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第209話 どうやら罠にかかっていたようです




護衛達と食事をした。

食事処でなんとポテチ――お兄様に提案したジャーガを揚げてシーオをかけただけの菓子が置いてあった。

本当にアイデア採用したんだ…

しかも店にいた客が全員注文しているという何とも言えない状態だった。

食べてみると、やはり日本のと比べるとだいぶ劣るけど懐かしい味がした。

これでコンソメとか醤油とかの味が出来たらいいなと思う。

ラファエルにも食べて欲しくて、持ち帰りできるようにしてもらった。

ラファエルなら他の味も出来るかもしれない。

それが出来たらサンチェス国との共同で出して――


「姫、また頭の中で仕事していませんか」

「………分かる?」

「分かりやすいです。息抜きになっていないじゃないですか」

「なったよ? 民の食事久しぶり。学生時代思い出しちゃった」


あのラファエルに見られた恥ずかしい課外授業の事だけどね!


「今も学生でしょう」

「………そうだった」


ランドルフ国の学園に通っているわ…

行けてないけどね!!

帰国したら多分通えるようになるけど。


「あ…」

「どうかなさいましたか?」

「戻ったね」

「はい?」


宿に戻る途中の畑。

その畑の食物は確か若干成長が遅かったように見えた付近。

色味が均一になっているような気がして、近づいて眺める。


「ん~? 俺には分からねぇが」

「姫様の言う通り戻ってきていますね」


アルバートは首を傾げるが、オーフェスは私の言葉に同意してくれる。


「原因は?」

「川始めの場所を半分、落石により埋まり水の流れが弱くなり、更にその石の上を水が流れ周りの森の方へ流れていました。森の地盤が緩くなり、そのまま放置されていれば森の木々が倒れ、土砂崩れで街は勿論、畑にも被害が出た可能性もあります。ただ、王(の精霊)が事前に気付いて対応したとは思いますが」

「そうね。でも、王(の精霊)の手を煩わせる前に気付けて良かったわ」


精霊の力はあくまで人間の手助けをする程度が望ましい。

大半を精霊の力で解決してしまうと、人間は怠けることを覚えてしまう。

手を抜くことは、息抜きすることは大切。

けれど怠けることは違う。

今の関係が丁度良い。


「姫、少し風が出てきました。お身体を冷やす前に宿へ戻りましょう」


サンチェス国は温かいとは言えど、夕方や夜は多少の温度は下がる。

薄手の服は少し肌寒く感じる事もある。

ライトの言葉に頷き、先を急いだ。

とは言っても、宿との距離はさほどなくすぐに着く。

宿に入って自分に宛がわれた部屋に入ろうとして、独りでにドアが開いた。

ビックリするよりも早く、抱きしめられる。

よく知っている腕の感覚。

ラファエルだとすぐに分かる。


「ら、ラファエルどうしたの…?」

「ごめんねソフィア! 1人にして!」

「………ん?」

「サンチェス国の事に好奇心が抑えられなくて!」

「………ぁぁ、うん。気にしてないよ」


私が言うと、バッとラファエルが身体を離す。

何故か顔色が真っ青だ。


「気にしてない!?」

「え、う、うん…お兄様と良いお友達関係築けているんですもの。ここにいる時ぐらい交流をしていていいよ…?」

「ソフィアが冷たい!!」

「………は!?」


ラファエルが何か言い出したよ!?


「ソフィアは俺と一緒に居られなくて寂しくないの!?」

「え、ぁ…」


散々放置しておいて何を言っているんだろうか……

と思ったけれど、少し考えて納得する。

そういう事か…


「寂しいけど…」

「けど!?」

「男同士の話もあるでしょ? 私だってローズやソフィーと女同士の話あるし」

「………」

「男の人じゃないと分からないこともあるし、私と一緒だと話せないこともあるでしょう? だから寂しいけど、それぐらい我慢できる心の広さはあるつもりだよ」


寂しいけど嫉妬はありませんよ。

私だってローズと話したいこともあるし、ソフィーと話したいこともある。

確かにラファエルが好きだけど、それは異性として。

でも同性の友達と楽しく過ごしたい時もある。

私もしたい時もあるのに、ラファエルにダメだとは言えないでしょ?


「………」


何故許可したのに、ラファエルは頭を抱えて座り込んでいるのだろうか。


「ソフィアは冷たいなぁ」

「………趣味悪いよお兄様。覗き見?」


背後からお兄様の声が聞こえ、ため息をつきながら見ずに返す。


「ソフィアは俺に嫉妬しないの?」

「してどうするの」

「ソフィアの愛は冷たいなぁ」

「………」


お兄様にからかわれるように言われ、私は息を吐く。


「………じゃあなに? 私がみっともなくラファエルに抱きついて「行かないで」って言えばいいの?」

「言って!」

「うん」


………2人同時に同意されちゃった……

ヤケクソで言った冗談だったのに……


「言えるわけないでしょう!?」

「何で! 俺ソフィアに束縛されたい!」

「危ない事言わないで!!」

「危なくないよ! 俺はソフィアを束縛したい! 閉じ込めたい! 愛でたい!!」

「だから声高々に言うの止めてくれる!?」


2人して私を嫉妬させるためにあえて放置してたのか!

そ、そりゃラファエルを独占したいときはあるよ?

でもずっとじゃないし、自分がさせて欲しいことがあるのに、他の人にそれダメって言うことは違うし…

考えていると、2人の王太子にジッと見られていることに気付く。

どうしたら…

護衛達を見ると、いつの間にか全員姿をくらませていた。

………ちょっとー!?

こんな状態のまま放置ですか!?

私はどうしたらいいか分からず、王太子に囲まれたまま暫く立ちすくんでいた。


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