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第149話 疑問を解決しましょう




「さて、今回の騒動の大きな要因は、コレだね」


ラファエルが風精霊フウを見た。


「コレは俺が触って良いもの?」


風精霊フウが咥えている首飾りをラファエルが指し、風精霊フウは頷いた。

あ、フィーアが侍女になったからいつものラファエルに戻ってる。

じゃあ私ももう良いかな。

フィーアはソフィーの隣で居心地悪そうに侍女の立ち姿をしている。

………意外と様になってる…?

っていうか、慣れてる……?

………彼女はずっと、使用人みたいに扱われていた、ということだろうか。

どうでもいいんだけど、フィーアはどういう理由で家を出た事になってるのかしら…

………ライトが良いようにしてくれてるかな。


『コレは中までの精霊を操れる呪いの道具。人間には効きませんよ』

「大丈夫だって。精霊を操るものだから、人には影響ないらしいよ」

「そっか。では失礼するよ」


ラファエルが首飾りを手に取る。


「………見るからに古代の、って感じかな……古びてるし…」


その言葉に、風精霊フウが少し光る。

………え、何……


『この場の人間に私の声が聞こえるようにしました。そうしないと全て主に伝えて頂かないといけませんから』

「あ、それは助かる」

「へぇ。この方は女性なんだね」


おお、本当にラファエルにも聞こえているようだ。


『その首飾りはかつて精霊がランドルフ国民の大半と契約していた際に作られた道具。悪事を働こうとして、人の精霊を操って支配しようとしたものです。それによって善より悪の方の人間が増え、精霊が離れていったのです』

「そんな事をすれば、共存の意味がないじゃないか」

『はい。精霊はあくまで人間と共に生活が豊かになるように手を貸し、共に幸せになれればと思い、気に入った人間――というか同調しやすい、波長が合う者と契約を結んでいました。分かりやすく言えば考え方が似ている者、と言えばお分かりになりますでしょうか?』


私は勿論、ラファエルも頷く。


『それを道具のせいとはいえ、一度道具をつけられれば抵抗は精霊には出来ません。道具は精霊についた途端に人間には見えなくなり、5日もすれば精霊と同化してしまいます。私達は操られた精霊を契約者と強制的に引き剥がし、隔離し、少しずつ道具を離しました。同化してしまうと、解呪に時間がかかります。その精霊につけられていた物は、まだ同化してませんでしたので簡単に取れてよかったです』

「そっか。良かったねフィーア」


私がフィーアを見ると、目を潤ませ頭を下げた。


『全て消し去ったつもりですが、まだ残っていたのですね。貴族が隠し持っていたのかもしれません。製造内容を書いた書物も全て火精霊に燃やしていただいたのですが』

「そう………でも、人間が精霊につけられるってどうやって? 普段精霊は姿を消しているでしょう? 契約者以外に姿を見られないように」

『昔は姿を消しておらず、本当に共存関係でした。私達精霊は人間を信頼しておりましたから』

「ぁ……」


………そうか。

裏切ったのは人間の方だった。

強制的に従える道具など、作った人間側のせいだ。

そして止められなかった人間も、また同罪だ。


「なら、どうして今回フィーアの精霊にそんな物がつけられたんだ…?」


ラファエルが考え込む。

………そうだよね…

付けたのは侯爵か侯爵令嬢だと思うけど…


「あ……」

「「………ん?」」


フィーアが声を思わず出してしまった、という感じで青ざめていた。


「………どうしたの」

「………ぁ、の……付けられると思います……」

「へ?」

「私、家では精霊に姿を現すようにしておけと、言われておりましたので……」

「「………」」


フィーアの言葉に、ガックリと項垂れてしまう。

………そんな命令にも従っていたのか…


「………成る程ね。納得」

「ラファエル…?」

「ロペス侯爵は、精霊に見放された1人だからね」

「………え!?」

「悪事を働き過ぎたんだよ。ソフィアがランドルフ国に来る前に、精霊契約者ではなくなっていた。だから娘と契約している精霊を利用したんだ。昔はそれなりに仕事出来る人間だったのに、父が国政を兄達の我儘でどんどん変えていって、実入りが良くなったから。それで味を占めてどんどん楽な方楽な方へ行っちゃったんだよね。普通に働くより悪事の事の方が儲かるのは事実だしね」

