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第178話 単刀直入に ―L side―




ソフィアの顔色に一番最初に気付いたのは私。

話の途中でソフィアの顔色が微妙に変わったから観察していた。

彼らとの間に何かがあったのは間違いない。

けれどソフィアが私に言ってこないのであれば、おそらく本人同士で解決しないといけないことなのだろう。

私はソッとカップを置いた。


「ぶしつけな質問で申し訳ございませんが、貴女達はソフィアに対して何かしましたか?」

「え?」

「………マーガレットがソフィア様に危害を加えたと言いたいのか……ですか」

「言葉遣いはそのままで…ありのままで構いません。ソフィアの態度が気になりましたので」

「ソフィア様の…?」


首を傾げる2人に、私は眉をひそめる。

ソフィアの違和感にも気付いていない…?

私は不思議に思い、ソフィアと彼女たちの学園生活を思い返す。

………ソフィアは繕ってるままだったわね。


「ソフィアは貴女達と親しくなる気は今のところないと先程思いました」

「な、何故ですか!? わたくしはソフィア様と親しくさせていただきたく、こうして面会も申し込んで!」

「………一方的に押しつけられる行為が、ソフィアの負担にならないとでも?」

「え………」

「………どういう意味だ」


マーガレットは唖然とし、スティーヴンは睨みつけてくる。

ああ怖い。

いくらマーガレットを好いていても、位の上の人間に向ける目付きじゃないわね。


「本当に大切に思っているのなら、王宮に来ずに手紙でやり取りするでしょう普通。体調が悪いと毎日ラファエル様から言われてたはずです。懲りもせず毎日毎日。体調が悪い自分の位より上の人間に面会を求め続けることが貴女の言う親しくなる方法ですか」


スッと目を細めてマーガレットを見ると、彼女は息を飲んだ。


「………ぁ…」


そして顔色が悪くなっていく。


「ま、マーガレットは悪くない! マーガレットは心配して!」

「ええ。本当の友人なら見舞いぐらいするでしょう。けれど貴女達はただの公爵伯爵家の者というだけ。ラファエル様やソフィアによって王宮へ入ることを許されてはいない、謁見許可がないと面会できない他の貴族と同じ立場」

「それはっ!」

「貴女達はランドルフ国民でしょう。しかも契約している精霊がいるでしょ」


ハッと2人は私を警戒した。

………何を今更警戒するのか。

自分の秘密を私が知ってるから?


「ソフィアが関係ない貴女達を連れて行くはずがない。契約精霊がいるからこそ連れていったのでしょ。それぐらいソフィアに聞かなくてもソフィアの行動で分かるわよ」


軽蔑した目を私は2人に向けた。

ソフィアが勝手に人の秘密を喋る女みたいに見られたら嫌だし。

私は貴女達の味方ではない。

ソフィアの味方なのよ。


「ならば、究極精霊の力を沢山使用したソフィアがどうなるかぐらい知っていたでしょう。聞いてますよ。貴女達は精霊でソフィアの手助けはしていないと」

「そ、れははぐれて!」

「はぐれたから精霊を使う必要はない? 違うでしょう。何が何でも追って手伝うべきだったんじゃないの? 貴女達にその力があるのだから。結局手助けしたいと口だけで、ラファエル様とソフィアに任せきり。そんな人達がソフィアに近づくことはわたくしは許しません」


2人が言葉も無く視線を反らしたことで、私は失望していた。


「力が強い精霊を使って、ソフィアが無事で済むはずはないでしょう。力が大きければ大きいほど使用する人間に影響する。それはどんなことでも一緒でしょう。例外はない。そんなソフィアを顧みることなく、自分の欲求だけで面会を求め続ける、話すことを求め続ける事が、貴女達の言う親しい人間、ですか」


私は椅子から立ち上がった。


「ソフィアと仲良くしたいという心は本物でしょう。ですが、自分勝手な行動しか取れない人間なら、侯爵家の人間と何も変わりませんね」


ソッと背を向け、私は王宮へと戻るために足を動かした。


「ま、待ってください!!」

「わたくし、ソフィアを大切に出来ない人間とは関わり合いたくありませんの」


足を止め、鋭い視線を向けるとビクッとマーガレットは肩を震わせ俯いた。


「彼女はね自分のことは顧みないのに、わたくしを美しいといつも言って、笑ってくださるの。辛いことがあれば一緒に何日も傍にいてくださるの。けれど自分が陰で何を言われようが気にせず、誰にも言わずに前を向いて歩いているの。でもわたくしが悪く言われていると烈火の如く怒るのよ。そんなソフィアは、誰も知る人がいない国でも国のために歩き続けるでしょう。自分がどんなに傷つこうとも構わず、誰かのために」


