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第148話 王族の裁き




バタンッ!!

と勢いよく開かれた私の部屋の扉。

うん、振り向きたくない。


「………ソフィア」


ひぃ!!

こ、声が怒ってらっしゃる!!

恐る恐る振り向く。


「………君は、ベッドから出ないように言われていたはずだけど?」

「ご、ごめんなさい…」


………って、怒ってるのソコなの…?


「…まぁいい……さて、彼女がフィーア・ロペス侯爵令嬢?」

「はい」


私が頷くと、ラファエルが私の隣に座る。

ラファエルの背後にルイスが立つ。

………あれ?

ルイスまで来ちゃったの?

彼を見上げると、何故か睨まれた。

あ……もしかして、大事な仕事中だった……?

申し訳ない……


「大体の事はライトに聞いた。ソフィアの伝言もね」

「はい。それでチップは……」

「持ってきたけど、つけるかどうかは私の判断だよ。ソフィア、分かってるね?」

「勿論です。ランドルフ国民の裁きはラファエル様が行うことですから」

「ならいいよ」


ラファエルは横目で私を見て、すぐにフィーアを見つめる。


「報告は聞いてるけれど、最初から君の口から話してくれ」

「………はい…」


フィーアはうつむき加減で、口を開いた。


「私は父からサンチェス国王女に傷をつけて、ラファエル様から離れるようにするようにと命令されました。その……王族に相応しいのはこの国特有の教育を受けている貴族令嬢が相応しいと。私は母の立場から父の言葉に逆らうことは許されてはおらず、実行するしかありませんでした。………私の姉と子爵家の令嬢と3人で実行することになっておりましたが、直前で2人は精霊に命令せず、私だけの実行になってしまいました。更に私の精霊が暴走し、王女に過剰な攻撃をしてしまい……驚いた私はその場から逃げてしまい……申し訳ございませんでした」


全てを話したフィーアは頭を下げた。


「………そう。いくつかの質問に答えて」

「……はい」

「まず1つ目。君は出自がどうであれ、父親の命令に全面的に従う事は絶対ではない。拒否しなかったのは君の弱さ故。違う?」

「っ!? ………そ、れは……」

「拒否したら今の家から追い出されるとかそういう思いは一切なかった? 他国王女に傷をつける事自体、打ち首ものだと知ってるよね。自分のすることが例え命令だったとしても、君が行動した時点で君の家は取り潰しの上、サンチェス国との同盟を危ぶませた立派な犯罪者だよ」


ラファエルの言葉を漸く理解したのか、フィーアは真っ青になる。


「そのことを知ってて命令受けた君は、傷をつけるだけだったとか精霊が暴走したからとか、事情はどうであれ君は殺意を持って王女を攻撃した、と解釈される。いいね」

「っ……わ、私はそんな……し、知りませんでしたっ!」


フィーアが必死に首を横に振るけれど、全ては後の祭りだ…

事が全て実行された後なのだから…


「知らなかったじゃないよ。言ったでしょ。行動した時点で全ての結果が君と、君の家について回る。いいかい? 君は貴族の家名を背負っているんだよ。名乗っている時点で、自分の行動に責任をもたなければならないんだよ。ロペスの姓を受け入れた以上、君は父親を止めるべきだった。止めずにあまつさえ実行した君が許されることはない。君は貴族の責任を放棄した。君の家の者全てもね」

「ぁ……ぁぁ…」

「自分に出来ないと判断した時に、君は助けを求めるべきだった。私の挨拶を君は聞いていなかったのか? 何かあれば言えと言ったよね? 実行する前に君は私かソフィアに助けを求めるべきだった。同じ学園で過ごす以上、私達は君と同じ学友だったのだから。君は取り返しのつかないことをしたことをその胸に刻んでおくんだね」


無表情で彼女に言葉を放つラファエルは王太子そのものだった。


「次に君の処遇について、ソフィアから提案があったけれども、貴族の義務を放棄した君は、どう判断する?」

「………ぇ……」

「元々、ソフィアに君の処分について口を出す権利など持ち合わせてはいない。けれど、被害者として君の処遇について意見してくれている。君に――父親に逆らうことが出来なかった君に、ソフィアの提案を実行する勇気があるかい?」


私はチラッとラファエルを見た。

相変わらずフィーアに目を向けたままだったけれど。

………私の意見も汲んでくれるんだ…

本当にラファエルは優しいよね。

本来、聞く必要ない事なのに。


「受け入れれば、君は本格的に貴族と――自分の生まれた家をも裏切ることになる。受け入れなければ、家族と共にこの世を去れるよ」


その言葉に私は思わずラファエルを見て、口を開いた。


「ラファエル様。少し宜しいでしょうか?」

「何?」

「家族と共に、と仰いましたよね? けれど、ロペス侯爵の罪の証拠はないはずですが」

「君が動いている間、私が本当に何も動かなかったと思ってるの? ロペス侯爵家を探っていたんだよ。そしたら影が色々な証拠を見つけてくれた。それを使えば、ロペス侯爵家を潰せるよ」


ラファエルがルイスを見上げ、ルイスも頷く。

………ぁ、もしかして、その話し合いをしている最中に私が呼んでしまった…?

