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第118話 2つの善し悪し




ラファエルの挨拶終了後、各学年にプリントが配られた。

機械技術が進んでいる国だから、勝手にタブレットとかを想像していたけれど、違うんだ…

まぁ、王宮でアイデア出してた時も紙に書き出してたし、ないよね。

………これ、言ったら作れるのかしら?

液晶がない国………って、指紋認証が液晶画面だったわ…

あれ作れてるんだから、作れるかな…


「あ、ソフィア。これ持っててね」

「え…?」


ラファエルにカードを渡され、見ると学生証っぽかった。

カード全体にサンチェス国の家紋が掘られており、その上から名前と学年とクラスが印字されている。

裏を見ると磁気ストライプ…クレジットカードの裏面みたいな黒い一筋の線…があった。

………ん?


「………これ、カードを通す場所がある、ってこと?」

「うん。かざすのでもいいけどね。学園にも扉を設置したんだ。行き来できる場所が人によって違うよ。まぁ、俺とソフィアが入れない場所はないけど、貴族は俺達の7割、平民は5割ってとこかな?」

「………貴族と私達の間にある3割は?」

「主に教師のみ入室可能な場所。試験問題保管庫とか、専門教師の室とか、備品管理室とか、生徒が入ってはいけない場所」


うん、理解できるものだった。

そういう所は入っちゃダメだよね。

私たちもダメだと思うけどね!!


「………平民と貴族の2割は?」

「貴族専用食堂とか。本当は取っ払った方が良いんだろうけど、平民が貴族に恨みを、貴族が平民を差別すること、どちらもまだ歩み寄ることは出来ないだろうからね。組み分けでは成績順だから貴族も平民も混ざってるけど、休み時間ぐらい解放されたいでしょ」

「………なるほど」

「王族専用の食堂とか部屋とかあるから、俺達はそっちに行くけどね」

「………」


そんな部屋を学園に作らないでよ……

っていうか、そこに行くまでの時間はあるのだろうか…


「今日は式だけで、明日から授業が始まるよ。授業用の本は明日全て学校側が用意してくれるから手ぶらでいい。そのカードだけは忘れずにね。上着の内ポケットにカードケースが入ってるから」

「………ぇ!?」


慌てて内ポケットを覗くと、内ポケットの中にチェーンで繋がれた透明のケースが入っていた。

………気づけよ私…

チェーンはポケットに固定されていて、これなら無くさないね。

私はケースにカードを入れて、ポケットにしまった。


「さて、皆出て行ったし俺たちも行こうか」


こういう時は階級順に出て行くものだと思ってたけど、この場面では違うんだ…

よく分からないルールだな…

まぁ、公の場…社交パーティとかじゃないから気にしないでおこう…

………サンチェス国なら学園内でも序列……というか、私が動かなければ皆動かないって感じだったけれども…

改めて怖いな階級社会…

少なくともここのルールに限っては、そう肩肘張らなくてもいいみたいで少しホッとした。

………ラファエルだけならともかく、この学園では私は王女でいなければいけないのだから、少し息をつけることがあるのは助かる。

ラファエルにエスコートされて階段を降り、広間を後にした。

出入り口に比較的近いところに、見知った人物がいた。

………こんな炎天下で待ってなくてもいいのに…

そう思いながら頭を下げている2人にラファエルと共に近づく。


「久しぶりだね」

「お久しぶりでございます。ラファエル様、ソフィア様」


待っていたのはマーガレットとスティーヴンだった。

2人共、私達と同じ色の制服を着ている。

スティーヴンも同じ歳だったのか…


「まだ授業始まっていないけど、どう? 久しぶりの学園は」

「そうですね。始まるまで楽しみにしておりました。久方ぶりの学園の雰囲気は変わらず、過ごしやすいかと思われます」

「そう。君達も何か気づいたことがあれば何でも言ってきて。私に言い辛かったら、ソフィアでもいいから」

「畏まりました。………図々しくも、早速宜しいでしょうか?」

「うん。何?」

「資源節約の為なのですが、紙が主体の授業に、データ主体の授業に出来ないかと先程思いまして」


………ぉ?

マーガレットの言葉に、私は少し目を細め、口角を上げてしまった。

それを見逃す3人では無かった。

注目された私は思わず苦笑した。


「失礼いたしました」

「どうしたの? ソフィア」

「いえ、わたくしと同じ事を考えるご令嬢がいらっしゃったことに嬉しく思いまして」


私の言葉にマーガレットが目を見開き驚きをあらわにする。

逆にラファエルは笑う。


「へぇ。なかなか優秀なのかな? ガルシア公爵令嬢は」

「い、いえ……そんな事はありませんわ。ソフィア様には及びません」

「ソフィア、データ主体の授業って実際どうなの?」


マーガレットに聞かないんだ…


「1つの端末に全ての教科のデータを記憶させ、必要に応じて必要な情報が映し出されるもの。けれど…」

「けれど?」

「持ち運びは便利ですけれど、故障の恐れがあるから衝撃に強いものを作らなければいけません。紙媒体とは違い、書き込むことに限界がある事も問題です。消そうと思っても消せなかったりしたらスペースが限られる。机に設置するタイプにしても、書き込みの不具合があります。そして何より、故障した際に対応に時間がかかると授業の進行具合に影響が出ますわ」

「………なるほどね」

「その点紙は耐久性や故障に無縁ですからね。水には弱いですが」

「そうだね」

「ソフィア様は凄いですわね。良いところと悪いところをすぐに思いつかれるのですから」

「いえ、大したことではございません」


………実際前世の知識だから…


「安易な申し出、失礼いたしました」

「大丈夫だよ。むしろどんどん意見くれたら嬉しいよ。これに懲りずにまた何か思いついたら話して」

「はい」

「一方的に切り捨てたりはしないよ。良い点悪い点を考えて、良い点が多いほど、その意見は採用していくから」

「はい。ありがとうございます」


頭を下げるマーガレットにラファエルは微笑む。

そして明日の再会を約束して、別れた。


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