ハッとマーガレットが何かに気付いたように顔を上げた。


「………ローズ様はそんなソフィア様に…」

「わたくしはソフィアの泣く場所に、肩の力を抜く場所になる為に来たのです。ラファエル様に言えないこともあるでしょう。女の子ですから。ですからね……」


私はマーガレットから視線を外した。


「自分のことしか考えず、ソフィアの心の内を少しも知ろうとしない人間が近づくことを、絶対に認めないんですよ」


今度こそ私はその場を去った。

………まぁ…ソフィアはランドルフ国で、弱音を吐ける親しい人間を見つけてしまったのだけれど。

やっぱり婚約者の存在に私は負けるのね…

前回サンチェス国に戻ってきたソフィアは、私の知るソフィアとは少し違っていて。

その視線の先にはラファエル様が常に居た。

ラファエル様もソフィアを大切にしてくれてるからいいけどね。

………でも、ランドルフ国でソフィアの味方は少なすぎる。

だからこそ、条件を突きつけて、条件を出されて、今私はここにいる。


「………えらい啖呵切ったな。大丈夫か? お前はまだサンチェス国の人間で、ランドルフ国で諍い起こすのは得策じゃないだろう」

「何を今更。私は1にソフィア。2にソフィア。3、4がなくて5にソフィアなのよ。………ああ、10ぐらいには貴方を入れてさし上げてもいいわよ」

「………そりゃ有り難い」


少しも有り難いと思っていない顔で言ってくる。


「それにしても貴方も不甲斐なかったのね」

「………“も”ってなんだ。“も”って」

「だって、貴方も契約者だって聞いてたから少しはソフィアの盾になれると思っていたのに」

「究極精霊と中精霊を一緒にするな」


目の前の男にため息をつかれる。


「それよ。どうしてソフィアが最上位の精霊と契約できたのよ。そりゃあの子は可愛くて聡明で王女としてやるべき事は何をやらせても完璧! だけれども、あの子の本質は泣き虫のネガティブで同じことで悩んで人に頼れない普通の子なのに」

「………さっきソフィア様を散々褒めてたのに、何故今落とした…」

「それを含めて可愛いでしょう!? 可愛いと言いなさい!」


彼の胸ぐらを掴んで強要するも、彼はソフィアを可愛いとは言わなかった。

………何でよ。


「………俺が言ったらラファエルに殺される」

「貴方ラファエル様の叔父なのに弱いのね」

「………うるせ」


この国の宰相であるルイス・ランドルフに条件を出して、逆に条件出されて私は今ここにいる。

こちらの出した条件は、ランドルフ国への永住権。

その為に公爵の家を捨てていいとさえ言った。

ソフィアの支えになりたかったから。

ソフィアのいないサンチェス国はつまらなく、私は無為な時間を過ごしていた。

だから私の婚約者を探してくれていたレオポルド様にお願いして、ルイスに連絡を取ってもらったのだ。

私では直接連絡を取れなかったから。

連絡受けた後、彼は逆にソフィアの力になりたいのなら、王家に養子に入り書類上で王族になった後、こちらの王族と結婚することを条件にしてきた。

つまり、私がサンチェス国王家に養子に入ってローズ・サンチェスになり、婚約の書類にサインをしてこの国に嫁ぎに来ること。

ソフィアの傍に居続ける一番の方法は、自分がランドルフ国の王族と婚姻する事。

けれど、王族は王族との婚姻が決まり。

だから王族ではない私が、王族になる為の方法はたった一つ。

王家に養子縁組してもらうこと。

サンチェス国王は私に頭が上がらないから許可してくれた。

………ソフィアは王に内緒でしたのではないかって思ってるみたいだけれども。


「………まさかあんな条件を呑むとは思わなかった」

「あら。ラファエル様が信頼している唯一の人物の元に嫁ぐことに何も不満はなくてよ? ラファエル様が信頼してるならソフィアを大事に扱っているだろうし」

「ではなく…」

「ああ。第二王子に捨てられた私は王家に恨みもってるだろうに、養子に入ったこと? ソフィアの為なら何でもやるわよ」

「………でもなく…」


ルイスが額に手を当てた。


「ああ、跡継ぎは婚姻後に早急に作ること? 政略結婚でも私は相手に抱かれる事に何も思わないわよ?」

「でもなく、一回り以上離れている男の元に嫁いでくることがだ。若い者は若い者とと思うだろう。確率的に俺の方が先に死ぬ」

「そんなの、同年だろうが年下だろうが一緒でしょ。事故とか殺人とか予想外の出来事で命を落とす事もあるのだから」

「………そうだが…」

「それよりも大事なのは私の子とソフィアの子が血縁関係になるのよ!? こんな幸せな事ないでしょう? ルイスが別の娘の所に行きたいと言っても繋いで行かせないわよ? もう貴方は私のモノなんだから」

「………思考がラファエルなんだが?」


何故かルイスがため息をついたけれど、私は気にしなかった。

いつソフィアに言おうか楽しみで仕方ないのだもの。

ルイスと婚約関係だなんて、きっと驚くわ。

クスクス笑っていると、目の前が暗くなった。

次に明るくなったときは、目の前にルイスの顔が見えた。


「………今何処にそんな雰囲気が?」

「………別に? 今は時間があって、したくなっただけだ」

「………あ、そう…」


くるりと私に背を向けてスタスタ歩いて行く彼。

私は口角を上げて彼を追い、彼の腕に自分の腕を絡ませた。


「………やめろ。いつ人と会うか分からない」

「なら、貴方もキスする場所は考えてよね。貴方からしておいて照れてどうするの」

「………うるさい」


フイッと顔を反らすルイスを見てクスクス笑って、彼の執務室までついて行った。

………ねぇソフィア。

私が恋してるって知ったら、貴女は祝福してくれるかしら。

政略結婚すると分かっていた私が、まさか婚約者を好きになるなんて思ってはいなかったけれど、彼はレオナルドと違って優しくて、私を尊重してくれるし、困ってたら手を差し伸べてくれる。

貴女ともだけれど、彼ともずっと一緒にいたいと思ってるの。

会わせてくれるきっかけを作ってくれたソフィアとラファエル様には感謝しかないわ。

私はそんな事を思いながら部屋に入り、ルイスが後ろ手に扉を閉めながら、ゆっくりとまた唇が重なった。


ローズsideです。

RはラファエルなのでローズはLにしました。

ローズの婚約者はルイスでした。

ローズの養子の件と合わせて、理由が判明。

予想通り、という読者様もいらっしゃいますよね…

次は、これまた懐かしい人の登場です。

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