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第129話 聞きたくない言葉




「却下…却下…有り……採用……却下、却下……採用、採用、採用……却下……これは要検討…」


私は今、部屋に持ってこられた商品の選定をしていた。

ボールペンの上にマスコットをつけたもの。

動物の可愛いもの、格好いいものを採用。

微妙なものは却下していく。

ペンが終われば次はキーホルダー。

動物のマスコットにチェーンがついただけのもの。

同じくマスコットの良いもののみ残す。

次はイニシャルキーホルダー。

これは良い悪いなどは必要ない為、最終チェックみたいなものだ。


「………ラファエルはいつ戻ってくる?」

「当分は帰られないかと」

「そう。なら伝言持ってってくれる?」

「何でしょう」

「却下されるだろう前提なんだけど、装飾品に精霊学の本に載ってた精霊の姿絵を真似て同じように作れないかって」


私はキーホルダーを手にして、ライトを見上げた。


「分かりました」

「それと、ペンのインク。黒以外作れないかって。赤とか青とか」

「伝えます」


ライトがメモして部屋を出て行った。


「イヴ、ソフィーがいるからここはいいわ。ダークと部屋の前で待機してくれる?」

「………分かりました」


イヴはチラッとソフィーを疑わしい目で見たが、出て行った。

………やっぱり私達サンチェス国の人間は、精霊の力は未知のものだから疑うよね。


「………ねぇソフィア。精霊の力を使ってみてどうなの」


ソフィアはここ数日、私の身支度の為に水を出したり、風で私の髪を乾かしたりと、何気に力を使っていた。


「そうですね。日常的に使うのは何も問題ないかと。ただ、これを究極精霊達が行うとなると、唯華さんの心配はなくならないでしょうね」

「………だよね」


やっぱり、使えそうにない、か。

まぁ、ソフィアが便利な全属性を使えるのは正直ありがたい。

ソフィアだけで事足りるから。

………力を使うことを前提にしたら、の話だけど。

だけど、私的には一生使えなくていいかな、と思う。

便利な力は人を堕落させる。


「わたくしが使えるのは基本属性である8種のみです」

「………ぇ?」

「アマリリス元エイブラム男爵令嬢が使っていた魅了の力などの異種の力は一切使えません」


ハッと私はソフィアを見た。

そうだ。

アマリリスの使っていた力は、8大属性の火・水・風・雷・土・氷・光・闇に属する力ではない。

ラファエルの精霊ユーグの水の力で幻を見せるなどの応用魔法ではない。


「………突然変異の力なの?」

「………力と力の掛け合わせ、と表現したらよいでしょうか…? 人を魅了させる、というか自分の思い通りにする方法は、雷の力で人の思考を停止させ、水の力で幻を見せ、闇の力で自分の思考を相手に押しつける、といったところでしょうか…?」

「………因みにソフィアは出来ないの?」

「出来ませんね。わたくしは8大精霊から力を分けて頂いただけ。わたくし自身が生まれ持つ力ではございませんから。ですから1つ1つは使用できても、掛け合わせることは出来ません」


これまた厄介な…


「因みに8大精霊は全員、人を魅了させることが出来るそうです」


ゴンッ!!

私はソフィアの言葉に思わず頭を机にぶつけてしまった。


「………聞きたくない…」

「それぞれの長ですので、下の精霊達が使える全ての力は苦もなく出来るそうですので」

「聞きたくないって言ったよ!?」

「唯華さんが知らなくてどうするのですか。精霊達の長をまとめ上げる唯一の御方なのですから」

「対等の立場じゃなかったっけ!?」


まとめ上げるって何!?

勝手に契約結ばれてただけなのに!!


「? 8大精霊達はそのつもりでしたけれど」

「不思議そうに見ないで!! こっちがそんな目したいわ!!」


容赦なく怖いこと言ってこないでよ!!


「唯華さんの手腕に感銘を受けて、精霊達は契約したいと集まってきているのですよ? 唯華さんに命令されるのを待っています」

「怖い!! 感銘って何!? 私何もしてない!!」

「ご謙遜を。このどうしようもなかったランドルフ国を立て直したのは誰ですか」

「ラファエルだよ!!」

「いいえ。唯華さんです。唯華さんのアイデアで回復したのです」


アイデア出しただけ!!

それを実行したのはラファエルであって私ではない!


「精霊達のお言葉をお忘れですか」

「精霊の言葉?」


………いや、思い出したら私は終わるかもしれない!!

言わないでソフィア!!


「『どうしようもないクズで阿呆な国王と王子が国を滅ぼす』『もうこの国に希望はない』『愛想が尽きた』『もう潰してしまえ』と思っていたところに、唯一民のための王子ラファエルが、民のための王女を連れてきた。その王女が次々と民のための施策を生み出した。国が生き返ってくる。また期待していいのかもしれない。いや、期待しよう。この王女は民の為になる」


ドカーンッ!! と噴火したような衝撃を受けた。

まるで、自分から湯気が出ていそうだ。

もう私の顔は真っ赤だろう。


「買い被りすぎだよ!! 私は、私のオリジナルのアイデアを出したわけじゃない!!」

「ですが、この世界にはないものです。結果的には唯華さんが変えたんですよ。それはわたくしと唯華さん、そしてラファエル様しか知りません」

「………そう、だけど……」


そんなに評価を受けることではないはず。

今ここに私と同じく転生した人がいれば、嘲笑われるだろう。

前世の知識を使っているだけじゃん、って。


「唯華さん。他の方の前でそんな事は仰らないようにお願いしますね」

「ぇ…」

「まだわたくしと唯華さんは繋がってるんですよ。何を考えているか分かります。この世界にない知識故、ランドルフ国は栄え始めているのです。ですから、もっと堂々として下さいね」

「………ソフィア」

「いいえ。わたくしはソフィー。そして貴女こそが民の希望であるソフィア・サンチェスなのです。堂々としてくださいましね」


鋭く視線を向けられ、私は息を飲んだ。

私より王女――いや、今も尚王女であるソフィアに言われたら、私は何も言えなくなった。


「わたくしに王女であるためにお話したがっていたではないですか」

「………!」

「王女とは、常に前を向き、後ろめたさなど微塵も見せずに歩み続け、民に寄り添い、手を差し伸べる存在です。唯華さんの先程の言葉は、王族であるものが言ってはならないものです。何があっても自分が常に正しいと思って胸を張っていてください」


ソフィアの言葉に、私は思わず唇を噛んだ。


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