ごめんね……


「………で、どうなんだい」

「………わ、たしは……」


部屋の中は静寂に包まれた。

彼女が考えている間、私はラファエルに見られた。


「私には精霊は見えないけれど、ソフィアには見えるかな」

「はい」

「彼女の精霊はどんな感じ?」

「そのことなのですが」


机の死角でちょこんと座っている風精霊フウを呼び寄せた。

彼女はぴょんっと私の膝の上に乗ってくる。

例の首飾りを咥えたまま。


「白い――この動物は何?」

「風の精霊です。わたくしと契約している」

「ああ……え、精霊って動物の形している者は居なかったはずだけど…」

『私は主の世界の動物に姿を変化しているだけです。その方が親しみやすいかと思いまして。主は美形に慣れておりませんし』

「………余計なお世話だと思う……」


ありがたいけれども。

それにしても私の世界の動物……ってことは……


「………まさかの白虎の小さいバージョンか…」


私は顔を手で覆ってしまった。


『はい。本来四神の白虎は金属性ですが、一般的に風属性として知られておりますので、風属性である私の仮の姿とさせて頂きました』

「………因みに四神ということは…」

『はい。火精霊は朱雀。水属性は本来玄武ですが、玄武は土属性としての認識が強いですので水精霊は青龍。土精霊が玄武の姿を取る事になりました』

「………ぇ……じゃあ青龍は本来何属性なの?」

『青龍は元々木属性ですね』

「………へぇ……」

「………またソフィアが私を蚊帳の外にする……」

「………あ! ご、ごめんなさい…」


そうだった。

風精霊フウの言葉は他の人に聞こえないから、ラファエルにも聞こえないんだったっけ…


「わたくしの分かりやすい姿を取ってくれてるそうです。フィーア嬢の精霊は風属性ですので、同じく風属性の風精霊フウが対応してくださり、フィーア嬢の精霊にかけられていたこの呪いの首飾りを回収してくださいました。この首飾りをかけた者の言うことを強制的に聞かせ実行させるものだそうです」

「そう。ならこの分は罪を軽くしてあげても良いよ」


ラファエルの言葉にハッとフィーアが顔を上げた。


「精霊を利用されたのなら、君が例え拒否できたとしても、無理矢理実行させられただろうしね」


その言葉にフィーアは涙を流して立ち上がり、頭を下げた。


「私は貴族の義務も放棄し、とんでもないことをしてしまいました。死んでお詫びするしかないと思っていました。けれど私は逃げることを許されません。叶うなら償いの機会をお与えください! 私に、生きて一生罪を償う機会をください!」

「………分かった。君に服従チップを埋め込ませてもらう。内容はソフィアが決めた内容に加え、私の方からも1点追加してある。“貴族の責任を忘れた時はその命を絶つ”。それでいいね」

「はい!」


ラファエルがルイスに合図し、ルイスが服従チップを彼女の首筋にブスリと刺した。

ひぃ!?

チップの埋め込みってそんな乱暴なの!?

手術とかして埋め込むんじゃないんだ!?


「っ……」


フィーアが痛みに悶えているけれど、ルイスは無表情で彼女の傷の処置する。

み、見てるだけで痛い…!!


「ソフィア」

「は、はい…」

「彼女は君の侍女にする。君が提案した服従内容だし彼女は女性。教育し直すにも君とソフィーの方が適任だろうから。学園の籍は外さない。学園にもそのまま通ってもらう。その方が処分体制を整える前にロペス侯爵が隠蔽しないと思うからね。油断してくれれば幸いだよ。王家は王女を傷つけた犯人を見つけられていない、しかも犯人であるフィーア・ロペスを傍に置いており、またの機会が近いうちに得られる、と思ってくれればいい。ソフィア、君を囮にさせてもらうよ。これは、君への罰でもあるから」

「はい。構いません。勝手をしたわたくしもお許しくださり感謝いたします」


私はラファエルに頭を下げた。


次の話でシリアス終わります。(多分)

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[気になる点] ちょっと台詞が気になりまして… 『自分の行動に責任なければならないんだよ。ロペスの姓を受け入れた以上』 責任しなければならない?言い回しがよく分からず… 責任をもたなければ?責任を負わ…
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