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第102話 まだだめです




ふと意識が浮上した。

目を擦りながら起き上がろうとして、起き上がれなかった。

何かに包まれていた。

何だろうと思って目を開くと、近い位置にラファエルの綺麗な顔が。

そうだった、と思い出す。

もう前みたいに取り乱して叫んだりしない。

慣れって恐ろしい…

ジッとラファエルの寝顔を眺める。

ホント、綺麗な顔…

思わずツンと頬をつついてしまう。

すると、パシッと手を掴まれた。


「………何イタズラしてるの……?」


相変わらず寝起きは子供みたいな可愛い言い方になるなぁ……

羨ましい…


「ごめん、起こしちゃった…?」

「ユイカが起きてるなら、起きるよ…」


ギュウッと抱きしめられる。


「………これじゃ起きられないよ?」

「もうちょっと……」


………甘えるのは別に構わないけど…

胸元に顔を埋めるのは止めて欲しい…


「……ユイカぁ…」

「………何?」


………語尾伸ばすのも可愛いな!!

悔しいな!!


「………トケイ、って何…?」

「………へ?」

「………昨日寝る前に言ってた……トケイがあればいいのに……って……」

「………ぁぁ」


無意識に呟いてたかな。

言ったような気もする。


「えっと、今の時間帯が正確に分かるっていうものなんだけど。例えばラファエルと私が日課をしている朝方が6時とするなら、食事が7時、ラファエルの仕事が始まる時間が8時。大体太陽の位置でなんとなくで始めていた事が、正確に分かるようになるんだ。置き時計、掛け時計、腕時計って種類があるんだけどね」

「………へぇ……」

「時間に縛られちゃうことになってしまうかもしれないけど、時間が分かる事によって、この時間にやるとかこの時間までとか決めてたら、ラファエルも負担が減るのかなって」

「………」


ラファエルの言葉が途切れる。

………私の説明じゃ分かりにくかったかな……

でも時計がない世界だから簡単に説明するの難しい…


「さて」


スッとラファエルが離れ、起き上がった。

………相変わらず切り替え早いな…

オンオフの切り替え、どうやってるんだろ…


「トケイ、書類作成宜しく」

「え…」

「トケイとやらが出来れば、ルイスから逃げる口実も出来る」


………そっち!?


「夜に仕事をいれられても、寝る時間だからって」

「………次の日に回せるならそれでいいと思うけど…緊急時はダメだよ…?」

「分かってるよ」


ラファエルが私に口づけを落として、ベッドから出た。


「そうだソフィア。ちょっと聞きたいんだけどさ」

「………何?」


………ソフィア呼びに戻った。

通常モードになって、ホッとする。


「借金がなくなったって言ったよね」

「え……うん……」

「もう、解禁してもいい?」

「………うん?」


話が見えないんだけど…

首を傾げると、ラファエルが私の左手薬指をツンとつついた。


「贈り物」

「………ぁ」


問題が解決するまでは豪華な贈り物は受け取らない。

それが私がラファエルに言ったことだ。

大きな問題。

借金はなくなった。

………でも…

私は首を横に振った。


「………借金はなくなっても、民の生活は未だに元に戻ってないわ。利益があると言っても、使うと当然無くなるわ。民が潤うまで、私は受け取れない…」


………堅物な女だと思われるかな…

でも、これは譲れないんだ…

苦笑するラファエルを真っ直ぐに見られない。


「分かった。気長にやるよ」


ラファエルは私の頭を撫で、朝食の用意を頼むために出て行った。

少し長く話しすぎて、日課の運動をする時間はないと判断したのだろう。

………ちょっとは、貰った方が良いのかな……

………いや、やめよう。

許可したらラファエルは制限なく私に与えてくると思う。

そういう人だ。


「………それに…」


………やっぱり私には物欲がないらしい。

ラファエルに言われて、貰った方が良いかもと思っても、欲しいものは何も浮かばなかった。

自分に対して苦笑し、私はベッドから降りた。


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