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第154話 接触はやはり険悪ムード




昼休憩に入って数分。

フィーアが来ていない。

マーガレットとスティーヴン、昼前から合流したラファエルと一緒にフィーアを待っていた。


「………遅いですわね…」

「Bクラスならすぐだと思いますが、見てきましょうか?」


マーガレットとスティーヴンが言い、私は少し考えた。


『………風精霊フウ

『はい』

『フィーアは今何処にいる?』

『部屋を出た少し先の人気がないところに呼び出されているようです』


私は心の中に問いかけ、返事が来る。

ソフィーが私に心の中で話しかけて来たことを思い出して、ここ数日練習していた。

精霊がついている人間の位置は把握しやすく、何処にいるかこの広い学園内でも問題なく分かるそうだ。

勿論、契約者以外の人間や、精霊の位置も全て分かるらしい。

………まぁ、王宮内を全てカバーできる範囲らしいから、学園内など造作もないだろう。

これならフィーアの精霊が攻撃してきた時に、私が許可してさえいれば問題なく対処できたと分かる。

自業自得故に、自分以外責められる人がいない…


「ラファエル様、ご一緒してくださいますか? Bクラスでしたら通り道ですし」

「そうだね。こっちから行った方が早そうだね。みんなで行こう」


ラファエルに許可もらって教室を出る。

ゆっくり歩いていると、風精霊フウから聞いた付近から、話し声が聞こえてくる。


「お父様の言うことを聞かないのでしたら、貴女の居場所はもうなくてよ。あの家にいられなくなっても良いのかしら」


………これは、フィーアに対して言っているのかしら…?

そっと覗いてみれば、階段下の死角になっているところに人影が見えた。


「さっさとしなさいね。7日間も留守にして。置き手紙なんかで外出するなんていい度胸しているんじゃない。いくら母親の実家に一度来いって言われたからって、お父様に許可もらわずに家を出て行く度胸があるのなら、お父様の命令ぐらいこなすなんてお手の物でしょう」


私は思わず視線を天井に向けた。

ライトの用意したシナリオなんだろうけど…


「今日中にやりなさいよね。あの女を今度こそランドルフ国から追い出せるようにするのよ」


それにしても侯爵令嬢ってどれだけ短慮なのだろうか。

確か彼女は罰を受けていない令嬢だけれど、もう一度共通規約を見直すとかないのだろうか?

王族を傷つけることがどれだけの大事になるのか、まだ分かってないのかしら…

………って、私には言われたくないか…

自分の立場を分かっていなかった――というか、平民のように過ごしている私は、ちゃんと王族として分かっていても動けていなかったのだから。

でも、もう大丈夫!

………のはず…

ラファエルに私が行っていいかと問おうとして、見上げると…


「っ……!!」


あ、ぶない……

つい悲鳴を上げてしまいそうになった。

ラファエルの表情が、怖かった…

怒りで目付きが鋭く…

今ラファエル動いちゃダメだよ!?

フィーアと仲良いアピールするのは私だよ!?

囮になれって言ったのラファエルだよ!?


「………」


鋭い目付きのままラファエルに見られ、私はひぃっと声を上げそうになるけれど耐える。


「ソフィア」

「い、行ってきます…」


低い声で言われ、私は内心は慌てて、でも歩みは令嬢らしくゆっくりと歩いて行く。

ラファエルの視線から外れてホッとする。


「フィーア嬢」

「っ! ぁ、ソフィア、様…」


フィーアは怯えたように侯爵令嬢の前で立っていた。


「サンチェス国王女…?」


………あ、嫌な呼び方されたわ。

怪訝な顔で睨まれるし。

本当に教養がない人なんだな。


「遅いので迎えに来ましたわ。行きましょう?」


私は無視し、フィーアに笑いかける。


「は、はい!」

「ちょ、待ちなさいよ! 私がフィーアと話してるのよ!?」


私は侯爵令嬢の言葉を更に無視して歩く。

フィーアはチラチラと侯爵令嬢を見ながらついてくる。


「待ちなさいって言ってるでしょ!?」


手を伸ばされている気配がした。

けれど私はそのままラファエル達と合流する。

その時、パシッと音がした。


「無礼者。ソフィア様に触れようとするなど、貴族令嬢としてあるまじき行為ですわ。侯爵家は随分落ちぶれたようですわね」


マーガレットが割って入って侯爵令嬢が伸ばしていた手を払い除けていた。

侯爵令嬢の行動や言動が、彼女の怒りに触れたらしい。

彼女は本当に良い令嬢だなぁ…


「なっ!?」

「階級が上の御方から話しかけられたわけでもないのに言葉を発するなど、非常識にも程があるでしょう。ソフィア様がおられる場所では、共通規約が適応されるとあの騒ぎで理解できなかったのですか? 今までのランドルフ国の規約じょうしきは通用しないのですよ。それを理解しない貴女は貴族令嬢として恥じるべきですわ。………いえ、貴女は平民以下でしょうね」

「何ですって!?」

「規約も理解出来ないなど、同じ貴族としてわたくしは恥ずかしいですわ。平民の方が理解していますわよ」


ギリッと侯爵令嬢が歯を食いしばる。

………これが、ラファエルが言っていた、“穏やかな令嬢”だった者と同一人物なのだろうか……?

ラファエルの記憶違いでは……

これは嫉妬で変わったという理由では表せない。

………どっちかっていうと……父親の影響……父親の教育では……

………もはや洗脳されている、と言った方が早いかもしれない。


「マーガレット嬢。相手にするだけ無駄です。理解しない者と関わり合いたくないのです。そんな者を構っている暇があるのでしたら、食事に行きましょう」

「な、んですって!?」

「はいソフィア様」

「フィーア嬢もお腹空いていませんか? 今日はラファエル様にお願いしてラファエル様お手製甘味を準備してもらいましたの。平民には先に食して頂いた物ですが、貴族には配っていませんからフィーア嬢が初めて食べるものだと思います。食後に一緒に食べましょう?」

「は、はい! 頂きます!」


侯爵令嬢を置き去りに、私達は王族専用食堂へと向かった。

………囮になるって、挑発しろって事で良かったよね?

今の私は何かあっても精霊達に守られる事が分かったから、多少何があっても大丈夫だと思うけど…

その練習も徐々に(今は意思疎通だけだけど)出来はじめてるし…

あれで良かった…のかな。

不安になってラファエルを見上げると、ラファエルは微笑んで私を見た。

間違ってはいなかったようで、私はホッとして微笑み返した。


少しでもマーガレットが格好良く描けてたらいいなぁ…

唯一のランドルフ国でソフィアの味方令嬢ですから、魅力が少しでも出せてたら幸いです。

次はちょっと甘入れたい!

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