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第106話 訓練しましょう




キンッと剣が交わる音がする。

ナルサスと話した翌日、ラファエルに頼んで人目に付かない王宮から少し離れた、周りを木々に囲まれたちょっとした空間に案内してもらった。

そこでカゲロウにナルサスの訓練をしてもらっている。


「………まだ動きが硬いな」


私の隣に立って腕を組んでいるラファエルが呟いた。


「緊張してるんじゃない? 騎士になる前と後で訓練する内容は当然違ってただろうし、今している訓練はサンチェス国のものだしね」

「サンチェス国のだったんだ? 影の訓練だから違ってるのかと思ってた」

「影は兵士の訓練と影の訓練両方受けるけどね。ナルサスに必要なのは騎士としての実力で、影特有の力じゃないからね」

「なるほどね。いいの? サンチェス国の技術がランドルフ国に流出してしまうって事でしょ。同盟で結んでいるのは技術とその技術で出来た食物の取引だけだよ。戦闘技術の提供は入ってないよ」

「まぁね。でも、ナルサスが弱いままなら、ラファエルが心配だもん」

「ソフィア…」


私は木によりかかってラファエルを見上げる。


「私はラファエルに死んで欲しくないし。まだまだこの国にはラファエルの敵がいるでしょ? ちょっとでも安心できる環境を作りたい」

「………よし! ライト! 相手しろ!」

「は!?」


いきなりラファエルがライトの方にツカツカ歩いて行って言った。


「俺は剣術独学なんだよ」

「え!? そうなの!?」

「うん。で、騎士の技術受けるより王族の知識優先だったから、俺は訓練受けたベテラン騎士に敵わないよ」


ラファエルのカミングアウトに、私は唖然とした。

ということは、手練れの暗殺者に不意打ちされたら、ラファエルは最低限自分の命さえ守れない。

………もっと早く言って欲しかった…


「ラファエルはライトよりイヴの方が良い。イヴ、相手してあげて」

「畏まりました」


私の斜め後ろにいたイヴに言うと、イヴが前に出て行く。

代わりにダークが、音もなくイヴがいた場所に待機した。


「ソフィア? ライトの方が訓練しやすいんじゃ…?」

「体格が同じような者との訓練は大切だけど、自分より大きい相手と訓練してその後段々小さくしていった方が良い。サンチェス国ではそうやって訓練短縮をしてるから」

「短縮?」


首を傾げるラファエル。

………相変わらず可愛いな!!

この悔しさ、一生なくなる気がしない!!


「段々大きい相手に訓練していくと、対処が難しくて時間がかかるの。自分より大きい相手から小さい相手にしていくと、動き方も最小限にしていけるからね。小さい相手から大きな相手にするとどうしても大ぶりになったりしていくから、無駄な動きが増えていくんだって。お兄様が言ってた」

「へぇ」


ラファエルがナルサスを見た。


「じゃあナルサスに小さい相手を宛がったのは?」

「ナルサスは普段大きい相手に商売わるいことしてたんでしょ? その動きはもう(悪党の中での)ベテランの域になってるでしょうね。でも小さい相手とはまともに戦ったことないでしょ。子供とかなら脅せば済むし」

「………一応俺もその仲間だったんだけど…」

「現役で?」

「………ぁ…」

「ブランクあるでしょ? 感覚を思い出すためにもイヴからの方が良い」


私の言葉に、ラファエルではなくイヴとライトが頷く。


「それに騎士に相手を頼んだら断られてたじゃない。ルイスにだけど。訓練でさえ相手がいなかったんだから、鈍ってると思うよ? 素振りだけだったなら」

「そうだね。じゃあイヴに相手お願いする」

「では、こちらへどうぞラファエル様」


イヴが離れたところにラファエルと共に向かい、剣を構えた。

そして2人の訓練も開始された。


「………姫…」


ダークに話しかけられ振り向くと、いつの間にか簡易机と椅子が用意され、その机には甘味と紅茶が。

………ぇ?

今まで何もなかったよね…?


「………」


ダークに目で椅子に促され、私は素直に座った。


「………ラファエルが?」


ダークを見上げて聞くと、コックンとダークが頷いた。

………そのカクカクした動きは、毎回気になるんだけど……


「姫」


甘味を口に含んでいるとライトが近づいてくる。


「何?」

「訓練は毎日行った方が宜しいので、早朝と就寝前に訓練時間をとった方が宜しいかと」

「そうなんだけどね。そうすると私の運動時間が短縮されるんだよね」

「訓練している周りを走ったらどうですか」

「………」


それは何だか間抜けに見えるような…

………いいけどさ……別に……

けれど…


「ラファエルの目の届く範囲って言われてるから。ラファエルが戦闘訓練中はそっちにどうしても集中してしまうでしょ? 私を気にして集中できなかったら怪我しちゃうし」

「そうですね」

「それに私の運動よりラファエルとナルサスの実力アップが優先だしね」

「姫の体力も重要ですけどね」

「え? 馬鹿にしてたのに?」

「………万が一の場合、姫が敵から逃げる足の速さと体力も必要ですから」


………何故質問に答えない……

ライトも私の性格移ったのかしら…


「頑張るけどね。………そうだ。ラファエルにウォーキングマシンとかサイクリングマシンとか作ってもらおうかしら。それならその場で運動できるし。むしろ部屋で出来る。………ってか自転車とか、むしろ車欲しい。移動時間短縮出来る」

「………また姫のアイデアが……」

「何でそんな顔色悪くするのよ」


アイデア出しただけでしょ!

失礼ね!

流石に車は無理だって分かってるよ。

だってガソリンないし。

電気もないし。

でも自転車だったら出来るだろうし。


「………姫、何か企んでませんか?」

「ホントに失礼ね!!」


まったくライトは…

私はダークに紙とペンを用意させて、ウォーキングマシンなどの書類を作っていった。


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