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第167話 親睦を深めるチャンスは逃しません




「………あ、の……ソフィア様……?」

「うん、これぐらいの大きさで大丈夫だと思うよ」

「いえ……あの……」

土精霊ジン、この真正面の土壁だけ開けてくれる?」

「ちょっと待ってくださいソフィア様!」


ルイスの怒鳴りが聞こえ、私はルイスに顔を向けた。


「どうしたの?」

「“どうしたの?”ではありません! 一体私に何をさせようとしているんですか!!」

「ルイスの精霊と私の精霊が作った闇の球体の中に、暴走している精霊を入れる」


目の前には闇の力で作られた大きな球体があった。

中のイメージ的にはブラックホールだ。

異次元に繋がっていて、被害の出ないところに精霊に力を放出させ、落ち着いてもらうという作戦だ。


「は!? 闇の力はそもそも辺りを暗くするぐらいですよ!?」

「そうなの? 闇精霊ダークネス


影のダークの名前とかぶるので、闇の精霊の要望で少し名前を変えさせてもらった。

ちなみにネスを付け足すというのは他の精霊の案でもある。


『大までならそう。でも、我なら別次元に繋げるなど造作も無い』

「だって」

「“だって”と言われても私には精霊の言葉は聞こえません!」

「あ、そうだった。別次元に繋げるのは造作も無いって。だから問題なし」

「問題なしって……今明らかに聞く前に作戦立てたよな!?」


あ、焦ってルイスが敬語じゃなくなってる。

その口調聞いたらやっぱり血は繋がってるって思うよ。


「え? 規格外の精霊だから出来て当然かなって思って」


まぁ、これは日本むこうの知識拝借だけど。

闇って時空間とかのイメージが私には強い。

だから出来るだろうなぁって。

へらっと笑うと、ルイスが手で顔を覆って顔を上に向けた。

うん、これもラファエルと同じだね。


「………あいつに似合いの姫……」


ポツリと呟いたルイスの言葉に、私は複雑な気持ちになる。

褒められた気がしないのは何故だろうか…


「ああ、もういい。さっさと片付けて――ラファエル様と合流いたしましょう」


あ、冷静な思考になれたみたい。

敬語に戻ってる。

私としてはルイスと親しくしたいからさっきのでいいのに…

ここは王宮じゃないし。

何より王家の者が一斉に粛清された今、ラファエルの唯一の身内。

私にとっての家族となる人だ。

敬語で敬遠されるのもな…

サンチェス国では家族らしい家族してなかった。

こっちに来て、ラファエルに愛されて…温かい家庭が将来築けると思ってる。

だから、その中にちゃんとラファエルの身内もいて欲しい。

それは…私が王女だから、ラファエルが王太子だから、望めないと言わないで欲しい。

なによりラファエルは私以上に家族の温かさを知らないだろう。

そんなラファエルから、ルイスまで離れて欲しくないと思っている。

………まぁ、今はそんな事言ってられないけれど。


土精霊ジン、やって」


私が言うと土壁の一角から光が漏れ、火を纏った精霊が勢いよく突っ込んできて、闇の固まりに気付いても止まることは出来ずに、球体にその身体が吸い込まれていった。

反対側に突き出てくることなく、精霊が突っ込んだときは歪んだけれど、今は球体に戻っている。

何も音は聞こえない。

けれど、球体が不規則な間隔で赤く光っている。

力を放出しているのだろう。

暫くみんなで見守っていると、光らなくなった。

終わったのかしら…?

首を傾げると闇の球体が拡散し、拡散したところに人型の精霊が横たわっていた。

それはそれは綺麗な赤というより橙色の髪を持つ、同色の衣を纏った……


「………美青年」

「………それ、ラファエル様の前では言わないようにお願いしますよ」

「………え?」

「………貴女の視界に男が映ることも嫌がる男ですよ。それなのに貴女が男を見て外見を褒めるなど、排除対象です」


………そこまでラファエルの嫉妬が悪化してるの?

学園で思いっきり男性と接触無くもすれ違うことはしょっちゅうだ。


「ソフィア様はラファエル様の外見を褒めることなど無いでしょう?」

「………」


私は今までの出来事を思い返す。

格好いいとか結構言ってたと思うけど……

………

………………ぁ。

殆ど心の中で言ってたかも……

口に出してたのって、一桁くらい…?

