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第119話 カルチャーショックを経験しました




授業初日。

私はラファエルと共に登校した。

クラスも一緒だ。

………Sクラスなのが納得いかないけれど…

クラス分けは成績順だったはず。

でも私は入学試験どころか、編入試験さえ受けていない。

なのにラファエルと共に成績トップクラスに入れられるとは思ってなかった。

教室に入ると、1人1人の机と椅子。

………大きすぎるけどね!

2人は余裕で使えるだろう広さの机に、肘掛け付きのふわふわな一人掛けソファーのような椅子。

………だから、学校にこんなの必要ないって!!

Sクラスだから!?

それで解決するの!?

他の全クラスがこんな感じだったら、私はもうキャパオーバーで倒れるかもしれない。

サンチェス国が日本の学校とそう変わらなかったから、国によって違うとは思ってもみなかった。

机はコの字になっていて、座って左側に教科書だろう本が積み上げられていた。

右側には薄い本。

多分書き取り用のノート。


「………ぁれ? ラファエル、このボタンは何?」

「ああ、それ? 赤いボタン押してみて」

「赤い……」


机の自分側の丁度右手の位置にボタンがあり、ラファエルに言われた通りの赤いボタンをポチッと押してみた。

すると座って正面の一番奥側の机の上の部分にポコッと穴が空いた。


「………何これ」

「そこに本立てかけておくの」

「………」


机の左側に積み上げられている教科書の一冊を取る。

そして開いてその窪みに嵌め込んでみた。


「………」


立ったよ……

教科書置きなんて便利なのかどうなのか……


「青いボタンを押すと…」


黙っている私を置き去りに、ラファエルが青いボタンを押した。

すると、ノートが置かれている左側の教科書置きに近い方の机の上がスライドした。

そこにはずらりとペンが並んでいた。

………筆記用具も支給品ですか……

黒ばっかりだけどね!


「で、緑のボタンを押すと……」


ラファエルが机の上の教科書とノートを置いてあった場所からずらす。

そしてボタンを押した。

そうすれば、机がまたもやスライドし、覗き込むと丁度本が入れられるだろう仕切りがつけられた収納スペースが。


「………」


学校の机にこんな機能要らないと思うよ!?

机の下に収納スペースを作ればいいと思うよ!?

取りあえずラファエルが当然のように教科書とノートを入れていった。

机の上に何も乗ってない状態で、赤と青と緑のボタンをもう1回ずつ押すと、机に開いた穴が元通りになった。


「………黒のボタンはまさか……」


何だか嫌な予感がした。

ラファエルに私は腕を引っ張られ、机から離された。

そしてラファエルが黒のボタンを押すと、床がスライドし、穴が開いて机と椅子が収納されていって、床が元に戻った。


「………これ、どうやって戻すの…」

「この真ん中辺りの床が手動で動くから、ここをスライドさせて…」


ラファエルが床に触れると10cm四方くらいのスペースが開き、黒いボタンがあった。

それを押すと、机と椅子が元に戻った。

………もうお腹いっぱいですよ!!


「で、この紫のボタンが――」


まだあった!?

ラファエルが押すとノートを収納した下側部分がパコッと開いた。


「………」


そこには運動用の――日本で言う体操着が入っていた。

………あったんだ……運動用の服……

私わざわざジャージもどき作ったんだけど……


「ま、令嬢は乗馬とかだけどね」

「ぇ……」


………まじで!?

広間で運動系もあるって聞いたから、体育みたいに動けると思って期待してたのに!!

………って、この世界の女子は走り込みとかしないんだった…

テニスとか作ろうよ!!

乗馬で体力はつかないと思う!!

私は絶望した顔を思わずラファエルに向けてしまった。


「………ちゃんと朝の日課はしていいよ」


そんな私を見てラファエルが苦笑し、私の頭を撫でながら言ってくれた。

………それすら無くなったら、私泣くよ……

ガッカリしていたら、教室の外、廊下がなんだかざわつき始めてきたことに気づく。

皆が登校してきたのだろう。

未だこれぐらいの時間で、っていう大雑把な感覚だから、当然登校時間など曖昧。

………早く時計作った方が良いんじゃないだろうか…

私はそう思いながら、収納した教科書とノートを元の位置に戻していった。


「………ぇ……」


私は教科書のタイトルを改めてみて、目を見開いた。


「どうしたの?」

「これって…」


私はラファエルに教科書を見せた。


「精霊学だね。それがどうかした?」

「せい……」


私は唖然とラファエルを見た。

………いやいやいやいや!!

何でここに来てファンタジー系の言葉が出てくるわけ!?

精霊なんて今まで聞いた事も見たこともないんですけど!!

むしろランドルフ国は機械系の国だから、ジャンル的にはSFの部類に入るんじゃないの!?


「は、初耳なんですけれど……」

「え……?」


私が呆然としたまま呟くと、ラファエルが驚く。

いやいや!!

驚いてるの私の方なんだけど!!


「サンチェス国にも精霊がいるでしょ?」

「だから聞いた事ないんですが!!」

「………?」


何故不思議そうな顔で首を傾げられなきゃいけないのよ!?


「ソフィアも見えてるでしょ。所々に精霊が漂ってるの」


漂ってるの!?

私には全く見えないんですけど!!


「大体、あの令嬢の件は精霊なしで、どう説明するの?」

「………あの令嬢……?」

「ソフィアに突っかかってきた平民。香水臭い」


………アマリリスの事!?


「まさか…」

「精霊使って人の思考操作しなきゃ、流石に教養のある貴族を自分に引き寄せる事なんて出来ないでしょ」


思いっきり床に崩れ落ちたい……

………こんなカミングアウト要らなかった……

ヒロイン補正じゃなく、精霊補正……

ぁぁ……なんだかすっごく納得がいった。

魔法もない世界で、どうやったら魅了みたいな力が働いている状態になっているのか。

………アマリリスは気づいていたのだろうか……?

教えてもらわなきゃそのところ分からないけれど…

………凄いねぇ……ファンタジー……

何でも出来て羨ましいねぇ…!!


「………ランドルフ国では当たり前なのね……多分、サンチェス国の人間は誰も知らないよ……」


学園に来ることになって、ある意味よかった…

だって、ランドルフ国の常識が私に無い。

他の教科書を眺めると、文学、技術学、機械学、歴史学、植物学など。

………精霊学以外には特に変わったことはないみたい……

蓋を開けてみないと分からないけれど……

私は今日1日でどんなことになるか分からなかった。


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