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第196話 違う世界④ ―A side―



少しの睡眠をとった後、侍女の目を盗んで部屋を出てきた。

――はずだった。


「いけません」


王宮の通路で私の前を塞ぐ侍女。

なんなのこいつ。

私は王女なのよ。

侍女風情が私の前を塞ぐなんて何様?


「退きなさい。私は行くところがあるのよ」

「許可致しかねます。まだお身体を休めなければいけません」


さっきからこれ。

ホントに使えない王女ね!

侍女に大きな顔させてるんじゃないわよ!


「退きなさいって言っているのが分からないの!?」


私は手を振り上げ、侍女に向かって振り下ろした。

当たる寸前に、侍女がすいっと身体をずらして避けた。

――なっ!?

その無駄のない動きに固まってしまう。

こいつ、ただの侍女じゃない…?


「………本当にどうされたのですか。手を上げるような御方ではなかったはずですが」

「っ……」


マズい。

本当にモブ王女じゃないとバレてしまうわ。

感情に任せてこいつを殴るような行為はマズいわね。

侍女の目は鋭く私を監視するような目だ。

その時、コツコツという音が背後から聞こえてきた。

振り返ると、私の旦那様が歩いてきていた。

ああ、やっぱり格好いいわ!

こんなイケメンをこんな女がモノにしてるなんてやっぱり許せないわ。

私が代わってあげて正解ね。

顔は気に入らないけど。


「ラファエル様!」


私は笑顔でラファエルの腕の中に飛び込む。


「………どうしたの」

「あの侍女が私の行く先を塞ぐのです! 何か言ってやってくださいませ!」


ラファエルに言われたら退くしかないでしょ!

ふふんっとラファエルに見えないように侍女に笑ってみせる。

――が…


「ラファエル様」

「ソフィー。ありがとう」


………何故、笑い合ってるわけ…!?

ラファエルはこの女を溺愛しているんでしょ!?

私の味方をするはずじゃないの!!

可笑しい!

まさか、私の知らない間にモブ王女から侍女へ気持ちが移ってるわけ!?

愛人として囲うつもり!?

この世界に一夫多妻はないから、非公式で!?

そんな、嘘よ!

そうなったらこの女を奪った意味がないじゃない!!

何のために美しい容姿を捨てて、このブスに乗り移ったと思ってるの!?


「ラファエル様、どうしてです!?」

「今はまだ休まないといけない時期だろう。そんな時に何故外出など希望する。鎖で繋がれたいか?」

「なっ……!?」


く、鎖って…!

ら、ラファエルはこんな性格じゃなかったでしょ!?

真面目で勤勉で誰にでも優しくて国のために自分を犠牲にする人。

だからテイラー国王女と結婚して、冷たいながらも愛情がなくても蔑ろにはしなかった。

そういう人だったでしょ!?

モブ王女を選んで溺愛してたときは信じられなかったけど、モブ王女が大切なら今私も大切にするところでしょ!?


「早く部屋に戻れ」

「っ……嫌よ…」

「………何?」

「嫌よ! どうしてラファエル様はこんな女と笑い合うのです! 私は――」

「俺が愛した女は侍女を大事にする女だ。侍女をこんな女と評する女を愛したつもりはない」

「なっ――」


冷たい目で見られる。

………ま、さか…

ガッと左肩を掴まれ、壁に押しつけられる。


「いっ…!」

「………“ソフィアの身体”に乱暴したくなかったけど」

「!!」


私は目を見開く。

どうして。

何で。

ラファエルと接したのは目覚めたときだけ。

こんなに早く――1日も経たないうちに違うと気付かれた。

いつ…どこで!


「は、離して!」

「断る。ソフィアを返せ!」


ガッと顔を――目から額までをラファエルの手で鷲掴まれる。


「頼む、俺の精霊達。力を貸してくれ! この女の心を無くせ!!」


ぞわりと体中に悪寒が走った。

何かが中に流れ込んでくるような気持ち悪さ。


「嫌!! やめて!!」


このままじゃ、殺される!!

私の意識を精霊に消されたとき、私は死ぬ!

だって、戻る身体はもう――!!

私は必死でもがくけれど、ラファエルの手は両方とも離れない。


「ラファエル様! 精霊の力で人の心を操るのは――」

「禁止されてるのは知ってる! でも、ソフィアは絶対に取り戻す! でなきゃ、俺は生きていけない!」

「っ…」

「究極精霊からの罰は俺が受ける! 俺が眷属の精霊に命令してやらせてるんだ! ソフィアが戻るならそれぐらいなんでもない!」

「ラファエル様……分かりました」


呑気に話してるんじゃないわよ!

こっちは全然よくないわ!

どうにかしないと!!

ラファエルの手を弾こうとして手を上げた瞬間、私の意識は途絶えた。


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