片手で足りるかもしれない…

………うん、ちょっと納得してしまった。


「と、とにかく暴走が収まってよかったね!」

「「「………」」」


お、ぉおう……

三者三様だけれど、あからさまに呆れた顔を向けられている。


「ら、ラファエルと合流しなきゃだし、精霊は連れていった方が良いのかな?」

『その辺に転がしておいて問題ない。火の精霊故に、火でどうこうなるわけではない』

「あ、そうなの? じゃあ、このまま寝かしてあげよう」


私達は精霊を放置して、再び歩き出した。

そして、その間にルイスに提案してみよう。


「ねぇルイス」

「はい」

「ここは王宮じゃないんだし、敬語取ってよ」

「………」


その瞬間、ルイスの表情が言い表せないような………まぁようは、嫌な顔をされた。


「………私がラファエル様に殺されていいなら、取ります……」

「なんで殺されるようなことになるの!!」

「ラファエルの嫉妬深さをナメてはいけません。言ったでしょう。ラファエル様を仕事に戻すために私が言った説得の言葉を」


確かルイスはラファエルに私を自分のモノにするぞ、的な事を言ってたんだっけ…?


「………え? もしかしてルイスのモノに私がなってしまう、とか思ってしまう…?」

「ですね」

「え……どれだけ信用無いの私……」

「散々自分はラファエルに捨てられるかも、的な発言をしておきながら何を仰いますか」

「だって可愛い子ばっかりだし。その可愛い子達が平民みたいな行動してみなさいよ。私を好きになってくれたきっかけが王族思考の平民行動だってラファエルが言ってたし。私と同じ思考と行動する子がラファエルの前に差し出されてごらんなさいよ。私霞むじゃない」


私が言うと、ルイスが落胆した。


「………って思ってたから美人な子が来ると嫌な気持ちになってたのよね」

「………思っていた、ということは今は違うのですか?」

「ラファエルが学園で囲まれてたのを見たからね。確かに美女や可愛い系集まっていたけど、非常識な人達ばっかりだったもの。そんな人達が例え教養を身につけ、私と同じ行動をしたとしても…」


私は未だに燃えている木々を見る。

………普通の令嬢なら……王女なら…逃げ出していたんだろうな…


「………譲れない、と思ったのよ」

「………ソフィア様…」

「こういう精霊が起こした事件や現象を解決するのって、ラファエルの伴侶となる者の義務であり責任だし、究極精霊に選ばれた私の役目だと思う。なにより――」

「………なにより?」

「こんな波瀾万丈な日々、ラファエルの隣にいないと首突っ込めないでしょ。私はランドルフ国を生き返らせるって、自分とラファエルに誓ったもの。今後、ラファエルは私も国政に関わらせてくれるって約束もしてくれてる。私を認めてくれている。……初めてなのよ。私を、私の行動も思考も認めてくれた、頼ってくれた男性は」


私はルイスに顔を戻した。


「嬉しかった。自分に自信が無いことも含めて、ラファエルは包み込むように受け入れてくれる。最初は不安ばっかりだった。いつ捨てられても仕方がないと思ってた。でも、究極精霊に認められて契約者になって、この土地に私の存在を認めて貰えたと思った。だからもう他人の美しさや可愛さに、羨むことはあっても不安な心が無いことに気付いたの。ラファエルと精霊のおかげでね」

「そう、ですか」

「だからラファエルに他の伴侶が見つかっても、ラファエルに私以外を選ぶって言われても、絶対に了承しないわ。前の私なら身を引いてたと思うけど、ラファエルの隣にいるべきなのは私だって、私が決めちゃったから。だからルイスのモノになんか一生ならないし、他の男も勿論ないよ。私、こう見えて我が儘だから」


私の言葉に満足いったのか、ルイスが口角を上げた。


「いい答えだ」


あ、ルイスの言葉遣いが……


「俺が殺されそうになったら勿論庇ってくれるのだろう? 未来の義姪」

「ラファエルが貴方を殺すことはないわよ。優秀な人材を無駄に減らす行為は愚者のすることよ」

「それでもラファエルの嫉妬は来る」

「それは男性なら誰でも、と言えるわね。私の影も対象だもの」

「まぁな」

「さて、親睦も深まったところでルイスの婚約者って私の知っている人? ラファエルだけでなく私の力になれそうな人って事は、学園に居る非常識な令嬢とは違うんでしょう? この国の人? それとも同盟国のサンチェス国の人? テイラー国の人? 私、友達になれる?」


話を変えてみたけれど、ルイスからは無言の笑顔だけ向けられた。

むぅ……手強い…

ぷくっと頬を膨らませる。


「その顔はラファエルだけに向けてくれ。先を急ぐぞ」

「あ、ちょっと待ってよー!!」


スタスタ歩いて行くルイスの後を、駆け足で追った。


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