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第22話 お仕事頂きました?




ラファエルに研究室に招き入れられたのは、あれから一月経った時だった。

研究室の人間にも根回ししなければならず、結構時間がかかったらしい。

申し訳ない…

私も手伝えることがあればと言ったばかりに、逆に手間をかけたようだ…

………で


「………ぁの、ラファエル様……?」


研究員もいる前で、ラファエルご所望の口調は出来ず、王女口調でいくしかない。

おずおずと話しかける。


「ん? 何?」


作業用の眼鏡……ゴーグル…? を外しながら私を見てくる。

機械技術が発達している国だから、当然色々な設備があるわけで。

日本で言う工場みたいに、色々な機械が置いてあった。

金属も当然あり、ハンマーやドリルなど見覚えがある工具は勿論、マルノコ?とか電動で使う工具とか沢山あった。

………これ、ゲームだから?

え?

普通の思っていたゲームの王宮内と全然違うんだけど……

まぁ、それは置いておいて……

火花が出るから目を守る為にゴーグルを付けているラファエルも格好良い……

って!

そ、それも置いておいて!


「あ、あの……私お仕事のお手伝いに来たはずなのですが……」

「うん。ちゃんと目の前にあるでしょ」

「………」


目の前…

私の座っている所の前にある机の上に、物はある。

………あるのだけど……


「………お茶にお菓子……」

「うん。ソフィアの仕事。俺の目の届く所にいること。それに今はティータイムの時間だろう」


………

………………

………………………

ニッコリ笑って言い切られると、突っ込めなくなる。

暫く固まったじゃん……

何この状況。

え?

私はラファエルと一緒にランドルフ国の借金をどうにかするためにここに来たんだよね?

ラファエルの仕事姿をのんびり眺めているのが仕事?

………え?

馬鹿にされてる?

と思うけれど、満面の笑みを浮かべ、幸せそうに私を見てくるラファエルの顔には嘘偽りない。

マジでこれが仕事……?

納得してはダメよソフィア!!

仕事って言うのは汗水垂らしてお金を稼ぐことでしょ!!

何この目の前にあるお菓子!!

見るからに高級品なんだけど!!

日本のタルトみたいな物や、ティラミスみたいなケーキ並びすぎだから!!

ちょっとこれ何処から調達してきたの!?

今のこの国の状態で何贅沢品を買ってきてるの!?

サンチェス国でもこんなケーキは贅沢品として貴族以上しか食せないわよ!?

民はショートケーキみたいなものの、スタンダードなケーキしか食せない。

そのショートケーキも高級食材を使うと原価が高くなって食べられない。

だから代用品で作る為、ハッキリ言って甘くないし、決して美味しいとは言えない。

砂糖や卵みたいな物も使えないのだから。

………まぁ、そんな美味しくないケーキを、学生時代に腹痛になるほど限界まで挑戦していたところをラファエルに見られた私ですけれど……

………ぁぁ、黒歴史……

何故あれが良いと思われたんだろ……

本当にラファエルの女性のタイプが分からない……


「ラファエル様! 無駄遣いしてませんわよね!?」

「してないよ。それ俺が作ったヤツだから」

「………ぇ……」


作った?

え?

誰が?

ラファエルが?


「ええ!?」

「昔から少ない材料でそういうの作るの得意なんだ。遠慮せずに食べな」

「………い、頂きます…」


ラファエルが作った物を無駄には出来ない。

反射的にそう思い、頂くと言ってしまった。

これでは食べなきゃダメだ。

向こうで一生懸命物を作っている技術者達には悪いけど……

目の前にあるケーキに手を付ける。

一口食べて私は目を見開いた。


「ふぁ……美味しい……」


口に入れた途端、フワッととろけて無くなった。

本当に食べたのだろうか、というくらいに食感がなかった。

でも、口の中に甘みは残っているので、間違いなくケーキは口に入れて食べたと分かる。


「良かった」


………あれ?


「え!? ちょっとラファエル様!? こ、これ、商品化できないんですか!?」


ピンッと閃いた事をそのまま口に出した。


「………ん?」

「わ、私、サンチェス国でもこんな美味しい物食したことありませんわよ!?」

「え、そうなの? 在り合わせで作ったんだけど……」


マジか。

どんだけ女子力高いの。

わ、私、絶対ラファエルに食事を作れないわ。

お菓子がこれだけ美味しく作れるのなら、絶対料理も上手いはずだもの!


「げ、原価はいくらですか!?」

「原価って……ん~? 全部合わせて民一人の六食分、ぐらい?」

「………」


え?

それは安すぎるんですけど……

だって私の目の前にあるケーキの数は、ホールに換算しても20個ぐらいになりそうな程、色々な種類が並んでいるのだ。

これ全部食べたら私太るから!

それ以前に食べられないから!

………ってそれは後回し!!


「こ、これ、ぼったくり金額でサンチェス国貴族に売れば借金かなり減らせるじゃないですか!!」

「………ソフィア、自国の貴族相手にぼったくるつもり?」

「貴族は見栄張ってなんぼです!」

「………キッパリと言って良いことじゃないからね、ソフィア…。そもそもそんな言葉が出てくるぐらい追い詰められてるのか?」


ラファエルの言葉にハッとする。

わ、私ったら王族にあるまじき言葉を…

民を大事にって言った口で、民からお金をぼったくるって発想を口に出してしまうとは……

ダメだ……私、仕事貰えなくて焦ってる。

反省……


「ご、ごめんなさい……」

「うん」

「で、でも、許容範囲ぐらいの金額で販売できれば、かなり楽になりますよ?」

「そうだなぁ……」


ラファエルの作業を止めさせて悪いが、私はこれが使えると思った。

この世界の甘味ってあんまり無いから。


「食に関する職人はあんまりいないから、作るのが大変かもしれないけど、今の状態でテイラー国へ機械の販売と糸の販売では焼け石に水だし……試してみるか」

「はい! 私も手伝……えないですけど、応援します!」

「………あれ? ソフィア、何か作るの苦手?」

「う……」


ひょんな事から私の不器用さを知られてしまった。

し、刺繍は出来るよ!

教養だから!!

でもそれ以外してこなかったし!!


「ソフィアの料理食べたいな」


なんか知らないけど、私追い詰められてる!?

応援する! と言ったときに思わず取ってしまった、拳を握って肘を曲げている格好(いわゆるガッツポーズの体勢)で、固まってしまった。


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