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第161話 思い通りにはいかない ―K side―




スタスタと歩いて行く背を追う。


「どうしたんだ」

「………」


俺が声をかけると、マーガレットは立ち止まった。

今は公爵家にマーガレットを送り届けている途中。

今日学園に登校してから今まで、マーガレットの様子が可笑しい。


「なんでもないわ」

「そんなはずないだろう。俺にぐらい隠すなよ」

「………スティーヴン…」


マーガレットは1度俺の顔を見て、少し悩んだが口を開いた。


「………あの、ローズ様の事なんだけど…」

「ローズ様? ああ、ソフィア様の姉上様だな」

「………ソフィア様は第一王女でしょ? どうして突然姉としてこちらに来たのかしら」

「ああ、そういえばソフィア様が第一王女だって聞いてたな……え? じゃあローズ様って何者だ?」

「ギュンター公爵家の次女だったはずよ」

「え?」


マーガレットの言うとおりなら、王女を語ってるって事か?

いやでも、それならソフィア様が何もしてないはずがない。


「直接事情を聞いてみれば良いんじゃないか? ソフィア様はお答えくださるだろ」

「バカ言わないで。王家の事情をわたくしが聞けるはずないでしょ!」

「でも、昨日の朝ソフィア様に友人と思っているってハッキリ言われたんだろ? 嬉しそうに俺に報告してきたじゃないか」


昨日の朝マーガレットがソフィア様に友人と思われていたと、ソフィア様が席を離れているときに嬉しそうに言ってきた。

その笑顔が凄く可愛かったから、俺はソフィア様に嫉妬していた。

俺のマーガレットなのに、と。

それが今日の朝から沈んだ顔でソフィア様の後ろ姿を眺めていた。

思い出すと、今日の朝の挨拶以外マーガレットはソフィア様と話していないんじゃないか…?

一体どうしたんだ…


「………ソフィア様、ローズ様とお話ししていらっしゃる時、まるで別人でしたわ…」

「え……」


………そうだったか…?

俺はソフィア様の様子を思い出す。


「………ぁぁ、確かに気さくな感じだったな?」


俺が言うと、ズンッとマーガレットの雰囲気が一気に落ち込んだのが分かった。


「お、おい…」

「やっぱりそう思いますわよね……あんなに楽しそうに、嬉しそうに会話するソフィア様、初めて見ましたわ……」

「………ぁ~……」

「………ラファエル様とご一緒の時もあまり口調はお変わりにならなかったのに…」

「………確かに、な…」


だが……

あれはどちらかというと…


「………マーガレットに対して、ソフィア様が距離を置いている……?」

「そうなのよ!」

「うわっ!?」


俺の呟いた言葉に、過剰に反応するマーガレット。

勢い良すぎて俺はのけ反ってしまった。


「ご友人と仰ってくださったのに、距離が開きすぎだと思いません!? わたくし何かしてしまったのかしら!? もしかしたら気付かずうちに失礼なことを!?」

「お、落ち着け…」

「そ、それともランドルフ国民とはご友人と思っていても、距離を置いておこうとしていらっしゃるのかしら!? どうしたらソフィア様と距離を詰められると思います!?」

「お、俺に分かるかよ…それ、俺とラファエル様がどうやったら友人になれるか、って聞いてるようなものだろ…」

「!!」


余計な言葉だったようで、マーガレットの顔色が悪くなっていく。


「………ソフィア様は素敵な御方ですのに……もっと仲良くなりたいですわ…」

「そう言ってもな……俺だってラファエル様とお近づきになって、ラファエル様の精霊のこと詳しく聞いてみたいが……王太子様だから無理だと思ってるし」

「あら……スティーヴンの事ですから、てっきりラファエル様ともう打ち解けていらっしゃるかと……」

「バカなこと言わないでくれよ……ラファエル様は学園にいらっしゃる時がソフィア様と違って半分ほどだろう。お話する機会もないよ。ソフィア様がマーガレットを誘ってくれて一緒に昼食取るときぐらいしか接点ないよ」