「………」


それはまた……自業自得としか言えない…

精霊を道具扱いしていれば、見放されて当然。

なのに反省もせず、娘の精霊に呪いの首飾りをつけるなんて。

………ま、反省するような人間なら、精霊に見放されたりしないか…


「ラファエルは侯爵令嬢と子爵令嬢に精霊がついていたことを知っていたの?」

「うん。侯爵令嬢は火属性。子爵令嬢は土属性。だから今回のソフィア攻撃には関わっていないと判断してた。親と違って穏やかな令嬢だったんだけどね」


………え?

あれが?

………ごほん……失礼しました。

多分、彼女たちはラファエルの前では作ってたと……

ぁぁ、でも影とユーグで探ってたらしいから、今の性格は知ってるか。

じゃあ、その前から彼女たちの事を知ってた?

だから“だった”ってついたのかな?

………もしかして、私がラファエルの婚約者になったから……?

自分の方が美人なのに、って。

………嫉妬のせいか。

恋は女を変えるって言うし…

………でも、貴族令嬢が階級上の人間に手を出そうとしたらダメでしょ。

ここまで来たら教養って何ってなるよね……

………いや、今までの王の国政が、階級関係なしに我儘放題にしてしまったのかもしれない。


「2人の令嬢の精霊には呪いは付けられていなかったのかしら」

「付けないだろうね。侯爵はフィーアの姉を大事にしてるからね。政治の道具として、ね。子爵令嬢は他の家の者になるし、流石に付けないでしょ。そういう分別は持っていて欲しいと願うね」

「そう。彼女たちは最初からフィーアだけにやらせるつもりだったのかしら…」


『『それについては我々から』』


「ひゃあ!?」

「ソフィア!?」


ぶわっと火と土の力が私を取り囲む。

精霊の登場って毎回コレなの!?

力が分散したと思ったら机の上に炎の鳥と、亀のような姿で尻尾が蛇の、白虎と同じサイズの動物がちょこんと……

………ぁぁ、はい。

朱雀と玄武ね……


「………心臓に悪い」

『申し訳ない』

『お詫びします』


ちょこんと頭を下げられる。

………ちくしょうー!

可愛すぎる!!


「………うん。で、何?」

『火の精霊及び土の精霊は、直前で逃げました』

「………逃げた!?」


思わずラファエルを見てしまう。

ラファエルには2人の声が聞こえているかどうかは分からないけれど。

彼は顎に手をかけて考えていた。

………え、それはどっち…?


『はい。そもそも我ら究極精霊に敵う精霊などおりません』

『正常な者なら我らを直視することも、ましてや攻撃など出来ません』

「………じゃあ、本当に令嬢達は攻撃しようとしていたけれど、彼女たちの精霊は貴方達の力を知っていたから命令を聞かずに逃げた、と」


コクンと2人が頷く。


「裏切ったのは精霊達だった、ってことね」

『人間から言わせれば、ですね』

「うん。精霊側から見れば、当然の判断であり、貴方達(究極)精霊にとっては当たり前の事、だわね」

『我らには人間のように野心などありませんから。向上心を好む精霊は確かにいますが、向上心=野心ではありません。人間はすぐに勘違いして、我ら精霊を都合のいい道具扱いしがちですが。共存は我らの望みですが、人間からの支配使役管理など我らを侮辱する以外の何物でもありません』

『我らが人間を見放す寸前だった事はそれらが原因です。わずかな希望も絶たれようとしていたのもまた事実』


ズキッと胸が痛んだ。

彼らは事実を言っただけなのだろう。

けれど、責められているように聞こえた。

精霊達が契約者を選ぶことが極端に減ったのは、人間のせいだ。

ランドルフ国が見捨てられようとしている、と言ったラファエルの言葉が思い出される。

これは、この状態は、明らかに昔のランドルフ国民がやってきた縮図。

私はラファエルをもう一度見た。

私の視線を受け、ラファエルは困ったように笑った。


次の話はちょっと甘くなる!(ハズ…)

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