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第117話 新しい生活




コツコツッと靴音が響く。

数百人が入っていく広間。

日本なら体育館と言えば分かりやすいだろう。

けれど、その広さはとても日本ではあり得ないだろう広さ。

大学とか専門学校だったらあるかもしれないけれど、あいにく私は通常の高校の体育館の広さしか知らない。

ここは床も壁も丈夫に出来ている。

天井は広さに伴って高く、ライトは……何故シャンデリア……

………高さからいって………7~8mくらい?? の天井から吊るされている。

電球変えるの大変じゃないの……?

いや、私の知らない供給源があるのかもしれない…

電球とは限らないよね…

広間には椅子が並んでいる。

これも日本のパイプ椅子みたいなシンプルなものじゃない。

全ての椅子が一人掛けソファー。

肘掛けもあるし、見ただけで座り心地が良さそう。

ひぃっと叫んで逃げ出したい。

豪華すぎるでしょ。

いち学校になんてものを!!

今日はランドルフ国の学園再開日。

学園の授業の過程を一度リセットするため、ラファエルが教師と相談して学園の再開日を新学年になる初日にした。

つまり入学時期と一緒にしたのだ。

だから今日は入学式兼始業式。

日本の学校みたいに苗字順に座るとかそういうのはない。

あるのは学年ごとに座る位置が違う事のみ。

学年には色があるらしく、卒業まではその色の制服を身につけるのが義務だそうだ。

男子も女子も白のYシャツ。

学年を表すカラータイ。

男子はパンツで女子はロングスカート。

パンツとスカートは学年色。

色は学園内では洒落て宝石の名前で呼んでいるそう。

今年の3年は水色で、呼ばれるのはアクアマリン色。

2年は紫で、アメシスト色。

1年は赤で、ガーネット色。

それを聞いたとき、誕生石じゃなかった? と思った。

まぁ、今年の1年生が2年になっても3年になってもガーネットだから、今だけ気になるって感じだね。

それに伴って、私の制服のスカートは紫のアメシスト色。

そしてそこまで来たら上着はブレザーでしょ、って思うよね…

でもそうじゃなくて…

サイズ合わせで見せられた時は、え……って思った。

だって学校の制服なのに、トレンチコート風の上着だったのだから。

前にボタンが縦6つ、左右についている。

腰の部分にベルト。

袖口にも。

当然色は学年色。

………堅苦しい!!

と思っても言えない……

肩の部分には階級を表す家紋が掘られたボタンがついている。

私の肩についているのは、サンチェス国の国紋。

ラファエルの肩には当然、ランドルフ国の国紋。

………なんか、自分の位を自慢しているようで嫌だな。


「ソフィア?」

「………ぁ、何?」

「座ろ?」

「うん」


ラファエルに促されたのは、皆が座っている場所ではなかった。

気づかなかったけれど、入り口の横、左右から上に上がる階段があった。

………ぇ……嘘……

私はラファエルにエスコートされながら階段を上がり、入り口の丁度真上部分に、THE王族! って感じの、下に置かれているソファーとは比べものにならない程の椅子が目に入り、目眩がするようだった。

特別感は学校に要らないよ!!

そう、全力で叫びたい。

でも拒否するわけにもいかず、ラファエルに促されるまま椅子に座った。

………うん。

自室と変わらない座り心地だった。

初日だけどもう嫌になってきた…

そうこうしているうちに集会が始まった。

………まぁ、あれだよね。

よくある校長の話が長いっていうあれ。

学園長は、この国が出来たところから学園が出来るまでの長い歴史を語ってくれた。


「………ねぇラファエル」

「何?」

「………段々ソファーが温かくなってきたような…?」

「うん。加熱式だから。人が座って体温をセンサーが感知すると、作動するようになってる」


ハイテクなのね!?

学校の椅子にそんな有能な機能要らないと思うよ!?

私が可笑しいのかな!?


「この学園にスポーツ関係はあるの?」

「あるよ」

「この下の空間使うことは?」

「勿論あるよ」

「………椅子、片付けるのは一苦労だね……」

「大丈夫だよ。自動だから」

「………ん?」


………自動で椅子が片付けられる…?

どういう事だろ…?


「床に収納タイプだよ。スイッチ押すと床が開いて椅子を収納。そして床が元に戻る」


………だから、学園にそんな機能必要ないよね!?

私はドッと疲れてしまう。


『在校生代表。ラファエル・ランドルフ様』


「あ、呼ばれた」

「………へ!?」

「行ってくるよ」


ラファエルがニッコリ笑って下に降りていく。

………え……ラファエルが代表だったの…?

ぁ、でもそっか。

王族がいれば必然的にそうなるよね…

聞いてなかったからビックリした…

と、取りあえず落ち着こう…


『在校生の皆さん、そして今年から通われる皆さん。ご存じかもしれませんが、ラファエル・ランドルフと申します。この度、王太子として国政に関わらせて頂いております。王太子と言えど、この学園ではいち生徒ですが、私は常に皆さんの手本になるような行動を意識し、学園生活を送ろうと思っております。昨今の国の問題は徐々に解決していますが、まだまだこの国には不便なことがあると思います。ですので気づいたことは何でもご意見下さい。すぐにとはいかない事案も多いでしょうが、徐々に解決できたらと思っております」


………何でもって言っても、言う人っていないと思うんだよね…

王太子に意見なんて。


「どんな些細なことでも結構です。国のために皆さんがいるのではありません。皆さんのために国があるのです。私は皆さんのためになることをしたいと思っておりますので、お心に留めて頂きたいと思います。私は年齢的には卒業となりますが、この度2学年・3学年の学園の授業内容を変更しているところがあります。詳しくは各教科担当の教師達から説明があると思いますが、授業運営に支障が無いか判断するために2学年から通い直します』


ラファエルの言葉に、少し下がザワついた。

………前代未聞だもんね…


『是非仲良くして下さい』


………ニッコリ笑ってるけど…

戸惑っている雰囲気しか感じられなかった。

私はこっそりとため息をついたのだった。


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