第217話 続々と揃いました
牛乳を手に入れた私。
ホクホクしながら宿に向かっていると、コッコッと聞き覚えがある鳴き声が聞こえた。
牛乳を抱えたままキランッと目を光らせる。
………自分で言うなって?
気にしない!!
ちなみに牛乳も持つと言って譲らなかった私と従者の間で一悶着あったけれど、それは省略!!
「鶏ーーー!!」
「うわ、またっ!!」
少し開けた柵がある平地に走り寄る。
「鶏いる!! 卵!! ラファエル、卵貰って!!」
平地のそこら中に卵が放置されていた。
放置されているということは、使わないって事でしょ!!
と、勝手に解釈して笑顔でラファエルに頼む。
卵を指差しながら。
日本の鶏の卵より倍の大きさはあるけど、卵は卵だ!!
ポコッと今生み出されている物もあった。
産んだ鶏は素知らぬ顔でまたその辺りを歩き出す。
「え? これコッコだよな。そのタマゴ? 排泄物だろ? どうするのそんなもの」
お兄様が首を傾げているけれど、説明は後!!
ってか鶏はコッコって言うのか。
鳴き声そのままだな!!
でも気にしない!!
卵の方が大事!!
それに排泄物って事は、使わないこと確実!!
ラファエルが牛乳を貰えるよう交渉していた人と、同じ人に話しかけている。
コッコもあの人が飼ってるの?
っていうか、卵を手に入れる以外の使い道ってなんだろう?
卵は放置されているから……ペット?
「勝手に取っていいって」
ラファエルが交渉してくれて戻ってきた。
私は飼い主だろう人に頭を下げる。
すると向こうも頭を下げて、その場から去って行く。
………あれ?
拾うところ見てなくてもいいのだろうか?
コッコ攫われちゃう危険とか考えないのかな?
取りあえず見えなくなるまで見送って、私は柵の方へ向き直る。
「風精霊、卵集めてくれる?」
『はい』
風精霊に風で集めて貰う。
ソフィーがいつの間にか籠を持っていて、その中に積み上げられていく。
「えへへっ」
つい頬が緩み、多分デレッとした顔になっているだろう。
「可愛い」
ギュッとラファエルに横から抱きしめられる。
「早く宿に行って甘味作りたい~」
「この2つで何か出来るの?」
「2つだけじゃダメだけどね。街で他の材料買う」
2つだけだとバリエーションないし。
ミルクアイスぐらいは作れるかもだけど。
牛乳と氷精霊の氷があれば、アイスは作れる。
でも折角だから砂糖みたいな甘み成分も入れたい。
「後何がいるの?」
「甘みを出す糖を含んだものとかフルーツとかだね」
「それならいくつかランドルフ国に持って帰ろうと思って、前の街で買った物が使えると思うよ」
「あれ? 昨日食べた以外の物も買ってたの?」
「うん。ブラックに収納してもらってるよ」
………成る程。
闇精霊の異空間収納を何気に便利に使ってるね…
「姫様、これぐらいで宜しいでしょうか?」
ソフィーに籠を見るように促される。
「うわぁ!!」
これぐらい、っていうけれど全て回収してくれたらしい。
いくつもの籠に卵がてんこ盛りだ!!
嬉しい!!
………でも、これだけあると全員が持っても籠が余る…
「闇精霊、空間に収納してくれる?」
『分かった』
私も異空間収納を利用させて貰うよ。
闇精霊に収納して貰い、私達は移動を再開する。
宿泊予定の街がもう見えているからと、歩いて向かうことになっていた。
「宿に着いたらまず品質を確かめなきゃね」
「品質?」
「人の口に入れて良い物かどうか確かめないと、甘味作っても食べられないよ」
「………そうだね。食したことない物だからな…」
「ミルンクって馬車の代わりに荷を引く動物、でいいの?」
私はお兄様を見上げる。
「そうだよ。この辺は隣の国との国境に近いから、国外の人の出入りが激しいだろう? ミルンクより馬の需要――というか馬が主流なのは分かるよね?」
「うん」
「だから、馬泥棒とかが頻発するんだよね。盗んで国境出れば暫くは追えないし」
「………ああ、国境出るとき手続きがいるものね」
「そう。自国に帰るときは審査が甘い。でも他国に入るのは向こうの審査が必要になるからね」
「だから盗まれても困らないようなミルンクを、この辺の人は好んで飼うんだ?」
「そういうこと」
成る程。
荷を引かせるのも乗って移動するのも馬が1番。
それ以外の動物には価値がないようなものとして扱われているのか。
「食事もその辺の雑草食べてるみたいだし、口に入れるのだから確かに品質チェックはいるよね」
「それ用に飼ってないしね。卵もちゃんと調べなきゃ」
「………排泄物を加工するって嫌だね」
お兄様の言葉に苦笑する。
確かに食べる習慣がない人にとっての感想は、そんなものだろう。
ミルンクもコッコも私が存在を知らなかったし、数もそう多くはないのだろう。
希少食品ということで、甘味も高価になるのかな。
取りあえず品質チェックを早く行いたくて、街へと急いで向かった。




