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第183話 新たなる商品案




「………」

「姫様、何をお考えですか?」

「………ぇ」


ラファエルとお兄様が出て行ってから、私はフィーアに煎れてもらったお茶を飲みながらこれからのことを考えていた。

その時ソフィーに聞かれ、私は驚き顔を向けた。


「………心、読んでるんじゃないの…?」

「よほどの事がない限り読めないようにしています。やはり会話は必要でしょう?」


首を傾げられ、私は苦笑する。

それが人だものね。


「………精霊の契約のことをね。間違いなくラファエルはお兄様の言ったことを実行すると思う。そうなれば、マーガレット嬢やスティーヴン殿の契約も破棄させなきゃいけない。いままで仲良くしてただろう相棒を、王家の…世界のルールに従って引き剥がす事になるでしょ。恨まれるでしょうね」

「………」


私の言葉にソフィーの返事はなかった。

それに失笑し、私はまたお茶を飲んだ。


「大丈夫よ。恨みとか妬みとか慣れてるから。ただ、親しい――親しくなりたかった人との縁は切れるなと思ってね。ちょっと今から覚悟しておこうと思っただけよ」

「………そうですか」


ソフィーはゆっくりと目を閉じた。


「さて……服飾か…」

「姫様?」

「ん~。温泉街のリメイク店、どんな物にしようかなと思って。どうせテイラー国の人も雇ってくれるだろうし、それなら温泉に相応しく浴衣とか作れないかなぁ……」

「良いですね。温泉宿もありますし、室内用、室外でも着たまま行ける物とかで売れるかもしれません」


両手を合わせながら笑ってくれるソフィーに私も微笑む。

………良かった。

もうソフィーの顔に憂いはないようだ。

本当に倒れてから青ざめた顔とか泣きそうな顔とかしか見てなかったし…

………ソフィーもお兄様に叱られたのかな…

イヴとダークが全て報告しているのなら、ソフィーの正体を知ったはずだ。

本当の妹であり、精霊だと。

………でも、その件に関してはお兄様は私に何も言わなかったな…

………私が、お兄様の妹として本当に生きていて良いのだろうか…

お兄様の心が知りたいな…


「うん。折角癒しを求めて来てくれるようにしているんだし、頼んでみる」

「はい。それでしたら巾着とかも売れるかもですね」

「そうだね。他に何かないかな……浴衣だから簪とか髪飾りも本格的に力を入れたら良いかもね…あと扇子とか…」

「そうですね」


アイデアを紙に書き出していく。


「………イヴ、ダーク」

「はい」

「………」

「ちょっと部屋出てて」

「何故です」

「あら、女の子同士の話を是非聞きたいって? じゃあ女の子にしかない話を存分にそこで聞けば良いわ。ソフィー、女の子にしかない月――」


ニッコリ笑って言うと、2人はすぐさま部屋を出て行った。

………あらまぁ…


「………素早かったですね…」


ソフィーも唖然と扉を見ている。

私は苦笑してソフィーを手招きして隣に座るように指示する。

とは言ってもソファーに侍女は座れないから床に膝をついて、だけれども。


「布に関してなんだけどね」

「女性の下着用のですね」

「うん。それの吸収性がいい物と肌に優しい物を探して欲しいの。浴衣を作るとなると肌に優しい物がいいし、重くない方が良い。それに浴衣って生地が薄いイメージがあるからやっぱり月物の時は下着に気を使うし、月物の時に不安があるからそれ専用の物を作れないかなと思って…」


ショーツとか吸収性が良い清潔感ある素材が欲しい。


「そうですね……布製品はメンセー国の特産ですから、そちら方面はレオポルド様を通してしたら良いと思います。確かレオポルド様はそちらにも交渉に行っていたはずですから、繋ぎはあるはずです」

「………この世界の国の名前、何とかならないのかしら……」

「………わたくしも姫様の世界の知識がありますから、それを知ってからはわたくしも姫様と同じく思っています…」


布製品を特産とするメンセー国。

思いっきり綿製品をもじったような名前…

2人して脱力してしまう。


「布に関してはお任せください。レオポルド様にお願いしてみます」


別の紙にレオポルドに交渉して欲しい品を書いていくソフィー。

その横顔を見ながら私は口を開く。


「………大丈夫?」

「え…」

「お願いした私が言えることじゃないと思うけど……お兄様にバレてるんでしょ……?」

「………すみません」

「ソフィーが謝ることじゃないわ。でも、頼みにくいんじゃ…やっぱり私が直接…」

「姫様は安静にと言われたじゃありませんか。それに、人を使うことをいい加減覚えてください」

「うぐっ…」


ソフィーにピシャリと言われてしまい、私は項垂れる。

素直にお願いしよう…


「………そういえばソフィー。話変わるんだけど」

「はい?」

「………ヒューバートとなんかあった?」


ガタンッ!! とソフィーがあり得ない音を出した。

立ち上がろうとした時に声をかけたせいでもあり、思いっきり机の角に膝を打った。


「なっ、なんでですか!?」

「………いや、ラファエルの護衛としてこの部屋に入ってきた時、ヒューバートがチラチラとソフィーを見てたから」

「っ!?」


ソフィーは気付いていなかったのか、顔を真っ赤にした。

あ、可愛い。

もしかして、何か進展あったのかな?

可愛く狼狽えているソフィーが嬉しくて、私は微笑む。


「聞きたいなぁ」

「べ、別に何もないですよ! 妹の誕生日の贈り物選びに付き合ってくれと言われただけで!!」

「デートに誘われたのね」

「デートじゃありません!!」

「でも、2人きりでしょ? デートじゃない」

「そ、そんなんじゃないです!!」


ブンブンと首を横に振るソフィー。

真っ赤な顔で言われてもねぇ。


「デートの時に告白したら? ずっと好きでしたって」

「ず…!?」

「確かソフィーがヒューバートを見るようになったのって、ヒューバートがラファエルの護衛につくようになって間もなくだったわよね。ソフィーが侍女になってすぐだったから一目惚れ的な」

「な、ななな!?」

「で、甲斐甲斐しく訓練場で傷ついた人がいたらチラチラ見てて、私が手当てしに行くって言ったら良い返事して手当てしに行ったり。訓練している騎士の中に当然ヒューバートもいるし、少しでも視界に入るようにして――」

「ひ、姫様!! お、お黙りくださいませ!!」


顔が真っ赤なまま叫ぶソフィーは本当に年相応の女の子で、私は嬉しくてクスクス笑う。


「デート、楽しみだね」

「ですからデートでは!」

「いいじゃない。ヒューバートの予定に合わせてあげられるよう私も協力するし」

「しなくていいです!!」

「ソフィー」


私が鋭くソフィーを見ると、ハッとしソフィーが口を閉じる。


「………私、暫くラファエルと出掛けることさえ出来ないから、ソフィーだけでも楽しんで欲しいんだけど」

「………姫様…」

「私、周りの人も幸せになって欲しいから。いつも私の幸せ考えてくれているソフィーだから、私にもソフィーの幸せを考えさせて」


ソッとソフィーの頬に手を伸ばすと、ソフィーは目を閉じて私の手にすり寄るように寄せてくる。


「幸せに――自分の思うように、楽しく生きてソフィー」

「………ありがとうございます。姫様」


視線を合わせ、ソッと微笑み合った。

さて、ソフィーとヒューバートをくっつけるにはどうしたらいいかな。

私は心の中でほくそ笑んだ。


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