第125話 新たな侍女が出来ました
パチッと目が覚めた。
辺りを見渡すと、いつもの自分の部屋だった。
相変わらずラファエルに抱きしめられているけれど。
目が覚めてホッとする。
ソフィアの言った通り、私の夢の中での出来事だったらしい。
………ついでに精霊の事も夢だったらいいなぁ。
「おはようございます。姫様」
………はぁ。
視界に入ったのは気のせいだと思いたかったのに…
私は改めて視線を向けた。
そこには20代前半の女の人がいた。
顔形は私によく似ている。
………本当は私が彼女に似ているのだろうけど。
髪色は金色で、ふんわりウェーブ。
羨ましいな!!
その髪ちょうだい!!
「………名前何にしようか」
「姫様のお好きなようにお呼びくださいませ」
………私より姫だよね…やっぱり…
立ち姿とか完璧令嬢だよ。
「………じゃあ、ソフィーにしようか」
ソフィアは英語読み。
ソフィーはフランス語でソフィアだったはず。
どうせ同一人物だし。
ベッド脇に立っていたのは、精霊となったソフィアだった。
「はい。宜しくお願いいたします」
「………ずっと姿現してるの?」
「はい。わたくしは、姫様のお世話をさせて頂きたく……本当はお近くにいさせて欲しく思い、図々しくも精霊に願いましたので。勝手な真似をお許し下さい」
ソフィアが私に頭を下げた。
………それで精霊とほいほい契約結んじゃった訳ね。
ソフィアらしくないと思った。
彼女は完璧な、私より王女らしかった彼女が、私の了承無く勝手に契約したと知り、不思議だったのだ。
「………もう怒ってないわ。それより、彼らは本当に――」
「………誰と話してるの…」
グイッと私は引き寄せられた。
「うわっ……お、おはよう、ラファエル」
「………おはよ……誰……?」
ラファエルがソフィアを見た。
「………ぁれぇ……ソフィアが…2人……?」
相変わらず寝起きは幼子のようなラファエル。
子供のように不思議そうに見ている。
「お初にお目にかかります。わたくしは、ソフィーと申します。この度、姫様にお仕えすることとなりました。宜しくお願いいたします」
スッとソフィアは礼をした。
その動作の隙が無いこと…
さすが王女様。
「………」
パチッとラファエルの目が一瞬で王太子になった。
「………ソフィアの知り合い?」
「うん。サンチェス国にいた時に世話してくれてたの。漸くこっちに来られたみたい」
………って事にした方が無難だよね…?
………はっ!!
ライトとカゲロウに聞かれたら困るかも!?
やっぱり本当のこと言っておいた方が…?
悩んで、ソッとラファエルの耳に口を近づける。
「………私の精霊になったソフィーなんだけど、ずっと姿現して人間みたいに過ごしたいって言うから、そういうことにしておいて…」
「………ぁぁ、成る程ね。やっぱり契約しちゃったか……でも、あんな姿の精霊いたっけ……?」
「昨日夢に突然現れたから、もしかしたら寝た後に来たのかも……」
「そうなんだ。分かった」
ラファエルがソッと私の頭を撫でて、起き上がった。
「じゃ、ソフィアにもやっと専属の侍女がついたって事で。俺がいない間はソフィアを宜しく。君ならソフィアに降りかかる火の粉も払えるでしょ」
「精一杯務めさせて頂きます」
「ん。………さて、俺の従者は今日も寝坊か」
「………ナルサスって朝弱い?」
「強くはないな」
ラファエルは苦笑してベッドから降りた。
「着替えてくるから、ソフィアも着替えて。日課してご飯食べたら学校だよ」
「はぁい」
ラファエルを見送って、私はベッドから降りようとすると、いつの間にかソフィアが洗面用の水を持っていた。
「………いつの間に…」
「容器さえありましたら水は生み出せますので」
「………ぁぁ…」
納得し、私は顔を洗ってベッドから出た。
ソフィアがジャージもどきを持ってきて、私はそれに着替えた。
「ソフィーは精霊について何処まで知ってるの? 聞いたんでしょ? 彼らに」
「はい。ですが姫様が学園で学んだことと、夢の中でご一緒にお聞きしたお話以外は特に」
「そっか。………彼らの言っていたことは本当なの?」
「はい」
ソフィアの言葉に、私はため息をついた。
迎えに来たラファエルと、漸く姿を現したナルサスと、私の影達と共に日課に向かった。




