じゃあもう一回」
「もういいよ!?」
慌ててラファエルからフォークを奪い取る。
「あははっ」
私の必死さがウケたのか、ラファエルが声を上げて笑った。
本当に面白そうに。
私はラファエルが声を上げて笑ったことに驚き、そしてつられて笑った。
本当にラファエルが楽しそうで、嬉しい。
そのままホットケーキを食べ終わるまで、ラファエルとの時間を過ごした。
すみません。
この間、小説のプロットから資料から全て消えてしまって、小説は途切れないようにUPしておりますが、プロットの書き直しや、資料再収集を現在している所です。
さらに体調崩したのもありまして、感想に返信もできない状態が続いておりまして、申し訳ありませんがこの状態がまだ続きそうですので、諸々含めてのお詫びと、読んでくださっている読者様に感謝いたします。
落ちついてきましたら、また返信等も再開させていただきますので、ご了承いただければと思います…
シリアス続いてましたので、この後数話はほのぼの系を入れさせていただきます。




