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第224話 思いとは裏腹に⑤




「………ぇ」


ライトがラファエルの元から帰ってきた。

そしてライトから聞いた言葉に、思わず私は唖然としてしまう。


「………」


ライトはいつもの表情で読めない。


「………そ、っか…」


忙しいから当分時間は取れない。

そう報告を受けて沈んでしまう。

ローズもライトが戻ってくるのを待っていてくれて、落ち込む私を見ている。

………何処かで分かっていたけれど…

ラファエルが顔を出さないのは忙しい証拠。

少しでも時間があれば来てくれる。

………ぁ…

私は自分で思ったことに対して自己嫌悪した。

………来てくれる、って……

本当に私はいつもラファエルから来てくれるのを、当然と思っていたんだな…

仕事をしているラファエルの休憩時間を削って私の元へ来させて、私は何も思っていなかった。

呑気に好きなことをして過ごしていた私は…

これで公平だと思っていて、ラファエルに文句を言っていたのだ。

私は本当に…何もかもラファエル任せだったんだ…

自分が気分転換したいときにラファエルに言わずに出かけ、ラファエルが出かけたら文句を言い、咎められたら従者に守ってもらい…

好き、の一言さえラファエルに言わず、ラファエルの言葉を重いと思い、ラファエルの自由に出来る時間を無駄にした。

そして謝りの言葉さえ、ラファエルが会いに来てくれたらと。

何故私は今まで気付かなかったのだろうか…

先程反省し、ラファエルに謝らなければと思っていたのに、出鼻を挫かれ同じ思考がぐるぐると回る。

これが貴族令嬢なら、疑問に思わなかったかもしれない。

ローズに窘められても、それがどうしたと言ったかもしれない。

………時計が心底欲しい。

時間管理さえ出来たら、ラファエルの休憩時間に私から向かえるのに…


「じゃあ、気分転換に街にでも出ましょう」


ローズがそう言ってくれるけれど、私はそんな気になれなかった。


「………ローズ…ひ」

「1人で行けなんて言わないでよ? ラファエル様もソフィアが泣いて部屋に引きこもってたって聞いたら、またご自分を責めるかもでしょ」

「………ぁ…」

「ラファエル様の為にも、出かけて気分を上げましょう。レオポルド様も誘って。それでラファエル様にお土産買って、持って行ってもらいましょう」

「………そ、だね…」


そっか…

差し入れ…

それは私にでも出来る。

仕事で疲れているラファエルに何か甘い物でも――


「………甘味って、ラファエルの作った物ばっかり……」

「………そうね」


疲れをとるのには甘味が1番。

けれど、喜ばせたいのにラファエルのアイデア甘味を持って行っても、食べ慣れた物だし喜ばない……


「どうしよう…」


考えて視線を彷徨わせると壁に並んでいる侍女達が目に入った。

アマリリスが視界に入り、私と視線が合うとあからさまに視線を反らした。

何か言いたそうな顔だった。


「………アマリリス、何?」

「………いえ」

「気になるから」

「………牛乳を手に入れたのだから、生クリームとか作ってショートケーキとか…それこそ卵もあるし簡単なホットケーキとか作れば? ………ぁ…作ってはいかがでしょうか…」

「………」


アマリリスの言葉に目を見開く。


「その手があったわね! ありがとう!」

「ちょっ……!?」


彼女の手を掴んでぶんぶんと振ると嫌がられた。

でも気にしない!


「フィーア、厨房使わせて貰えないか聞いてきて!」

「畏まりました」


見たことない物ならラファエルは喜んで口にしてくれるよね!

ちょっと元気出た。

嬉しくて準備を始めている私を見て、ライトが止めようとしていることなど気付いていなかった。

そんな時部屋がノックされ、私は入室許可を出した。


「ソフィア」

「お兄様?」


お兄様が部屋に入ってくる。

………お兄様がノックしたことに驚きだよ…

今までは無断で入ってきていたのに…


「ランドルフ国を上空から見たいんだ。精霊に頼んで乗せてもらえないかな?」

「え……今?」

「都合悪い?」


ラファエルに食べてもらおうと思った甘味を作ろうと思ってたんだけど…


「失礼します。すみません姫様。厨房は夕餉の支度で忙しそうにしておりました」


フィーアが戻ってきて報告をしてくれる。

………ぁぁ、これはダメだ…


「分かった、ありがとう」

「あ、何か作る予定だった?」

「今予定はなくなったわ。先にお兄様の予定を済ませてしまいましょ」


夜になったら厨房は空くはず。

その時でいいやと私は甘味作りを後回しにした。


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