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第174話 目が覚めたら…




ゴォゴォと燃えている木々。

走って逃げている最中に、彼を見つけた。

彼は今にも死んでしまいそうなほど、血を流して…

私に逃げろと目で語っていた。

私は首を横に振り、彼の手を掴むが振り払われる。

そんな力はもう無いはずなのに。

私ももう普段の力が出ないほど憔悴しているのに気付く。

それでも彼を置いてはいけない。

もう一度手を取ろうとして彼は火がついた木の下敷きになった。


『―――――!!』


ハッと自分が叫んだ声で目が覚めた。

全身が汗で濡れ、気持ちが悪い。

はぁはぁと息切れしている自分が、夢での出来事に動揺している証拠になる。


「………はぁ……」


勢いよく起き上がらせていた身体を、パフッとベッドに横たわらせる。

………ベッド?

その時気付いた。

私は一体いつベッドに入って眠ったのだろうか、と。

先程まで私は侯爵家にいて、罪人の2人を王宮に連行するために、ラファエルより一足先に馬車で王宮に向かったはずだ。

そこから先の記憶が無い。

ということは、馬車の中で眠ってしまったのか…


「………嫌な夢。ラファエルはちゃんと生きてたのに…」


解決後のことを夢に見るなんて…しかもあれじゃぁラファエルが死んでしまった感が半端ないじゃない。

縁起でもない…

………それ程私はあの出来事が堪えていたのだろうか…

傷だらけで意識がないラファエルなんて、心臓に悪いにも程がある…

………守れるようにちゃんと強くならなきゃ…


『なんでも1人でしようとする』


ラファエルの言葉が頭に思い出され、ハッとする。

………ダメだ。

ちゃんと一緒にしなきゃ…

またラファエルに心配かけちゃう。

………私もラファエルが黙って1人で何かやってたら、なんで言ってくれなかったんだって拗ねちゃうし…

それと同じ事だよね…

ちゃんと私もラファエルと一緒に何かすることを頑張らないと…

王女ソフィアゆいかも、もう全て1人でする必要がない環境になってだいぶ経つのだから。

ソッと頬に触れる。

あの時引っ張られた指の感触がまだ残っているかのよう。

それどころか、気のせいだとは分かっているけれど、痛みまででてきた。


「………でも、婚約者の頬をあんなに引っ張るなんて…」


仮にも女の子なのにぃ…

ふぅっとため息をついてゆっくり起き上がる。

ソフィーは…

辺りを見渡すけれど、寝室には誰もいない。

上を見上げるけれど、違和感があった。

影達の気配がない…?

………え…

何だか尋常な事態を想像してしまう。

こんな事…影の気配がないなんてあり得ないし、今までもなかった。

慌ててベッドから降りる。


「………ぇ……」


私の身体は…足が身体を支えられずにその場に倒れ込んだ。


「………な、に……?」


自分の足を力の入らない腕に無理矢理力を込めて見てみる。

ぷるぷると小刻みに震え、痙攣していた。


「いっ…!?」


無理矢理身体を捻って見たせいか、ビキッと全身に痛みが走った。

これは、ツったのかしら…

とにかく痛い。

身体を床に横たえ、取りあえず痛みが過ぎるのを待つ。

馬車で変な寝方でもしたのかしら…

それとも後遺症…?

精霊の力を使うのにも代償が必要だって言ってたよね…

MPだったっけ…

あんな力を出すのに私のMPとやらがいるのなら、これぐらいで済むはずもないけれど…

床でジッとしていると、コツコツと足音が聞こえてきた。

………この歩き方は…

ガチャッと寝室の扉が開く。

………ぁ、私死角になっちゃう位置だけど、気付いてくれるかしら…?


「ソフィア!?」


予想通りラファエルの声だった。

慌てている彼の声が聞こえるけれど、ごめん、答えられない…

からだ、いたい…

足早にベッドに近づいてくる足音がし、ぷるぷると震え痛みでゆっくりとしか上げられないけど、なんとか気付いてもらおうとベッドに手を伸ばす。

てしっとシーツに何とか手を置け、握って少しずつ引っ張ってみる。


「ソフィア!」


その動きに気付いてくれたらしいラファエルが、ベッドを回って私の前に膝をつく。

………ぁぁ、なんとか気付いてもらえた…

ホッとしていると、優しく頭を撫でられる。


「大丈夫?」


いや、大丈夫じゃないです…


「急に動いちゃった?」


………今の今まで取り乱してたんじゃないんですかラファエルさん…

声、震えてますけど…

絶対に噴き出そうとしているの我慢しながら言ってるよね…?

そんなに今の私の格好が面白いですかね…

こっちは必死なんですが…

例え生まれたての子鹿にもなれていない私だとしても、流石にこの状態を笑われるのは不満だ。


「ちゃんと安静にしてないからだよ」


………安静?


「まったく……寝たきりだったのに人を待たずに動こうとするから。ソフィーぐらい心の中で呼べなかったの?」


………ぁ。

そうだった。

影の気配がないから動揺しちゃった。

………というか……寝たきり……?


「痛むだろうけど一瞬だから我慢してね」

「いっ!?」


ラファエルに無理矢理抱き上げられ、ベッドに横たわらせてくれた。


「ごめん。すぐに痛み止めの薬と水を用意させるよ」


私に何の説明もないままラファエルは出ていった。

………寝たきり……安静……

もしかしなくてもこれは意識がなくなって数日眠っていたということか。

さっきのは動かしてなかった筋肉が急に動いたから起こった痛み…

………マジかぁ…

私はその事実にグッタリとベッドの上でショックを受けていた。

………取りあえずラファエルが帰ってくるまで待とう…

私はゆっくりと目を閉じた。


次は侯爵家処分の行方。

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