表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/740

第16話 婚約解消の危機です




暫く抱きしめられていた私は、ゆっくりと解放される。

泣きじゃくっていた私は恥ずかしくて、ラファエルの顔を見られなかった。

王族なんだから、泣いちゃダメなのに…

弱いな……私…


「あ、の……ラファエル様……」

「何?」

「な、何故私が襲われている時にあの場に? いつランドルフ国にお戻りになったのですか? テイラー国にいたはずでは…」

「ああ。ソフィアの手紙が来なくなったから、心配で戻ってきたんだ」

「………ぁ」


確かに毎日手紙の返事を書いてカゲロウに持って行って貰った。

けれど、食べ物を配ることになって数日は手紙を送っていない。

それで不審に思って急いで戻ってくれたのか……

………本当に助かった。

でも、ラファエルが戻ってこなければ、無様な私を見られる心配が無かった。

………どちらが良かったのかなんて、私には分からない。


「申し訳ございません……交渉の邪魔をしてしまったんですね……」

「元々今回の目標である件数は達成してたから、余裕をもって回ろうと思ったんだ。次の機会でも問題ないよ」

「そう、ですか……それにしても、経過をお知らせくださいとお願いしてありましたのに、………あ、あんな……お手紙……」

「そうしないとソフィアはすぐに俺の気持ち疑うと思って」

「………っ」

「それに、状況が思わしくないときにそんなこと書いたら、気持ちが暗くなるだろう? でもソフィアへの愛を書いた後、気持ちが浮上してね。交渉にも役に立ったんだ」


本当に嬉しそうに言うから照れてしまう。

彼は私をどうしたいのだろうか…


「………ぁ、わ、私……湯浴みをしても宜しいでしょうか…?」


自分が汚れていたことに、今思い出した。


「ああ、そうだった。………一緒に入る?」

「お、おおおおお断りします!!!!」

「冗談だよ。侍女呼ぶよ」

「い、いえ、自分でゆっくり入りたいので……」

「じゃあ、ゆっくりしておいで。でも、あんまり遅いと心配になるから」

「は、はい……」


私は着替えを持って湯殿へ向かった。

………本当に心臓に悪い……

だ、大丈夫だったよね……

ちゃんと、ソフィア・サンチェスを演じられてた、よね……

いつもの私だった……?

不安だわ……

湯殿に着くと、私は中を覗いた。

いつも綺麗な湯が張ってある。

これも無駄遣いだ。

………でも、今の私にそれを言う資格はない。

汚れた体をすぐに綺麗に出来るのは、王族故。

民に罪悪感を抱きながら、私は服に手をかけた。

すると、服の中から封筒が出てきた。


「………ぁ、お父様の手紙が……」


忘れていた。

お風呂から上がったら読もう。

そう思って私はお風呂に入った。




ゆっくりと体を癒やした私は、部屋に戻った。

部屋には誰もいない。

ラファエルも自室のお風呂に入っているのかもしれない。

ソファーに座り、父からの手紙を開いた。


『ソフィアへ

 ランドルフ国の現状が今のままだと

 民がいなくなる。

 その対処を他国に頼るしかない

 ランドルフ国には未来がないだろう。

 だが、お前はラファエル殿に

 テイラー国へ行くように言い、

 無事に交渉成立させた。

 これからもテイラー国に

 ランドルフ国の技術が広がり、

 いずれ同盟を結ぶことになるだろう。

 よくやった。

 この手紙が影から渡されたという事は

 お前はランドルフ国民に

 食を配り終えたということだろう。

 お前自身の手で。

 お前は誇り高い王族だ。

 王女という立場で甘んじている

 器ではないということだな。

 私はお前を見誤っていたようだ。

 王族としての再教育をしたい。

 ラファエル殿との婚約を一度白紙に戻そう。

 お前はサンチェス国でやることが出来たのだ。

 迎えはやらずともお前は帰ってこられるな』


………ぇ……

こ、婚約を……白紙に……?

ど、どうして!?

教育をするだけなら無かったことにしなくたって、一時帰国すれば済むはずじゃない。

………お父様……

一体何を考えているの……?

それに私は……

私は……

ここに――ラファエルの傍にいたい……

婚約して……これからも婚約者でいたい……

自分自身のせいで解消になるなら納得……出来ると思う。

でも、こんな……本人以外が婚約を無かったことにするなんて……納得できるはずもない。


「………やってくれるなぁ……サンチェス国王は」

「ひゃぁ!?」


手紙に意識を持って行かれていた私は、ラファエルが入室してきたことも、ソファーの後ろに回り込んでいる事も気づいていなかったようで。

耳元で囁かれた言葉に体が跳ねた。


「俺がソフィアを手放すわけないだろうが。本当に俺を試すのが好きな王だな」

「た、ため、す……?」

「ああ。ほら、パーティの時、俺が飲み物を取りに行った時に、王と王妃に婚約を認めてもらったって言っただろ?」

「………ぇぇ、そうでしたね…」

「その時、条件を出された」

「条件……?」


そんな話、王から聞いてないけど…


「ソフィアの気持ちを優先させること。ソフィアが別れたいと思ったら婚約を解消すること。ソフィアの身になにかあれば同盟を終わりにすると」

「………え!?」

「この手紙でソフィアが俺に別れを告げるように、誘導しているな」

「そんな……」

「王がソフィアを見誤ってた? そんなはずないだろ。見誤っていたら第二王子がパーティでやった失態の対処に、ソフィアを指名するわけないだろ」

「………ぁ」

「ソフィアが恋しいからって、こんな手紙で呼び戻そうとするとは。ソフィア、俺と王、どっちを選ぶんだ?」


感情のこもってない目で見ないで下さい。

怖いです……


「も、もちろん……ラファエル様の傍に……」

「だよな。王には俺から返事書いておくな」

「い、いえ、自分で書きますわ!」


そんな怖い笑顔で言われても!

どんな事書かれるのか不安で仕方ないから!!


「………それには解消するって事を書くんじゃないのか…?」

「まさか! そんなことしません!!」


私ってそんなにラファエルに信用されてないの!?

………

………ぁ

信用される要素がないって事に気づいたわ。

怒られてばっかりだし。


「とにかく、父に婚約は解消しないと手紙を書きますので」

「見てて良い?」

「え? はい……構いませんが…」


そんなに心配なんだろうか……

私からラファエルに解消を持ちかけるなんて、あり得ないのに……

なんだかこんな事でも、想われているって実感がわく。

私は微笑んで、紙を机の上に置いてペンを取った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