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第165話 ぶっつけ本番です




氷精霊ヒョウに最速でと言ったために、遠慮無く運んでくれた。

そのせいでルイスとマーガレットとスティーヴンが哀れな姿になっていたけれど……

ごめんね…

でも介抱している時間は無い。

現地に着けば、広範囲にわたって山火事が起きていた。

温泉の源泉が湧いている場所は大きな火山がある場所で、その周りは森に囲まれており、その森が焼けていく。

森に住んでいた動物たちは逃げだし、まだ火が回っていないところで様子を見ているよう。

氷精霊ヒョウに乗ったまま空を見ると、氷精霊ヒョウに負けずとも劣らない大きさの炎の鳥が舞っていた。


火精霊ホムラ! 状況は!?」

『あれから火の速度は変わっていない。精霊は分散しているから広範囲にわたっての山火事。このままでは火山も噴火しかねない』


噴火してしまうと、火山灰で源泉が埋まってしまうかもしれない……


火精霊ホムラ、源泉の周りを火精霊ホムラの炎で覆い隠すことは出来る!? 源泉が埋まっても、溢れても、この国の土地が元より悪くなるかもしれない!」

『それぐらい容易い。主が来たおかげで力が出せる』

「お願い! それとこれ以上被害が出ないように炎をコントロール出来る!?」

『出来ないことはないが、氷精霊ヒョウの氷を使えばいい。火が回っていない木々を一時的に凍らすんだ』

「分かった! 氷精霊ヒョウ! 火が燃え移ってない周辺の木を凍らせてこれ以上被害が広がらないようにして!」

『承知した』


うぉぉーんっ! と氷精霊ヒョウが吠えたと思えば、燃えていない木々が一斉に凍っていく。


「す、すご……」

『動くぞ』

「え…」


氷精霊ヒョウが凍った木の上に乗った。

重さなどまるで感じないようで、木はびくともしなかった。

風精霊フウがまだ身体を固定してくれてるから助かったけど……いきなり動かないでよ…


『主、水精霊イズミを』

「あ、そうだった…」


氷精霊ヒョウに言われ、私は火を消さなければいけない事を思い出す。

いきなり動いた氷精霊ヒョウに気を取られていた。


「ラファエル!」

「分かってる!」

水精霊イズミ! 水で火を消して!」

「ユーグとブルーもだ!」


私とラファエルが呼ぶと、青い煙のようなものが身体を覆い、上へと伸びた。

次の瞬間、空にこれまた大きい青い龍が、ラファエルの傍にユーグと水精霊イズミに似た一回り小さい女性が現れていた。

ユーグとブルーは手から水を出す。

消防車のホースから出る水のように、勢いよく近くの火に当てていく。

青い龍――青龍は空を舞ったかと思えば、雲行きが怪しくなってきて黒い雨雲が出来ていく。

そしてシトシトと雨が降り出し、徐々に水量を増して最後には土砂降りの雨が火事が起きている森だけに降り注ぐ。


「………すごっ」


これが天変地異を起こすほどの力を持つという究極精霊なんだ…

ちゃんと火山のところは避けられているし…


「…スティーヴン…わたくしはまだ夢の中なのかしら…」

「…安心しろ…俺もまだ状況を把握してない…」

「…ソフィア様が…精霊と契約、を…?」


後ろの2人の会話にも返答できない。

目の前で起こっている現象を唖然と見ていると、突然森の中から火の玉が私達の方へ飛んでくる。


「っ!? 氷精霊ヒョウ!」

『くそっ』


小さい拳大のものからヒョウの顔ほどもある火の玉が無数に飛んできて、氷精霊ヒョウの名を呼ぶだけで精一杯。

氷精霊ヒョウが避けたと同時に、氷精霊ヒョウの動きについて行けなかった風精霊フウの風が拡散し、私達の身体は四方に飛ばされてしまった。


『主!!』

「姫!」

「姫様!」

「ソフィア!!」

「ラファエル様!」

「マーガレット!!」

「スティーヴン!!」


誰が何処の場所に飛ばされていくかなんて見る余裕もなく、ギュッと目を閉じた。

落下した場所での衝撃に備えるために。

けれど私の身体はポンッと、まるでふかふかのクッションの上に落ちたような感じの衝撃しか来なかった。

………なんで……?

ゆっくり目を開くと、そこは炎が燃えさかる森の中。

地面を見ると、私のところだけがフワフワしていた。


「………土精霊ジン?」

『はい。大丈夫ですか?』


土精霊ジンが力を使って地面の土の成分を変えてくれたらしい。

………すごっ……


「ありがとう。大丈夫。……皆は?」

『別々の場所に飛ばされたようです。が……』

「………が?」

「姫!」

「姫様!」


声がした方を見ると、ライトとカゲロウが駆け寄ってきていた。


『約2名は近くに降りた』


うん、見れば分かるけど報告ありがとう。


「2人とも怪我は!?」

「ありません」

「ないよ~」

「よかった…」

「咄嗟に姫の近くに刺せてよかったです」


ライトが持っていたのはロープの先にフックみたいなのがついたもの。

………なんでも持ってるのね…

それで身体を固定して直ぐ合流できたのね。

それと…

カゲロウがルイスを荷物のように脇に抱えていた。

…身長差あるからルイスの足引きずってるよカゲロウ…

うん、見なかったことにしよう…


「ラファエル達は大丈夫かな…」

「婚約者様は火の森へ、貴族2人は氷の森へそれぞれ落ちていった。姫の精霊も同じ方向へ」

「………じゃあまずはラファエルを見つけないとっ! 燃えちゃうかも!」

「特大精霊と契約していますから、心配は無いかと思いますが…」

「打ち所が悪くて動けなかったら火から逃げられないじゃない!」


私が言えば、ライトが考え込んだ。


「貴族はいいの?」

「あの2人の方には姫の精霊が向かっていたから大丈夫でしょう。すぐに体勢を立て直していましたから。誰を優先すべきかは分かっているようでした」


氷精霊ヒョウが助けに行ってくれたのなら安全かな。


氷精霊ヒョウ、2人は無事?』

『はい。落下する前に何とか間に合いました。我は男を、風精霊フウが女を連れてます』

『ありがと。2人はそのまま外にいて』

『御意』

『分かりました』


確認し終えて、私は火の森を見た。

水精霊イズミの雨でもまだ火が燃えている。

相当な力を持っているのかしら…

火精霊ホムラが特大って言ってたけど…

とにかくラファエルを見つけなきゃ。

私はライトとカゲロウに前後を挟まれながら、ラファエルが落ちただろう場所に誘導してもらいながら移動した。

ズルズルとカゲロウがルイスを引きずる音はスルーして…


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[気になる点] 遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。 今年も体調に気を付けつつ更新お願いします(*^^*) ※因みに私は年末年始、インフルで地獄でした(笑) 誤字かな?と思われる場…
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