「………そういえばそうね…」


まったく…

マーガレットはたまにこうなる。

いつもは完璧令嬢のくせして…

大体、俺がラファエル様と仲良くなれるわけないだろうが。

マーガレットと結婚して公爵になっているならいざ知らず、俺はまだ伯爵家の者だ。

ガルシア公爵領内の伯爵家の1つだというのに…

俺がマーガレットと婚約できたのは、幼なじみだから、というのが1つ。

ガルシア公爵がマーガレットの伴侶として自領内の伯爵家から選んだというのが1つ。

長男のヒューバート殿が王宮騎士になって跡継ぎがいなくなり、伯爵家の次男で公爵家を継がせるという最終決定で俺に白羽の矢が当たった。

マーガレットが俺がいいと言ってくれたのもあるけれど、本当に運がよかっただけだ。

優秀な者は俺以外にもいたからな。

そんな者が、王太子と気軽に話せるかっつーの。

………でも凄いよなラファエル様って。

平民の母を持ちながら誰よりも国を思い、その手腕で国を回復させ、2人の精霊と契約している。

今のこの国で2人以上の精霊と契約している者は、ラファエル様以外にいないだろう。

本当に尊敬するよ。

間近でラファエル様といられるって、今しかないだろう。

卒業すれば遠くから見るくらいしかないだろう。

逆に仲良くなれば、今後が辛いと思うぜ?

どうしているか、とか気になるだろうし。

今の距離の方がいいと思うけどな。

まぁ、マーガレットはソフィア様が茶会に呼んでくださったら会えるだろうけれど、卒業と同時に縁が切れてしまう場合もある。

今日のソフィア様を見ていたら、多分その可能性が大きい。

………マーガレットには言えないが…

ローズ様と話してるソフィア様、ホント楽しそうだったからな。

マーガレットと話している時は、どちらかというと……マーガレットを見守っている……ような感じと言えばいいのか……?

見守っている……微笑ましく眺めている……う~ん………観察している……?

とにかく、王女様、って態度を崩さない、ある意味人形のような感じなんだよな。

ラファエル様と話している時は口調は変わらないものの、少し親しみやすくなった王女様、って感じか。

で、今日のソフィア様は……なんていうか……


「………普通の女の子……?」

「それですわ!!」

「え……」


あ、俺、口に出してた?

やべ。

王女様に対して女の子はないだろ俺!


「そうなのよ! 普通の令嬢みたいでしたでしょ!? 過ごした時間が違うのは分かってますわ! でも…」

「………ま、そういうのは時間をかけるしかないだろ。勘違いしてないかマーガレット」

「………え……?」

「相手は王女様だ。誰よりも人の汚い面を知っている。男よりも女の方が陰湿だからな。だからこそ、その人の本質を慎重に観察する。信頼を取り戻すのに時間がかかるのはよく知ってるだろ」

「あ……」

「自分で言って忘れたのか? 俺達貴族は、ラファエル様とソフィア様に期待されていない。今までのランドルフ国を作り民を苦しめていた俺達が、すぐに受け入れられると思うな。たった数ヶ月前に出会ったばかりの相手を、お前は信頼出来るか?」

「………出来ないわ…」


マーガレットが落ち込み、俺はため息をつく。


「ゆっくりやれ。何かあったらフォローしてやるから」

「………ありがとう」


俺はマーガレットを促し、帰路を進んだ。

………とは言ったものの……ソフィア様のあの変わり様は驚いた。

あんな素直に……可愛く笑うのだな。

あれはラファエル様が、惚れるのも頷ける。

女子がソフィア様を普通って言っているのをたまに耳にしたが、男の俺からすれば普通に可愛いと思うわ。

マーガレットの方が断然美人だけど。

国を思い、色々な助言をこの国にくれるソフィア様はまさに王族、だと思う。

そんなソフィア様をラファエル様は手放せるわけないよな。

ソフィア様を侮辱したり、規約破る令嬢はまさに排除対象だ。

可愛くて、優秀で、本当に完璧王女様だと思っていたんだけどな。

でも今日のソフィア様は普通の令嬢で、なんか親近感湧いたんだよな…

距離を置いて見ていたからよく分かる。

今までの態度は、全て作り物だと。

言葉まで偽物だとは思っていない。

彼女はこのランドルフ国で1人で戦っていたのだ。

完璧王女の仮面をかぶって、ランドルフ国の為に動いていたのだ。

そして今のランドルフ国がある。

……今日のソフィア様が本当の彼女なのだろう。

ローズ様が来なければずっと騙され続けただろうな。


「………俺もソフィア様と仲良くなれそうだな…」

「え!? だ、ダメよ! わたくしが仲良くなるのだから!!」

「ははっ!」


マーガレットの言葉を聞き流しながら、俺は口角を上げっぱなしだった。

………少し、本気出そうかな。

ラファエル様とソフィア様と、親しくなるために。

ランドルフ国を良くして、マーガレットが苦しまない国になる手助けをするために。


スティーヴンsideです。

Ssideにすると、ソフィーsideとかぶってしまうので、クラークのKにしました(どうでもいいですかね…(^-^;)

マーガレットの言った距離を開けている、というのは友人としてではない…?

謎解りゆうきはまだ先になります~…


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