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第163話 恐れていたことが起きたようです




ふと目が覚めた。

何故かは分からない。

私は夜中に目を覚ますことは滅多にないのに…

視線だけで辺りを見渡すも、特に変わったことはなかった。

………嫌な雰囲気に目が覚めたようではないみたい。

取りあえず息を吐いて、ラファエルの腕をソッと外してベッドから出た。


『ソフィー』

『!? いかがなさいました姫様!?』

『目が覚めちゃって。水貰える?』

『畏まりました』


ソフィーに心の中で問いかければ直ぐに返事が返ってきた。

私は音を立てないように寝室から出た。

すでにソフィーが机に水を置くところで、本当に仕事が早くて感心する。

扉も音が出ないように閉め、ソファーに座った。


『何か変わったことがあったわけではないのですか?』

『ないよ。多分』


話し声でラファエルを起こしては悪いと思ってそのまま心の中で会話する。


『………そうですか』


ソフィーは辺りを探っているようで、視線が定まってない。


『! こ、これは…!』

『………どうしたの?』

『姫様、姫様の精霊の力をお貸しください! 暴走している精霊がいるようです!』


ぶほっと飲んでいた水を噴き出した。


『ぼ、暴走!?』

『力を出さないように内に力を押しとどめていた精霊がいたのでしょう! 温泉の源泉付近での暴走です! もし源泉の囲いなどを破壊してしまえば大変なことに!』


そんな事になったら、温泉どころか国の地下に流している源泉にも影響が出てくる!

ランドルフ国が熱湯の海に沈むかも!!


「ラファエル!!」


私は勢いよく寝室に駆け込んだ。

私の焦った声に、ラファエルがガバッとベッドから起き上がった。


「直ぐ用意して! 暴走している精霊がいるらしいの! 源泉の近くだから源泉に何かあったら国がっ!」


私の言葉少ない説明でもラファエルは直ぐに理解してくれたらしく、自分の部屋に向かうためベッドから飛び降りて自室へ駆け込んで行った。


「ソフィー! 私の服! スカートは止めてね!!」

「心得ております!」

「ライト! カゲロウ! イヴ!」

「「「ここに!」」」


ザッと影達が降りてくる。


「ライトはガルシア公爵家へ! マーガレットを連れてきて! カゲロウはクラーク家のスティーヴン! イヴはルイス起こしてきて!!」

「何故ですか! あの者達は関係ないでしょう!」

「何が起こるか分からないからよ! 私は精霊の力をこういう時に使ったことないのよ!? 咄嗟のことに対応できないかもしれないし、それによって精霊達だって何処までやれるか分からないし! 当然ラファエルだって! 私達より長く精霊と契約結んでいる者の方が対処が上手くいく時もある!」

「しかし! 姫は精霊との契約を明かしていません! バレたら利用される恐れが!」

「ソフィアの言うとおりにしろ! 緊急事態だ! 俺もソフィアも精霊を隠している場合じゃない! 呼んでこい!」

「「「はっ!」」」


ラファエルが上着を羽織りながら駆け込んでくる。


「今から馬を飛ばしても2~3日はかかる! 俺達は一足先に行くぞ!」

「はい!」

「姫様着替えを!」

「ありがと!」


ソフィーから着替えを受け取って手早く着替える。

勿論ラファエルには背を向けてもらって。

いつものジャージもどきを着る。


「ルイスが来たら直ぐ出発する!」

「ダーク! 馬を用意――」

『それには及ばん』


ダークに声をかけている途中、私の視界は真っ白になった。


「ひやぁ!?」

「ソフィア!」


視界が戻った時には、私の目の前に私の身体くらいの大きな顔の動物が――


「な、なになになに!?」


思わずラファエルの背に隠れてしまった。


『あ…主……』

「………ぇ?」


沈んだ声で私を主と呼ぶ……ということは……

そっとラファエルの背から顔を出すと…


『……きゅぅん…』


………なんか大きな図体でションボリしている真っ白い犬のような動物が……

………動物……

………精霊……?

………………白い犬みたいな動物……


「………まさか…ふぇ、フェンリル……とか言わない……よね……?」

『きゃんっ!』


え、嬉しそうな顔と声…

ブンブンと尻尾振るの止めて……

ゴンゴンと部屋の壁に当たってるから!

壊れる!!

尻尾も大木ほどの太さがあるから!!


「………取りあえずもう少し小さくなってくれないか。部屋が壊れる」


あ、ラファエルがゲッソリしながら言ってる…

この部屋の扉(両開きで人が横に5人並べるぐらいの大きさ)も通れるかどうかの胴体の大きさだしね……


『これは失礼した』


しゅぅぅ……と身体が小さくなっていき、普通の犬ぐらいの大きさにはなってくれた。

………それでもゴールデンレトリバーぐらいの大きさだけど…


『我の背に乗れば精霊が暴走している付近まで一気に運べる。小一時間もあればな』

「ほ、本当!?」

『ああ』

「………と、ところで………誰?」

『我は主からヒョウの名を貰ったものだ』

「………ということは氷の精霊ね」


………氷属性だからフェンリル…?

え?

フェンリルって氷だったっけ?

私が首を傾げている間に、コココンッと焦ったようなノックが聞こえる。


「ルイスか!?」

「失礼します!」


ルイスが慌てて寝室に入ってきた。


「イヴから聞いて!」

「ああ。ルイスの精霊も手伝ってもらうことがあるかもしれない。一緒に来てくれ」

「はい!」

「ソフィア、外に行こう。マーガレット嬢とスティーヴン殿が来たら直ぐに出る!」

「うん!」

「すまないが氷精霊ヒョウ、頼む」

『任された』


私達は部屋を急いで出て、王宮の門へ向かった。


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