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第126話 過度な力は秘密です




「お茶会、ですか?」

「はい。いかがですか?」

「大丈夫だと思いますが、念の為ラファエル様にお伺いしてからのお返事でも宜しいでしょうか?」

「勿論ですわ。よいお返事をお待ちしております」


ニッコリ笑ってマーガレットが言う。

今は学園の休み時間。

ラファエルに急な仕事が入り、昼はマーガレットとクラークと共に取った。

そして残りの時間を、学園の校庭に面したカフェテラスのようなところでお茶していた。

その際、ガルシア公爵家のお茶会に参加しないかと誘われたのだ。

予定は週末。

学園が休みの日になる。

学園が休日と言っても、王族の仕事には休みはない。

スケジュールが組まれているわけでもない。

常に起こっている問題。

毎日処理しているのがラファエルやルイスだ。

優先順位を決めて緊急を要する案件を先に片付けているけれど、その日に発覚した問題が緊急だった場合、優先順位がガラリと変わる。

休みを取るためには予め緊急を要する案件を1日に全て終わらせ、後日に回してもいいものだけが残るようにする。

それが容易ではないことは、無知な私にも分かる。

だから今週末の予定が今のところ無くても、前日、当日に何が起こるか分からない。

それが味方が少ない私達の悩み所と言える。

ラファエルの代わりを務められる人間がルイスしか居ないということは、どちらかに何かがあった場合、もう一方に全ての負担がのし掛かる。

そうなると、残った方も過労死するよね。


「それにしてもソフィア様」

「? 何でしょう?」

「ソフィア様は色々な方に好かれておいでなんですわね」


マーガレットを見ると、ラファエルの時のように視線が交わらない。

私の後方にいる精霊達を見ているのだろう。

………私も精霊と(半ば強引に)契約してから、様々な色、大きさ、種類、の精霊が視界に入って落ち着かない。

それこそファンタジーによく出てくる手の平サイズの羽が生え、耳がとがった可愛らしい精霊から、顔が怖い…鬼みたいな顔に角が生えた者まで。

一番大きい精霊は、2mくらいのだろうか…

最早精霊とは呼びたくないような者までいるから……

何とか見えないように出来ないだろうか……

四六時中見えていると気が散って仕方がない。

特に授業中。

ため息をつきたいけれど、今は無理だ。

私の契約している精霊は見えないだろうけど、緊張してしまう。

いつバレるかって…

今私の周囲を漂っている精霊は、弱や中みたいだから大丈夫だと思うけど。

そして――

私の目にはマーガレットの肩に座っている、緑の髪を持つ可愛らしい小さな精霊と、クラークの背後に立っている茶の髪を持つイケメンな人間と同じ様な身長の精霊が見えていた。

………ラファエルの言う通り、究極精霊との契約者となってしまった私には、他人の契約精霊が見えるらしい。

更に精霊同士は分かるのか、おそらく風属性弱の彼女と土属性中の彼は何処か緊張しているように見える。

私の精霊達は姿を現さないようにしてもらっているはずなのに、気配で分かるのだろうか?


「………ラファエル様にも言われましたが…あいにくわたくしはランドルフ国民ではございませんので……好かれているとお聞きしても、見えませんので実感がわきません…」


私がそう言うと、ピクッと2人の精霊が僅かに反応したのを見た。

彼らに聞けば、私が精霊と契約しているともらしてしまうかもしれない。

けれど、忠告のような視線は向けられない。

そんな所を見られれば、自分でバラすようなものだ。

私は極力精霊と契約していると知られたくない。

………いや、契約そのものを知られるのはあまり問題視していない。

問題なのは、強さ。

究極精霊と契約しているのが問題だ。

マーガレット達が私を利用しようと思っているとは、今のところ思ってはいない。

でも、私を――私の精霊を利用して何かを成そうとする人間は信用ならない。

そもそも、私は平穏な――王女としてはあり得ないんだけど、極力平穏な生活が出来ればいいと思っている。

今の私はソフィア・サンチェスの命をもらって生きている。

その命を少しでも長く、保ちたいと思っている。

だから、この過度な力で寿命を縮めるような事はしたくない。

………ナルサス相手に啖呵切ってた女の言葉とは思えない、とかライトやイヴに突っ込まれそうだけど。

そう願うことは、罪ではないはず。


「わたくしもご契約させて頂いていますの。ソフィア様にお目にかけることは出来ませんが、風属性です」

「………わたくしに聞かせて宜しかったのですか? 契約はご内密なはずでは?」

「わたくしはソフィア様は勿論、ラファエル様からの信頼がないことくらい自覚しております。自分がまいた種でございますから。けれど、これからはソフィア様、ラファエル様、この国のために尽くしたいのです。その為には、まずわたくしの誠意をお見せしなければ始まりません」

「………」

「私は、土属性と契約しております。地関係の仕事ならお力になれるかと」


マーガレットに便乗してクラークも言ってきた。

………クラークまでどうした…


「クラーク殿まで、わたくしに伝えて宜しかったのですか?」

「私のことはスティーヴンで構いません。私はマーガレットと共に生きる者です。これから公爵家も継がねばなりません。この国の貴族の頂点に立つ者として、ラファエル様とソフィア様の信頼なくば、公爵家を潰してしまいます」


………へぇ。

パーティの時の印象、パーティ後のマーガレットとの会話を聞いたときの印象とは、別人だ。

彼は今、ちゃんと貴族としての顔をしている。


「分かりました。お2人の誠意は、わたくしソフィア・サンチェスが確かに頂きました。お2人のこれからも、見せて頂きますわ」


私の言葉に、2人はゆっくりと頭を下げた。

その瞬間、私は2人の精霊にソッと目配せし、唇に人差し指を当てた。

2人は少しだけ頷き、了承を示した。

これで2人は契約者である相手に、私の精霊のことは口外しないだろう。

私がそう指示したことは、究極精霊の指示と同じ。

破ればおそらく2人は究極精霊によって消されることとなるだろう。

ラファエルに見せてもらった精霊の力の序列の説明にそう書いてあった。

利用させてもらって悪いけど…


「お2人は何か思いついたことはございますか?」

「何か、とは…」


2人が顔を上げる。


「わたくし、ラファエル様のお役に立つため、国のお役に立つため、考えてはいるのですけれど……」

「今度、温泉街が出来ると伺っておりますが、その他にも、ということでしょうか?」

「些細なことでも勿論構いませんわ。学園内でのアイデアでもいいですし」

「そうですわね……以前、わたくしの精霊の希望がありまして、その件でも宜しければ…」

「なんですの?」


精霊の希望か。

興味ある!


「精霊が自由に力を使える場所が欲しいと」

「力を使える場所、ですか…?」

「はい。精霊も思い切り力を使いたいときが年に何度かあるそうなのです。けれど、精霊がいることはランドルフ国の民なら存じてますが、あからさまに力を使って地形を変形させてしまったり、天候を操ったりは、人に迷惑をかけると抑え込んでいるらしいのです。けれど、その抑えも限界に達してしまうと暴走を生んでしまうそうなのです」


過度な我慢は暴走を生む。

何処かで発散させたい。

それは当然といえば当然。

私は頷いた。


「そうなのですね。それは大変ですわ。分かりました。ラファエル様に伝えますわ。学園にも欲しいですわね。力を発散できる場所として」

「けれど、そうなれば他の生徒に精霊契約者と伝えてしまうことになります」

「それは見られてしまえば、のお話ですわよね?」

「え……」


マーガレットとスティーヴンが首を傾げるのを見、私は口角を上げたのだった。


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