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第192話 捉えられた身体




どぷんっと黒い龍の中に私の身体は飲み込まれた。

うわっ、気持ち悪いっ!!

ドロドロした…ゼリーのぬめりを更に上げたような…

とにかく体中にまとわりついてくる。

息できないし!!

い、いや、頑張ればできるかも…

って、こんなドロドロな所で息したくない!!

見た目こそ固そうだったのに、簡単に黒い龍に入り込めた。

木精霊ジュリの蔦が龍を拘束できたから実体はある。

けれど、私が龍の腹に飲み込まれた。

実体であって実体ではない…?

不思議だな…

ってそうじゃない。

アマリリスは…

辺りを見渡す。

腹の中は薄暗くはあったものの、周りが見えないことはなかった。

傍にライトとカゲロウが来て、前方を指差した。

指された方向を見ると、そこに膝を抱えて意識がないアマリリスがいた。

そして彼女の首に光を放つモノが宙に浮かんだ状態でかかっていた。

――あれか!!

精霊につけるはずの呪いの道具を何故アマリリスが付けているのか。

そんな疑問は後でいい!

アレを壊せば!

私はアマリリスに近づき、ガッと首飾りの形状をした呪いの道具を掴んだ。

その瞬間、ぞわっと全身に悪寒が走った。


「!?」


目を見開き、思わず手を離そうとした。

けれど、手は首飾りに吸い付いているかのように離れなかった。

ライトとカゲロウが気付き、私の腕とアマリリスの身体を引くが、離れない。

とにかくここから出たい。

自由になる方の手で私は外を指差すと、2人は頷いて私とアマリリスの身体を抱え、脱出した。


「ぷはっ!!」


ぬめっとした黒い龍の中から脱出して、漸く息が吸えるようになった。

ドサッと私達は地面に落ちた。

それと同時に――


「っ!?」


首飾りがいっそう光を放ち、その光が私の腕を螺旋状に包んでいく。


「こ、これやばくない!?」

「姫!! 力一杯ソレを引っ張っててください!」


カゲロウがアマリリスの身体を固定。

ライトが私に言いながら、クナイを振り上げ、勢いよく首飾りに振り下ろした。

ガキィッ!! っと吹き飛んだのはライトのクナイの方だった。


「嘘でしょ!?」

「ソフィア様!!」


地上で待機していたヒューバートとアルバートが走り寄ってくる。


「そのままでいてください!!」


ヒューバートが剣を振り上げ、先程のライトと同じように首飾りを切断しようとする。

けれど先程と同じく、吹き飛ばされるのはこちらの武器の方。

アルバートもやってくれたけれど、同じく吹き飛ぶ。


「どうなってんのよ一体!?」


光は腕だけではなく、私の身体にどんどんまとわりついてくる。

そして力が入らなくなってきている気がする。

もしかしなくても、私の命をも吸おうというのか。

やばいっ!

そう思った瞬間、突如としてアマリリスの目が開いた。


「    」


彼女が何かを言った瞬間、私の身体は光に包まれた。

思わず目を瞑り、次に開いたときには真っ白な空間だった。

例の空間かと思ったけれど、違う。

見渡していた視線を元に戻す。


「………一体何をした」

「ちょっとした細工を」


目の前に立っていたのは、出会った頃と変わらないアマリリスだった。

先程までの死にかけの彼女はいない。


「モブ王女。貴女の身体、貰うわ」

「………はぁ!?」

「だってこの私がヒロインなのよ。なのに何であんたが私よりいい思いして、いい生活してるわけ? 同じ転生者なら分かるでしょ。私こそが王女に相応しいのよ!」

「バカかあんた」

「は!?」


あ、つい本音が。

………まぁいいか。


「あんたが今の生活をするハメになったのは、あんた自身の行いのせいでしょ。人の婚約者横取りするわ、人の心操るわ、好き勝手していた報いでしょうが! 王女に相応しい? 1度でも他人のために何かをしてから言いなさいよ! 王女は自己中でいていいわけじゃないのよ! 民のことを考え、民のために動き、初めて認められる。民のための王族なのよ!!」

「煩い!! 偉そうに! まぁいいわ。そこで偉そうにふんぞり返っていなさいよ。もうあんたの身体は私のモノなんだから!」


そう言い残してアマリリスが消えた。


「………嘘でしょ…」


1人残された私は唖然と暫く突っ立っていた。

戻る方法が分からない。

取りあえず1度整理してみよう。

アマリリスと精霊を引き離すため、龍の中に入った。

アマリリスを見つけ、私は迂闊にも何も考えずに呪いの道具に手をかけた。

呪いの道具は私を取り込み、アマリリスに身体を乗っ取られた?

………ということは、アレは呪いの道具ではなく、アマリリスが作った私への罠の道具?

その人に成り代われる…人に乗り移り、主人格になれるような道具かな…

そんなもの、どうやって作ったのか。

これも精霊の力を借りたのだろうか…

呪いの道具はやはり精霊に付けられていると考えていい…?


「私のバカ!!」


気が急いて、バカやってしまった…

………取りあえずここには私しかいない。

本当に乗っ取られたのなら、なんとかアマリリスから私の身体を取り返さないと…

ラファエルやソフィー達が、アマリリスのモノになってしまう。

それは絶対に嫌だ。

私が築き上げてきた絆を、奪われたくない。

この空間は前のとは違うと思ったけれど、やはり私の心の中なのだろう。

………精神なら、精神で対抗しないと、かな…

もしかしたら、外の様子とかアマリリスの心を捉えられるかもしれない。

私はその場に座り込み、目を閉じて意識を集中させた。


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