第160話 変わる日常
翌日、早朝の日課を済ませてラファエルと共に朝食を取った。
いつもならラファエルと登校するところだけれど、今日からローズも加わった。
いつも通り学生が集まる前に学園に着き、3人で教室に入る。
「………ぁ…」
1番後ろだった私の席の後ろに、1つ机が増えていた。
「これ、ラファエルが?」
「Sクラスの席は埋まってるからね。追加した。どうせソフィアの近くがいいと言うと思ったし」
ラファエルがローズを見ると、ローズが微笑んだ。
「流石ラファエル様ですわね」
「………ホントは嫌だけどね」
2人は話しながらも、席に向かって座った。
慌てて私も自分の席に座る。
「ある程度勉強したつもりだけど、分からないところは教えてねソフィア」
「うん。でも、私の成績はこのクラスでは下の方だと思うよ…?」
まだ試験がないから、何とも言えないけど…
「それでもわたくしよりソフィアが上でしょ」
クスクス笑うローズに癒される。
自分の昔から知っている人がいるって、こんなにも落ち着くものなんだなぁ…
「ラファエル様、ソフィア様」
喋っているとマーガレットとスティーヴンが登校してきた。
ドキリとするけれど、顔に出さないように注意して微笑む。
2人と会うのは、昨日私が席を外して以来だ。
………ちょっと気まずいな…
「おはよう」
「おはようございます」
私とラファエルが2人に挨拶し、2人も返した。
「初めまして。わたくしはローズ・サンチェスと申します。ソフィアの姉です」
「え……は、初めまして」
ローズの言葉に2人は戸惑いながら返す。
「わたくしはマーガレット・ガルシアと申します」
「私はスティーヴン・クラークと申します」
「ガルシア公爵家とクラーク伯爵家ですね。宜しくお願いいたしますわ」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
一通りの挨拶は済んで、2人は1度席に向かう。
「そうだわソフィア」
「何?」
「今度の休日には1度サンチェス国に戻るのでしょう?」
ローズの言葉に私は目を見開き、彼女を見た。
「え……?」
「2月に1度帰国するお約束が守られていないでしょう? 前回はエイブラムのせいで帰れなかったのだろうけれど、あれからそろそろ2月周期がくるわ。今回は帰るでしょう?」
「………ぇっと…」
チラッとラファエルを見る。
次の帰国日にはこちらに皆を呼ぼうってラファエルが言ってたのだけれど……
あの話はどうなったんだろう…
「1度帰った方が良いわ。お父様もお母様もお兄様も心配しておりましたわ」
「そう、なんだけど……」
ラファエルは何かを考えているように黙っている。
彼の許可がないと行けないんだけど…
「ま、ソフィアはラファエル様が大好きですものね。ラファエル様がご一緒に行けるまで待つのかしら」
「も、もう! ローズったら!」
クスクス笑うローズに、私は頬を膨らませる。
「そ、そういうローズこそ、帰国したら婚約者を私に紹介してよね! ちゃんとした人か私が見定めないと!」
「まぁ! ふふっ。彼のことは、わたくしよりソフィアの方が詳しいと思うけど」
「え? 私の方が…ってことは、私が交流している人って事よね? うぅ~ん…」
私が知っている男はそういない。
数が少ないから分かりそうなものだと思われるかもしれないけれど、サンチェス国にローズが婚約したいと思う男なんていた…?
「ヒントちょうだいローズ!」
「ヒントはなしよ。でも、ちゃんとした人だとソフィアも納得するわよ」
「えぇ……?」
教えてくれず、むぅっと唇を尖らせてしまう。
「まぁソフィアったら。そういうお口はラファエル様の前だけにしなさい。他の男に見られたら唇を奪われてしまうわよ」
「もう! ローズまで何言ってるの? そんな方はいないわよ!」
「まったく…ソフィアは可愛いという自覚がなさ過ぎるわ」
「美人のローズに言われても、信じられないもの」
「あら、わたくしだけではないでしょう。ラファエル様にも言われているのではなくて?」
「うっ……」
チラッとラファエルを見ると、頬杖をつき、ムスッとして私を見ていた。
ローズとばかり話しているから、機嫌悪くなっちゃった……?
「ホントだよね。ソフィアは可愛いのに。だから他の男の前で可愛い仕草しないで欲しいよ」
あ、そっちなの…?
「うぅ……」
2対1なんて卑怯だ……
私は恥ずかしくて、つい顔を背けた。
するとマーガレットと視線が合った。
………ぁ……
反射的に私はマーガレットから視線を反らしてしまう。
ろ、露骨すぎでしょ私…
王女としてまだまだね…
マーガレットに話しかけようとして、視線を戻したときには、彼女の方が顔を背けていた。
「スティーヴン、今日の――」
マーガレットはスティーヴンと話し始めてしまい、タイミングを逃してしまった…
………やってしまった…
申し訳なく思いながらも、私はまたローズの方へ顔を向けたのだった。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします!




