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第141話 先に仕掛けられました




ゴォッ!!


「っ!」


放課後、1人で廊下を歩いている時だった。

背後から何かしらの攻撃を受けたのは。

考え事をしていた私は、聞こえてきた音に咄嗟に反応できなかった。

朝、私があの時共通規約を出して注意した時、何名かに好戦的な視線を向けられていた。

王族に対してではない。

多分、女としての嫉妬。

身分は違えど、皆王子に憧れはあるだろう。

私もこんな立場じゃなかったら、夢見たはずだし。

でも、だからと言って実際に行動を起こすのは間違っている。

その行動に正当性などあるはずもない。

でも、自分たちが正しいと思っている者達が、近いうちに私に接触してくるかもしれない。

その者たちの対処をどうしようかと。

そんな事を考えていた為に、気付かなかった。

ハッと気づいて振り返った時には遅かった。


鉛が全身にぶつかった様な衝撃。


私の身体は宙に投げ出され、その時ようやく気付いた。


――精霊の攻撃を受けた……?


と。

受け身などとれるはずもなく、廊下の固いコンクリートのような石床に叩きつけられた。

痛い。

息が出来ない。

咳き込むことさえ出来ない激痛に、私はその場で悶える事しか出来なくなった。

全身が同時に床に叩きつけられて、1ミリも身体が動かせないほどの痛み。

そんな私の耳に、パタパタと去って行く複数の足音が聞こえた。

そして、天井裏の気配が2つ去って行く。


「姫様!!」


カゲロウの声が聞こえ、何とか片目だけは薄く開けた。

焦っているカゲロウが見え、私はもう一度目を閉じた。

目を開けていることさえ、辛い。


「ちょっと待っててね! 今、イヴが婚約者様に知らせてる!」


………うっ……

ラファエル、に…?

それ、大丈夫?

ラファエルが私より先に相手を処分してしまうんじゃ…

これは私に対する攻撃だ。

出来るだけ私が対処したい。


「ライトが犯人追ってるから!」

「   」


声が、出ない。


「姫様、身体触るよ!」

「うっ…ごほっ!」


カゲロウに少し身体を動かされた瞬間、一気に肺に空気が流れ込んできて咳き込んでしまう。


「辛いだろうけど、ゆっくり息吸って!」

「げほごほっ! っは!」


誘導されながら、何とか息が出来るようになった。

そして思考能力が正常に機能し始めたとき、私は気づいた。


「っあ!」


自分の中から湧き上がってくる力を。

私が契約している精霊達の怒気が、私を包み込んでいく。


「だ、めっ!」


暴走しようとしている。

直感で思った。

今ここで力が爆発したら、国を丸々吹き飛ばしてしまうかもしれない。


「私はっ…! 大丈夫、だから! 静ま、って!」


出来る限りの声で言ったけれども、弱々しい声しか出ず、それが更に刺激になってしまったらしい。

私の身体から、それぞれの属性である力が具現化し、煙のように見える特徴ある色とりどりの力が溢れてきていた。


「や、め……」


痛みと恐怖に、私の目から涙が溢れた。


「ソフィア!!」


涙が流れると同時にラファエルの声が聞こえてきた。

目を開くと、ラファエルが焦りながらイヴと共に走って来るのが映った。


「た、すけ……」


手を伸ばしたいのに、痛みで動かない。

消えいるような声で助けを求めた。

ラファエルには届いていないだろう。


「止まれ!! ソフィアまで殺す気か!!」


ラファエルが怒鳴ると色とりどりの煙がピタッと止まり、数秒置いてすぅっと私の中に戻るように、煙が小さくなって見えなくなった。

………助、かった…?

………あれ……?

今の煙のようなものは、ラファエルに見えていた…?

ふと疑問に思ったけれど、それよりもラファエルの顔を見てホッとした。

一気に気が抜けて、意識が遠ざかっていく。

目も開いていられない。

私は逆らわず、目を閉じた。


「ソフィア! 意識失っちゃダメ!! もうちょっと保って!!」


その言葉に、私は再度目を開いた。


「ユーグ! ソフィアの身体の中に入って! 出来る限り治療して!!」


ユーグが頷いて私の身体の中に入ってきた。

………治療、出来るの?

凄いね。

精霊って何でもありなんだ…

ユーグが入ってから、身体がポカポカしてきた。

そして段々痛みが引いていく。

………すご……

これって、中の力って言っていいの……?

さっきの受けた攻撃も、中どころじゃないような…

人を吹き飛ばすなんて……

それこそ人の命を奪ってしまうような…大や特大に分類される威力じゃ…?

色々バランスが可笑しい気がする…

でも、おかげで助かった……


「………ラファエル……」

「ソフィア…よかった……大丈夫?」

「………なんとか……」


少し動けるようになって、ラファエルに手を伸ばすと、出来るだけ痛みが出ないように優しく抱き起こしてくれる。


「いっ……」

「ごめん、痛かった?」

「大丈夫…」


ラファエルに触れられて、私はホッと息をついた。


「………私が対応するから、手を出さないで欲しいの…」

「………ヤだ」

「ラファエル…」

「こんな事になって、なんで俺が我慢しなきゃいけない? 大事なソフィアがこんな目に遭って! 打ち所が悪かったら即死してたよ!?」

「………」


ラファエルに睨まれ、私は何も言えなかった。


「何でっ!」


ギュッと、でも決して私に痛みを感じさせないように抱きしめられる。

………また、やってしまった。

私はソッと目を閉じた。

私のせいで……ラファエルを泣かせてしまった……


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