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第108話 隠し事は出来ません




「………公爵令嬢?」

「そ。会いたいんだって」


軽く言われたのは、ラファエルにウォーキングマシンを作ってもらって数日後。

いつものように早朝運動としてあの隠れ庭的な場所で訓練しているときだった。

ラファエルはイヴと、ナルサスはカゲロウと、私はマシンの上でウォーキング。

ウォーキングマシンは簡易的で、骨組みにローラーを付けて広いベルトを通しているだけのもの。

だから私の足を動かす早さで速度が変わる。

電動ではない。


「………なんで」

「俺の婚約者の座を狙ってるんじゃない?」


足を止めて休憩中のラファエルを見て聞けば、サラリと言われた。

………いやいやいや!!

今までのラファエルなら絶対に私に会わせなかったでしょ!?

怒って断って事後報告でこんな事があったって言ってたでしょ!?

いきなりどうしたの!?

私を嫉妬させる作戦!?

私ラファエルに何かした!?


「ごめんね。公爵からだから無下に出来なかったんだよね」


にっこりと笑うラファエルが胡散臭い。

………これは何か企んでるね…


「………はぁ。私は囮?」

「………俺がソフィアを囮にするわけないでしょ?」


何で最初に沈黙があるのさ…


「………正直に言わないと協力しないよ?」

「………」

「………それとも私、実家帰ろうか?」

「公爵令嬢の真意を見て欲しいんだ!」


即答された。

うん、下手に隠そうなんてしないでよ。

私はラファエルのパートナーでしょ。

最初から理由を説明してくれたら協力するのに。

脅しに聞こえる言葉を言う私も悪い女だけど、ね。

なんで今回遠回し……っていうか、誤魔化そうとしてたのだろうか…

………って…


「………真意?」


え?

初対面の私に、公爵令嬢の考えを読め、と?

なんで私が……?

………って、将来の王妃として社交界のトップに立つわけだから、私の仕事か…

すっかりそっち系の事など忘れていた。

だ、だってラファエルの命とランドルフ国の改国に気をとられてたし!!

本来の私の役割ですね!!

思い出させてくれてありがとう…

気が進まないけど、これもラファエルと一緒にいるためだ。

頑張ろう。

とにかく詳細聞かないと、ね。


「………影の情報とルイスの情報で、公爵は静観者だったことが分かった」

「………つまり、中立の立場を貫いていたのね」

「そう。で、娘と息子がいるんだけど、息子の方は騎士の中に居た」

「騎士?」

「ほら、ソフィアの護衛として王宮内で5人付けてたでしょ。で、俺が訓練の相手に指名してルイスに断られた男。覚えてる?」

「………ぁぁ……」


騎士になりたてって感じの男だったね。

彼は王宮内での護衛だったから、ナルサスに斬られてはいない。

たまに巡回しているのを見かけてた――と、思う。


「勤務態度は真面目で、不審な行動を起こす様子もない。息子の方は今のところ大丈夫そう。で、娘の方は読めないんだよね」

「………読めない?」

「常に完璧令嬢」


………胡散臭い……

ごほん…失礼しました。

思いっきり顔に出してしまったのだろう。

ラファエルが苦笑する。


「学園でのソフィアみたいに隙がないんだよ。だから、影達が読めないって言ってきたんだよね。俺の前では勿論態度を崩さないし」

「つまり、私に公爵令嬢の善し悪しを見極めろ、と?」

「丁度公爵が明後日来るんだ。国益のことでね。娘も同行希望出されたから許可した」

「………なるほど?」


事前連絡なら一週間前ぐらいに来てただろうに。

………なんで直前で言うかなぁ…

ため息をつくと、ラファエルにニッコリ微笑まれた。

………ぁ…

これは、あれだ……


「休憩終わったらソフィアに相手してもらおうかなぁ?」


………戦闘訓練バレてます!!

お仕置きですね!?

で、でも訓練止める気ないし!!

ここは強気でいこう!!


「ラファエルが私に本気出せるの?」

「出せるわけないじゃない。ソフィアを傷つけるわけにはいかないからね」

「手加減されたら訓練にならないから却下」


私が強気で言うとラファエルがため息をついた。

お転婆でごめんね。

でも、やめるわけにはいかないの。


「………まったく……王女が戦闘技術習得してどうするの……ソフィアは女の子なんだよ?」

「女性騎士いるじゃない」

「だから、ソフィアは王女でしょ!」


ラファエルがちょっと怒ってる。

………いや、表面に出してないだけで、心の中は怒りでいっぱいかもしれない。


「王女が戦えない、なんて常識は私にはいらないよ」

「………ソフィア…」

「私は、ラファエルのためにも(ソフィアのためにも)、自分のためにも、生きていなきゃいけないんだから」

「………ま、俺やランドルフ国の騎士が戦闘において頼りないのは分かってるけど、無茶してそれこそ命を落としたらどうするの」

「大丈夫。時間稼ぎのためだから」

「………時間稼ぎ?」


私は笑ってラファエルの隣に腰を下ろした。

ジャージもどきだから、地ベタは気にしません!


「ナルサス達に連れ去られたとき、もし私が力を持ってたら、ラファエルが私を助けてくれるまでの数秒、持ちこたえられたかもしれない」

「ソフィア…」


目を見開くラファエルに、私はまた笑う。


「ライト達が助けに入ってくれる時間を稼げるかもしれない。勿論、相手の力量が分からなかったら無謀なこと。自分の実力と相手の実力を見極められる目が欲しい。時間稼ぎのためだけの技術が欲しい。だから、やめないよ」

「………………………はぁぁぁ……」


随分重苦しいため息をつかれた。

………ラファエル的にはやっぱり許容できない事、か…


「………ごめん」

「………ぇ…」

「………俺が弱いせいでソフィアに負担かけて」

「負担じゃないよ! 私はちょっとでもラファエルと一緒にいたくて」

「うん」


ラファエルに抱きしめられ、ラファエルの胸元に顔を埋める形になった。


「俺もソフィアがそんな心配しなくてもいいように頑張るよ。今の俺じゃ、絶対に守るって言っても信用されないからね」

「………」


ナルサス達に攫われてしまった事実がある以上、ラファエルへの慰めの言葉は意味がない。

何も答えることが出来なかった。


「ちゃんと強くなる」


ラファエルの力強い声に、私は微笑んだまま目を閉じた。

ラファエルの体温に安心して、幸せな時間なんだけれども……

………さて、公爵令嬢相手に、果たして私はボロを出さずに対応できるのだろうか…

内心冷や汗が止まらないんだけど。

でもラファエルの為に、王女ソフィア・サンチェスを作らなきゃね!


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