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第112話 責めるのに一番効果的な事




公爵達を見送り、私とラファエルは部屋に戻ってきた。

即座に私は苦しいコルセットから解放されるために着替えた。

勿論ラファエルには一旦部屋の外で待機してもらっていたよ。

着替え終わって入室許可を出す。

部屋に入ってきたラファエルに私は無言でソファーを指差した。


「う……」


私はニッコリ笑っていたのに、ラファエルが私の顔を見た瞬間に一歩引いた。

失礼な。

こんなに愛らしい笑顔を向けたのに。

………………すみません。

身の程知らずの言葉を言いました…

私が愛らしい笑顔など出来るはずないわ…

と、とにかく、ラファエルをソファーに座らせ、私は隣ではなく対面側に座った。


「え…ソフィア? なんでそっち……っ」


ラファエルの言葉を視線で止める。

さぁて…

洗いざらい吐いてもらいますよ?


「………聞いてませんわよ」

「な、何、を…?」

「学園のシステムを変えてると伺いましたわ。そのお話、わたくしは聞いておりませんが?」


ニッコリ笑ったままラファエルを見る。


「え……? そ、そうだった…? 言ったつもりなんだけどな…」


………うん。

視線を反らしながら言われても説得力ないから。

意図的に隠してたのバレバレだから。


「………それで? わたくしに秘めてまで学園のシステムを変更しているのはどういうお考えで?」

「そ、ソフィア…その言葉遣い、やめて…」

「わたくしにランドルフ国の学園での教育に口を出して欲しくないと思うのは当然ですが、やっていることまで秘めるとは。よほど信頼がありませんのね?」

「い、いや…そうじゃなくて…」

「傷つきますわ。わたくしがサンチェス国にランドルフ国の教育内容をお教えすることはございませんのに…」


ショック、という風に俯いて顔を手で覆った。


「え!? ご、ごめん!! ソフィアを泣かすつもりじゃ!? 話す! 話すから!!」

「はい。ではどうぞ」


ラファエルの言葉を聞いた瞬間、私は姿勢を正してまたニッコリと微笑んだ。


「え……」


ラファエルは騙された、という顔をして固まった。


「まさか、王太子様ともあろう方が前言撤回しませんわよね?」

「………はぁ……話すから……だから本当にその口調止めて……」


今度はラファエルが手で顔を覆って、深いため息をつきながら言った。


「分かったわ」


私は即口調を戻した。

王女口調は疲れるけど、ラファエルを責めるときはこれが一番みたい。

うん、これからはそうしよう。

私がそんな事を考えていると、いつの間にか移動してきたラファエルが私の腰に腕を回して引き寄せた。


「ちょ……私はまだ怒ってるわよ?」

「知ってる。でも、こっちの方が話しやすいから」


………私的には話しにくいけど。


「学園のカリキュラムに技術教育があるんだけど、俺がソフィアのアイデアで色々開発した機械技術も組み込んでもらってる」

「………それが私に内緒にする理由になる? 継続的にするんだから、組み込んでいるだろうなと思っていたのに」

「今まで技術科だけが受けてたんだけど、全学園生に受けてもらう」

「………だから?」


それも想像の範囲内であって、何故内緒にするか分からない。


「………ソフィアも通えるようにサンチェス国の国王とも内通して……その……サンチェス国の学園教育とランドルフ国の学園教育を……」

「………」


私は一瞬何を言われたか理解できなかった。

そして理解できた瞬間、混乱した。


「ちょっと!! 何しちゃってるわけ!? 両国の教育内容を一緒にしちゃったの!? お父様も何考えているの!?」

「だ、だから、王族同士だけの留学じゃなくて、国民が全員両国の技術を学べば、サンチェス国民はランドルフ国の農業機械技術を、ランドルフ国民はサンチェス国の作物育成技術を学ぶことが出来るだろ!?」


ハッとして私はラファエルを凝視してしまった。

つまり全教科を融合させたのではなく、サンチェス国農業科とランドルフ国技術科だけを互いに組み込んだの…?

それにより……


「………ランドルフ国民が……農業のノウハウを……学べる……」

「そう。ランドルフ国民が食べ物を自分たちでも作れれば、よりランドルフ国が栄える」

「………よくお父様が許したわね…」


ランドルフ国で作物が育てば、同盟の大元…輸出量が減る…


「流石に条件付きだよ。サンチェス国で育ちにくい作物を、実験的にランドルフ国土で育ててみた」

「………ぇ」


既に実験済みですか!?


「そしたら見事に豊作でね。逆にサンチェス国に輸出して持ちつ持たれつに出来そうなんだ。勿論、輸入量は減らさない。サンチェス国ならではの食べ物が圧倒的に多いんだから。ランドルフ国民全てサンチェス国での食物が主流なんだし。ただ、手に入りにくかった食物が大量に生産できて安価で手に入るとなれば、互いに助かるんだよ」

「………そう……」


私は脱力し――てる場合じゃないわ!!


「私が学園に通うってどういう事!?」


危うく聞き逃すところだった!!


「サンチェス国の学園辞めさせちゃったから」

「じゃなくて!! 今更学園通うよりラファエルの手伝いを――」


私の唇にラファエルの人差し指が触れた。

それによって、私は言葉を発せなくなった。


「ソフィアはこの国のことを断片的にしか知らないでしょ? この国の人間がどう考え、どう行動しているのか。ランドルフ国民として育ってないから、全部を知っているわけじゃない」

「………」

「それに、成人と認められるのは学園を卒業して初めて、だからね。ソフィアにちゃんと学んで欲しいし」


………どの口が言っているのでしょうかね…

学園を辞めさせたのは、他ならぬ貴方ですが。

ジト目で見ると、うっとラファエルが気まずそうに視線を反らす。

………それに……こういう時にラファエルが考える事なんて、お見通しなのよ…


「………学生恋愛楽しみたいとか思ってるでしょ」

「………ぎくっ…」


ぎくって言葉に出す人初めて見たわ……


「………確かラファエルも卒業してなかったと記憶してるし」

「そ、それぐらい楽しみたいと思ってもいいじゃないか!」


あ、開き直った…


「………まぁいいわ」

「え!? いいの!?」

「………何? 拒否して欲しいの?」


私が聞くと、首を素早く横に振るラファエル。


「………ランドルフ国の借金がなくなったならいいんじゃない? 少し羽を伸ばしても」


裏のない笑顔を向けると、ラファエルがホッとしたように笑った。


「学園の機能がちゃんとしてるか見るために、俺もソフィアも2学年から再開するからね」


………王太子がそれでいいのだろうか……

まぁ……私は本来なら2学年に上がるはずだったからいいんだけどね…

ラファエルは3学年で卒業間近だったのに、2学年から通い直すって事は、よっぽど悔しかったんだ…

ソフィアと学園生活送れなかったこと…

私は苦笑して、ラファエルの肩にソッと頭を乗せた。


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