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第201話 意外と知れ渡っていない事 ―? side―




憧れの王宮兵士に所属が決まって数日。

訓練の休憩中、ふと王宮の庭園の方を見た時だった。

王宮兵士の訓練場は王宮の隣にあり、庭園も見える位置にある。


「………あれ…」

「どうした?」

「いや、あの令嬢誰だろうと思って」

「どれ」


先輩が俺の後ろからひょいっと顔を出す。


「あの、レオポルド様の隣にいる令嬢」


庭園の方に人影を見て、レオポルド様は分かったけれど、その近くに女を見て指差す。

首を傾げると、ぱこんっと先輩に頭を叩かれた。


「いった!? 何するんですか先輩!!」

「お前! あの方を知らないとはバカじゃないのか!?」

「え!?」

「どうした」


俺が驚いていると、騒ぎを聞きつけた他の先輩達と同期が数人集まってくる。


「聞いてくれよこいつ! あり得ない!!」

「そ、そこまでですか!?」


そんなにあの女は有名なのか!?

ヤバイ!

仮にも俺は子爵家の出だ。

そして俺を殴った先輩は平民上がりの人。

けれどここでは身分関係なく先輩後輩で序列が決まる。

平民先輩が知っていて子爵の者が知らないとはどういう女なのだろうか。


「何を騒いでいる」


急に威厳ある声が聞こえ、シンッとなった。

俺は恐る恐る振り返ると、そこには腕を組んでこちらを見ているレオポルド様が…

あ、あの女も一緒だ。


「休憩中だろうが、緊張感を全て無くすなどたるんでいるぞ」

「申し訳ございません!」


先輩が謝り、俺達は一斉に頭を下げた。

うぉぉぉ…!

こ、こんな近くにレオポルド様が!!

レオポルド様をこんな間近で見たのは初めてだ。

感動!!


「あら、良いではありませんか。ずっと気を張っていては本当に必要なときにバテてしまいますわ」

「………お前なぁ…」

「怖い顔で見ないで下さいませ。足がすくんでしまいます」

「………嘘つけ」


………え…

女の声が聞こえ、バレないように視線を向ける。

な、なんて不敬な女なんだ!?

レオポルド様になんて事を!!

レオポルド様は凄い御方なんだぞ!?

剣の腕もさることながら、国のために彼方此方動き回られている御方。

尊敬すべき御方なんだ!!


「大体自分が自分を甘やかさないからとはいえ、多少息抜きしておられるでしょう? 自分が良くて他人がダメとは言ってはいけませんわよ」

「………はぁ…」

「失礼だぞお前!!」


もう我慢できない!

俺は頭を上げて令嬢を指差す。

令嬢は口元を扇子で隠しているが、顔は普通に見える。

美形なレオポルド様と並ぶこともおこがましい!!

でかい態度で何を言っているんだ!


「おい! 止めろ!!」

「いいえ、止めないでください先輩!! この失礼な女に言ってやらなきゃ気が済まないんです!! いいか! レオポルド様は優秀な御方なんだぞ!! 優れた者に対してあの言い様は何だ!! 常にレオポルド様は立派なことを考えているんだ!! 常に正しいんだ!! この御方は王太子であらせられるんだ! 無礼な言葉を謝れ身の程知らずめ!!」


シーンと周りの音がなくなった。

フンッと俺はドヤ顔し、女を見た。


「………」


俺の言葉が理解できたのか、女は何も言わない。


「さぁ、レオポルド様にあやま――」


ガンッ!

後頭部に衝撃が走り、俺は痛さにその場に座り込んでしまう。

な、何だ!?


「馬鹿者!!」


至近距離で耳に向かって怒鳴られた。

鼓膜が破れる!!


「!? た、隊長!?」


鬼の形相をした隊長が、顔を真っ赤にして怒っている。

な、何なんだ!?

ふと周りを見てみると、先輩達が真っ青な顔をしている。

同期は首を傾げているが…


「も、申し訳ございません!! ぶ、部下が大変な失礼を!!」


何故か隊長及び先輩達が地面に座り額を地面に擦りつけ、女に謝っている。


「は!? 隊長! 先輩達も何故こんな女に」

「黙れこの痴れ者が!!」

「っ!?」


隊長に怒鳴られ、俺は少し後ずさる。


「………まぁ、いいんじゃ…ないか?」

「………笑わないでいただけます?」


レオポルド様が何故か口元を抑え…多分笑いを堪えているのだろう。

それを女がジト目で見ている。

あ、あの女また失礼な真似を!!


「ま、別によろしいですけれど。わたくしはもうこの国とは接点がどんどんなくなるのですから」

「ちょっと、それはないでしょ。こっちにもどんどん手を伸ばしてもらわないといけないんだからさ」

「もぅ……ちょっとは自分で考えて下さいませ。どんどん楽しようとしてません?」

「ははっ」


な、何を仲良さ気に話しているんだ!

王太子に対して馴れ馴れしい!!


「ここにいたのか」


またなんか増えた!!


「ラファエル殿」

「ラファエル様」


黒髪で背が高くて如何にもデキる人って感じのイケメン!!

王太子と顔見知り……ん?

ラファエル……ラファエル……?

………ラファエル・ランドルフ!?

え!?

何でランドルフ国王太子がこんな所――ってか来国してたのか!?

兵士には何も通達なかったぞ!?


「手続き済んだのか?」

「ああ。済んだよ…後5日間は居られるよ」

「良かったなぁ。来た時に手続きしたのは7日間で、昨日で滞在終了になってたからなぁ」

「延長してくれて助かったよ。どうせならソフィアと一緒に帰りたいし」


………ソフィア…

ああ、王女様だよな。

こんな格好いい男の婚約者としてランドルフ国に行って――

………あれ……?

………“一緒に”帰る…

王女がサンチェス国に……いる……?


「ひゃぁ!?」

「さぁ、ソフィア? 街にデートしに行こうか?」

「い、いきなり触れるのは止めて下さいませ! 心臓に悪いですわ!!」

「だって、可愛いソフィアとデートなんてここ最近出来てないだろう? レオポルド殿と庭園デートしてないで俺とデートして欲しいなぁ?」

「お兄様とデートだなんてするわけないじゃないですか! カサブランカ義姉様に嫉妬されちゃいますわ! そもそもお兄様とデートなんてしたくありませんし!」

「ちょっとソフィア。それは兄に対して失礼じゃないかなぁ?」

「お兄様と一緒に居ると、アイデア出せと煩いんですもの」


目の前で繰り広げられている話に、俺の顔の血の気がサァッと引いていくのが分かった。

つ、つまり……俺がさっきまで叫んで言葉をぶつけていた相手は――


「それにわたくしがここにいると、彼らにはお兄様に失礼な態度と言葉をぶつける、酷く礼儀がなっていない女だと言われてしまいますもの」


口元は扇子で隠したままスッと横目で見られ、冷たい視線を向けられ硬直する。

俺は王女相手に何を言ったんだろうか…

思い出せない――

ぷつりとそこで意識が途絶えた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 自称ヒロインに対しての処罰が残念... あんな事をしでかして、同じ転生者だから、14歳の少女だったから、引きこもりだから...?そんなの言い訳にもならん。 そんなことで減刑を出す主人公に残念…
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