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第21話 彼は有言実行者でした




「ひゃぁぁぁあああ!?」


朝一番。

起き抜けに発声練習はしてない。

決して。


「………ん~……ソフィア……煩い……」


私の叫び声に文句を言いつつ、抱きしめてくるのやめて!!

朝目覚めたら、目の前に綺麗な顔があるの見たらこうなるよ!!

あんなに拒否したのに、ラファエルが毎朝私の布団に潜り込んできていて、毎朝叫ぶことになる私。

私は悪くない!!

ラファエルが私の布団に夜中潜り込んでくるのが悪いの!!


「ラファエル! また私の布団に潜り込んできて! じ、自分の部屋で寝て!!」

「………やだ……」


私の胸元にすり寄らないで!!

子供だったらなんともないけど、成人前の男女がベッドの中でやっていい事じゃないと思う!!

私の胸が自慢できるものならば、また話は違っていたのだろうけど!!

顔も普通なら、胸も貧相なの!!

コンプレックスに触れないでぇぇえ!!

それに私を解放するのが毎朝30分ぐらいかかるのはやめて欲しい!

私の心臓が毎朝爆発しそうなくらいになってるの!

心臓爆発したら私死ぬから!!

破裂したらダメだからー!

齢16ってシャレにならないから!!

潜り込まれるようになってから、ラファエルが低血圧なことを知った。

朝に弱い。

それは体質なので仕方が無いのだけれど……!

この体勢だけはダメだからー!


「ソフィア……もうちょっと……寝よ……?」


そんな子犬のような目で見ないで!!

寝起きだから瞳が潤んでるから!!

キュンとしちゃうから!!

コロッと頷きそうになるから!!


「だ、だめ! ラファエル今日も仕事でしょ!?」

「………ん~……休む……」

「だめ!! ちゃんと仕事してちょっとでも借金返さなきゃ!!」

「………」


私の言葉に眉間にシワを寄せてゆっくりとラファエルが体を起こした。

解放された私はホッと息を吐く。


「………くそ……あのクソジジイ殺したら金生まれねぇかな……」


そしてラファエルは寝起きは下町時代の口調――悪いことをしていた時の気性が荒い時の言葉遣いになるようで……

寝ぼけているときとはまた違うラファエルに、私は苦笑する。

甘えん坊だったり、気性が荒かったり、色々なラファエルを見られることは純粋に嬉しいのだけれど…

………潜り込んでくるのだけは、受け入れられないです…


「そ、それより王宮の金の壁を売った方がお金になると…」

「………ぁぁ…あれな……」


ガシガシと頭を掻きながらラファエルがベッドから出て行く。

そうなって漸く私の心臓がいつも通りの動きを取り戻してくる。

………本当に心臓に悪い…


「………ってか王宮潰して壁売ったら、全部返せるどころか数年は民全員に食いもん行き渡らねぇ?」


本気で売ることを考え始めるラファエル。

………ん?

王宮壊しちゃったらランドルフ国の象徴がなくならない?

ランドルフ国の技術研究室は王宮にあるじゃん!!


「ちょ、ラファエル! 研究室までなくなっちゃう!!」

「ああ……チッ」


舌打ちするラファエルに苦笑する。

いつもの彼に戻るまでにもう少し時間がかかりそうだ。

彼がいる限り着替えは出来ないし…

さり気なくシーツを体に巻き付けて夜着姿を隠す。


「………さて……おはよう、ソフィア」


いつも通りのラファエルに戻り、私はまた苦笑してしまう。

こんな風にコロッと態度を変えられる所は、ある意味尊敬してしまう。


「おはようございます」

「………」

「………ぁ、お、おはよう」

「うん。朝ご飯、侍女に頼んでくる」


ラファエルが部屋から出て行って、私は急いでクローゼットに行く。

え?

侍女を待たないのかって?

ラファエルの方が先に帰ってくるの!

もう、自分一人で着ることに慣れた。

元々前世で自分で着てたし、問題ない。

後ろのファスナーとか、ボタンとか、王女としては一人で出来たらマズいんだろうけど、ラファエルに夜着姿を見せ続ける拷問より遙かにマシ!!

着替え終わってホッと一息ついたところでタイミング良くラファエルが入ってくる。

もう、ラファエルは私の部屋に入ってくるときにノックもしない。

だから本当に気が抜けないのよね…

私の言った我が儘が、こんな事になるとは…

ラファエルはどれだけソフィアを好きなのだろう…

………ってソフィアは私……

だって他人事にしないと、私の身がもたないもの…


「ソフィア、また着替えちゃったんだね」


本当に残念そうに言わないで!

毎朝競争してるんじゃないんだから!!


「ら、ラファエルも着替えてきたら…?」

「食事終わったらね。ソフィアとの時間を削りたくないし」


サラッと言われる言葉に、私の体温が上がるからやめて欲しい…


「あ、それともう少しでソフィアと仕事できそうだよ」

「え、ホント!?」

「うん。王の目に触れる事なく、技術研究室に行ける抜け道見つけたから」

「あ、ありがとう…」


忙しい間にもそんな事してたのか……

今、私が王に見つかったらダメだもんね…

第一王子と第二王子をサンチェス国に送っちゃった張本人だから、王の怒りが向いているもの…


「あと少しで一日中ソフィアといられると思ったら、嬉しいね。近いうちに王も落とさないとな」


何かを企んでいるラファエルに、私は身震いする。

げ、ゲームではランドルフ国王は健在で、ラファエルが王太子のハズなんですけど……

早々に王の立場になるつもりですかラファエルさん…

え?

まさか私がいることで変わってるのだろうか…

………いや、ゲームの設定は気にしない。

そう、決めたでしょ。

私はラファエルが、ランドルフ国民が、生きていけるように努力する。

サポートが私の役目だ。

ラファエルの望むままに、協力する。

勿論、ラファエルが間違ったことをしそうになったら、私が止める。

逆に私が間違ったことをしそうになったら、ラファエルが止めてくれるだろう。

うん、大丈夫。

忘れてない。

私は私で、ちゃんとここで生きている一人の人間。

ラファエルを愛してる。

ゲームの世界でも、ゲームじゃない。

私は改めて確認し、ラファエルに笑顔を向けた。


「私に出来ることがあったら、何でも言ってね?」

「ああ。一緒にやっていこ」


微笑みあって、侍女がもってきた食事に手を付けた。


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