第216話 発見しました!!
お父様とお母様にソフィーの養子縁組願いの手紙をしたため、私とラファエルの従者よりお兄様の従者の方がいいとお兄様に言われ、お兄様の影に持って行って貰うことになった。
………用意させた早馬が無駄に…
私達は最後の宿泊の街へ向かっていた。
その途中、食物から植物…つまり木などに実る食物、日本で言うリンゴとかミカンとかそういうのが多くなって来て、またラファエルの目が輝いた。
そしてお兄様との会話が始まったのだけれど…
「ソフィア、アレはどうなってるの?」
「………さぁ?」
今回は何故か何度も私に会話を振ってくる。
………いや、だからね?
私に聞かれても困るんだって…
「そう。じゃあレオポルド殿――」
………なんだろう。
前回のが影響しているんだろうか…
私が妬かないと悔しがっていたし。
………妬いた方が良いのだろうか…
でもなぁ…
この世界がそういうこともある、といったこともあるなら妬くかもだけど、2人とも仕事だしねぇ…
それに楽しそうだし、知らないことを知るのってとても有意義なことだと思うのよ。
2人の交流が親密になれば成る程、同盟国としても良いこと尽くめだし…
う~ん…
そりゃ寂しくなるときもあるけど、邪魔して中断させるのも――
「――――」
「………ん?」
考えていた私の耳に、何か聞こえた。
キョロキョロするも、上空に何かあるわけもなく…
じゃあ、下?
ひょいっと下を覗き込んだ。
その瞬間、私の目がキラリと光ったのが自分でも分かった。
他人から見たら、キラキラ効果が出ているように見えるかもしれない。
「ソフィア、落ちるよ?」
「今すぐ落ちたい!!」
「「「「「「「ええ(はぁ)!?」」」」」」」
「火精霊後頼んで良い!?」
「ちょちょちょ、ちょっと待った!! ダメだよソフィア!! こんな所で落ちたら民にバレるよ!!」
「ラファエル殿! そういう問題じゃないよ!!」
あ、ごめん。
興奮してつい…
ラファエルが狼狽えてる…
「人目の付かないところで下ろして火精霊!」
「はい、1人で行こうとしないのソフィア。何見つけたの」
「牛!!」
「「………はい?」」
「牛がいるー!!」
そう。
私の目に映ったのは日本で見慣れていた牛の姿。
頭数は少ないけれど、この世界にはいないと思っていた牛がいたのだ。
全頭器具が付けられており、おそらく馬の代わりに荷を引かせる牛車用なのだろう。
私はそれに反応したのではなく、牛が出すミルクが手に入るという事に反応した。
「降りる降りる!!」
「ちょ、まっ、暴れない!!」
「あ、すみません」
ガシッとラファエルに後ろから腕ごとホールドされた。
ジタバタとして火精霊を急かしてすみません。
「はぁ。火精霊、降りられる所ある?」
『ある。ちょっと待て』
ラファエルが火精霊に言い、火精霊が民の死角になる森の方へと降りた。
「牛ー!!」
「はい、離れない」
火精霊が地面に降り立った瞬間に、私は火精霊から飛び降りたのだけど、ラファエルに捕まえられる。
「ソフィアがウシって言ってる動物って、ミルンクの事?」
「………」
名前に突っ込んだ方が良いのかしら…
いや、気にしたら負けよソフィア!!
「あのモーモー言ってる動物の事!! ミルク貰う!!」
「………ミルク?」
「あの動物から搾り取れる乳製品!」
「「………?」」
ラファエルとお兄様が首を傾げる。
じれったい!!
「あの動物の乳搾って母乳貰う!!」
「「ごほっ!!」」
単刀直入に言えば2人が咽せ、従者は咽せないまでも最高に変な人を見る目を向けてきたよ。
私主!!
「お兄様交渉!!」
「してどうすんだよ!! 俺が変な人に見られるだろうが!」
「お兄様の名前出して貰ってきてよ!!」
「だからどうしてだよ!! 王太子が変人に思われるだろう!?」
「あ、そう! もう頼まない!! ラファエルお願い! 新しい甘味が出来るわよ!! ランドルフ国独占甘味に――」
そこから先は早かった。
ラファエルとお兄様がまるで競うかのように一瞬で私の前から姿を消した。
私の長い髪が風圧で舞う。
一瞬の間を置いて私が牛がいた方向へ目を向けると、王太子2人が牛を飼っている人だろう男性に凄い勢いで話しかけていた。
「………因みにあの動物ってあの頭数だけかしら…」
「レオポルド様が交渉に向かった国でチラホラと見かけた気がします」
お兄様の影の1人が答えてくれた。
「お兄様に交渉して貰ってサンチェス国で育てること出来るかしら?」
「どうでしょう。世話の仕方が詳しく知らないことには…」
「そう」
それもお兄様に聞いて貰おう。
ここはサンチェス国と他国の国境近く。
辺境の地だからこそ、私の所まで牛の存在が届かなかっただろう。
まぁ、それはそれとして、ミルクが手に入ったら色々出来る~!!
まず何を作ろうかなぁ!
頭に浮かんだ甘味類。
そのせいで私のお腹が鳴ったけれども…
き、気にしない!!
私はホクホクしながら、搾ってもらったミルクの入った容器を持ち、こちらに戻ってきている王太子2人を待っていたのだった。




