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第18話 本性がバレました




逆上した王子達が、私に襲いかかってきた。

ラファエルが背に庇ってくれる。

私は素早く天井に顔を向けた。


「ライト!! カゲロウ!!」

「「はい!!」」


私が呼ぶとすぐさま天井から降りてきて、兵士もろとも一瞬で王子達を拘束してしまった。

いつ見てもすご技だなぁ…

不意打ちで上からくせ者全員に縄をかける技は、サンチェス国の影なら全員出来るという。

どう訓練すれば出来るんだろうね?

ゲーム設定って何でもありなんだね…

現実なのに…

なんて呑気に考えていた。


「姫!! 何を呑気そうにしてるんですか!! 私はカゲロウに婚約者様を援護するかどうか聞いてこいって言ったのです!! 何故自ら来るのですか!!」


しまった。

ライトの説教が待っていた。

ライトがカゲロウに全員の縄の先を持たせて、ズンズンと近づいてくる。


「………王子相手なら私かなぁって」


へらっと笑って首を傾げてみた。


「“私かなぁ”じゃないですよ!! 怪我でもしたらどうするんですか!!」


………くそう…

やっぱり私の顔では何をしても男をコロッと頷かせられないらしい。

悲しいかな……


「………名誉の負傷?」

「姫が何故名誉の負傷を負う必要があるんですか!! 女性なのですから傷など付けないで下さい!! っていうか部屋から出ないで下さい!!」

「ちょっ…私を深窓の令嬢にするな! ってあれほど言ってるのに!!」

「ランドルフ国に来てからお転婆姫から、普通のお姫様にやっとなって下さったと安心しておりましたのに!!」

「ちょ、酷くない!? 私はお姫様のつもり……じゃないわ!! 王女なんだけど!?」

「あれだけ王女扱いするなと言っておきながら……」

「いつの話を持ち出すのよ!!」


確かに小さい頃、皆に丁寧に扱われるのが苦手だった。

特に影であるライトとカゲロウにされるのは嫌で。

良く口にしていたけれど、もう私は婚約している立派な――

………

………………

………………………ああ!!!!

バッと私は背後を振り返った。

目を見開いているラファエルと目が合いました。

………やらかしました。

隠していた私(前世)の性格………というか口調を、盛大に披露して――しました、よね…?

冷や汗が出てくる。


「ら、ライト…お話の続きは後ほどで宜しいかしら?」


そぉっと視線を外して、クルッとライトの方に体を戻して、おほほ、と笑ってみせる。


「………姫、あまりにも誤魔化し方が下手かと……」

「うっさい!!」


………はっ!!

またやらかした!!

私はバカなの!?

ダメだ!!

ライトと話していると気が抜ける!


「と、とにかく、その者達は牢へ入れておけるかしら?」

「無理でしょうね。入れても王がすぐ出すでしょう。不当な扱いをするな、とか理由を付けて」

「………そ。じゃあ、サンチェス国へ連行しましょうか」


ギョッと第一王子第二王子が反応する。

今まで縄抜けに必死な様子だったのだけれど、私を凝視してくる。


「罪状は何にしましょう?」

「サンチェス国第一王女への暴行、かしら?」


笑って言うと、ふざけるなと罵声が飛んでくる。

未遂だけれど、私に手を出そうとしたのは事実。


「恐喝で充分でしょう。先程の会話は全て私が書面にしておりますので」


ライトが事の始まりから、私が乱入した後のことまで数枚に渡って一字一句、余すことなく書いていた。

流石。

王子達の顔色がもう無くなっている。


「じゃ、それで。二人とも連行お願いね」

「それでは姫の守りが出来ません!!」

「大丈夫よ。ラファエル様がいますもの」


………そう、いるんだよね……

滅茶苦茶視線が背中に刺さってます!!

当分解放されないだろう。

前に影を付けてくれるって言ってたし。

しばらくの間なら二人がいなくても大丈夫だろう。


「………では、婚約者様、姫をくれぐれも宜しくお願いいたします」

「………ああ」


怖い!!

ラファエルさん!

声が低すぎます!!

え、ちょ、私、大丈夫なのかな!?

こっちの方が危険じゃない!?

そんな事は言えず、王子達を連行していく二人を見送った。

見えなくなった直後、ラファエルに腕を掴まれて引きずられるようにして離宮へと連れて行かれた。




バタンと乱暴に扉が閉められる。

わ、私、終わった?

この婚約も白紙になって、私はラファエルに会えなくなる?

………自分でやらかしたこととはいえ、胸が苦しい……

………涙出そう……


「ソフィア」

「は、はい!」


あ……ビクッと大袈裟な程、体が跳ねてしまった。


「怯えなくて良い。怒ってないから」


説得力ありません!!

ラファエルの顔が、滅茶苦茶怖くなってるから!!

眉間のシワが凄いから!!

思わず後ずさってしまった。

その私の行動に、今度は困った顔になるラファエル。


「………ごめん、嫉妬してるだけだから」

「………ぇ……」


何に?

嫉妬する場面、あった??


「俺にはあんな口調で話さないだろう?」

「………口調…ですか…?」


………どっちの?

王女としての言葉遣いはいつもしてるよね?

私の元の口調は、対象じゃないだろうし。

むしろそれはないな。


「ソフィアも素で良いのに」

「………ぇ」

「影と話してた口調。それでこれから俺に話して」

「………ええ!?」


驚いて思いっきり叫んでしまった。

やばいっ!

………と思ったのに、何故そんなに笑顔なんですかラファエルさん……

まさかの、ないと思った口調をご希望ですか……

ラファエル、本当に大丈夫なのかな……

じ、自分で言ってはなんだけど……趣味、悪くないですか……

………悲しくなった……

どうせ私は淑女じゃない!!

だって前世庶民だもん!!

お嬢じゃないもん!!

仮面かぶるの下手だもん!!

さっきまで頑張ったのにぃ!

私はやっぱり王女失格だ……


「………あ、あの……」

「何?」

「………ほ、本当に先程の口調が宜しいのですか…?」

「………言い直して」

「うっ……ホントにさっきので……いいの?」


怖ず怖ずと口に出すと、ラファエルは微妙な顔をした。

………ぁぁ、はい。

お気に召さないのですね……

………もうヤケだ!!


「ホントにさっきのでいいのね! もうどうなっても知らないから!! 言わなきゃ良かっただなんて後から言わないでよ?」

「うん」


ああ、もう!

満面の笑み向けないでぇ!!

罪悪感が半端ないのに!

………絶対にサンチェス国王家に知られたくない!

これでも必死で第一王女してきたのにぃ!

――ああ、でも……

凄く肩の力が抜けた。

肩に重くのし掛かっていると感じていた王女の二文字が、ポロッと落ちていったような……

ゆっくりとラファエルを見ると、首を傾げられる。

………無意識に私を楽にさせる天才なのね…ラファエルって……

ぁぁもう…どうしようもなく……大好き……

ありのままに受け止めてくれるラファエルに、私は助けてもらってばかり。

この恩を返せる日が来れば良いのに。

そう思いながら、私も笑顔をラファエルに向けた。


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