第120話 学ぶと面白いです
ランドルフ国の学園の授業は、
文学 →国語系の文法などの言葉に対する学
機械学→機械の種類の学
歴史学→そのまま国の歴史(社会系)
植物学→植物の種類(理科系)
精霊学→精霊の種類や用途の学
に分けられていた。
専門科には、
技術学→機械の作成構造技術習得
が追加される。
サンチェス国の作物関係は、植物学に組み込まれているそうだ。
技術学と植物学の表紙に大きくNEWと書かれているのはどうかと思うけれど…
Sクラスには技術学が組み込まれており、専門科に分類されるそうだ。
………希望してませんけど!?
と言っても、アイデア出しは私だから自然と組み込まれたのだろう…
Sクラスって言っても、普通科の、って聞いたと思ったんだけど…
技術科は他にあるって……
それとも私とラファエルがこのクラスだから?
………分からない。
まぁ、いいか…
Sクラスにはマーガレットとクラークもいて、席は決まったところはなく、私とラファエルが朝一番に来て教室の一番後ろの窓際とその隣を確保したものだから、私の前にマーガレット、ラファエルの前にクラークが陣取ってしまった。
他の者が敬遠して遠くの席が先に埋まっていったことも理由の1つだけれど…
まず教師の説明があり、授業が始まった。
ランドルフ国の学園は、サンチェス国の学園と同じく、何ページから何ページまで進める、というものだった。
文学、機械学、歴史学、植物学、技術学と5種類の授業が行われた。
「ソフィア、技術学と機械学で分からなかったところはなかった?」
「はい」
ラファエルに聞かれて私は頷く。
文学はサンチェス国とそう変わらないし、植物学はサンチェス国でもやっていた。
だから分からない事はないと判断されたのだろう。
「わたくしのアイデアがこうして形になっているのを知るのは楽しいですわね」
「この教科だけは更新され続けてくるだろうね」
それは暗に私のアイデアでページが増えていくということだろう……
………それはなんだか複雑な気持ちだった…
「ラファエル様、精霊学はわたくし初めてなので、分からないことが多いと思います。教えてくださいませ」
「いいよ」
休み時間を使ってラファエルに精霊学の事を教えてもらうことになった。
ラファエルは教科書を開いて私と一緒に覗く。
「精霊っていうのは、自然界に生息する人間とは別の生き物。精霊は人なつっこく、精霊が気に入った人間に近づいてそのまま力を貸してくれる。精霊には基本的に名前はなく、名前をつけた人間とは契約関係になり、その方が力が強くなる。勿論、精霊と人間は対等の立場で、精霊が嫌がることをすればその人間に悪いことが起こり、精霊も離れていく。逆に悪いことを喜びに感じている精霊もいるから、そういう精霊は悪人につく場合も多い」
………まさにファンタジー…
本当にこんな事が実際に起こるのだろうか…
「精霊の基準は、精霊が気に入ってくれなければならない前提ですか?」
「ううん。生まれたときから精霊が見える者、途中から見え始めた者がいる。その者達は自分で精霊を見つけられるから、自分から語りかけて頷いてくれれば契約となるよ」
「………ランドルフ国の方全員が見えるわけではないのですか?」
「勿論。その人の資質にもよるし。ただ精霊が見える者は、権力者になることが多いね。精霊の力でのし上がれるから」
「………精霊が嫌がることをするのはいけないのでは…」
「精霊自体がのし上がり……というか向上心に好意的なら有りかな」
「………」
そうなんだ…
悪人に精霊がつかないことを祈りたい…
「精霊は色々なことをしてくれるから助かるんだ。危ないところを守ってくれたり、力を増幅させてくれたり、変身させてくれたり」
………ん!?
「………変身、ですか…?」
「………あれ? 私の瞳の色変わってなかった?」
首を傾げるラファエルに、私は思わず頭を抱え――そうになったけど、踏みとどまった。
危ない。
ここ学園だ。
人目がある。
マーガレットに呼ばれたパーティで、ラファエルの瞳の色が変わってたのはそういう事なの!?
っていうかラファエルに精霊がついていたなんて、初耳だよ!!
何とか見れないかな精霊!
ここまで来たら見たいよ!!
ファンタジーに触れたいよ!!
実際の精霊に触れたいよ!!
魔法みたいな事出来る!?
「………そういう事だったのですね。ラファエル様、わたくしにも精霊は見られるようになるでしょうか?」
「ん~」
ラファエルが私を見る。
正確には私の後ろのようだった。
視線が交わらない。
「素質は充分だと思うんだよね」
「本当ですか!?」
「うん。だって、………王宮にいたときからソフィアに群がる精霊多かったし」
………何故小声で言うの。
………何故嫌そうな雰囲気出すの。
王太子の仮面剥がれないように必死だね。
そして私に群がってたの!?
精霊が!?
思いっきりキョロキョロしたい!!
王女の身でそれ出来ないから何とか堪える。
「………でもソフィアが精霊と契約したら、俺の相手してくれなくなるかも…」
続けて呟かれた言葉に、私は妙に納得してしまった。
そっちか…と。
今まで精霊の存在を意図的に隠してたのね…
知らないの知ってたでしょ!?
でもそんな事言えないし、ラファエルが不機嫌なままだと精霊の事、更に聞けない。
私は授業が始まるまで、ラファエルの機嫌を回復させることに専念した。




