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第100話 女性らしさは期待しないで




私はラファエルに頼まれた刺繍をしながら、斜め前に立っているライトにメモをしてもらっていた。


「冷えた飲み物、手で掴んで食べられる甘味、ランドルフ国特有の装飾品」

「これは?」

「温泉街で販売する物」

「………冷えた飲み物」

「温泉に入って体が温かくなっている時に、体は自然と冷たい飲み物を欲するの。お酒は余り置かない方が良いかもしれないわね。温泉街で酔っ払いの喧嘩なんて起きて欲しくないもの」


牛乳とかあったらベストなんだけどな…

この世界に牛いないし…

果物のジュースくらいかな…


「手で掴んで食べられる甘味とは?」

「今ラファエルに出してもらっている甘味のアイデアは、基本的にフォークを使ってお上品に食べるもの。このくらいの小さな甘味で、手が汚れない物があれば気軽に食べられるじゃない?」


私は親指と人差し指で円を作る。

おまんじゅうみたいな物を想定して話しているんだけど。

中に餡をつめる、みたいなこと出来るかな?


「特有の装飾品とは?」

「あったら良いんだけどね……カイヨウ国の水晶みたいな特徴ある特産品があればいいのにね…テイラー国みたいにファッションに特化してるわけじゃないし…」

「そうですね」

「………う~ん……」


ランドルフ国ならではの特産……

ご当地キーホルダーとか文房具とかのイメージで考えてるんだけど……

………文房具?

そういえばこの世界のペンって、ボールペンみたいな中に液体が入っているタイプなんだよね。

普通こういう世界って、羽根ペンとかでインク付けタイプが定番なのに。

………この世界の動物をかたどって、マスコット出来ないかしら…


「………マスコットとは?」

「………」


おおっと…

また口に出してたみたいだぞ…


「………こんな感じ?」


私はペンと編みぐるみをくっつけてライトに見せる。


「………」

「………ぁ、大きさはうんと小さいよ!? こんなに大きくないから!!」


私の拳におさまるサイズの編みぐるみをペンにくっつけて見せたから、だいぶ大きいけど!

勿論小さく作るよ!?


「………それでしたら…」


痛い子を見るような哀れみの目を向けるんじゃないわよ…


「………姫」

「何?」

「………それは装飾品として売り出さないのですか?」


………それ?

何のことだろう?

ライトの視線を辿って行き着いた先。

私の左手。

………ペアリング!!


「メモして!」

「はい」

「動物のマスコットの絵はライト描いておいて」

「………」

「………悪かったわね! どうせ下手ですよ!!」


可哀想な人を見るような目を向けられた。

本当にライトは私を主として見ているのだろうか…


「………ぁ、そうだ。ミサンガも良いかもね」

「………ミサンガ……?」

「糸を編み込んだ……あ、これ」


私がいつも髪を結っているミサンガもどきを見せる。


「これを願い事を思い浮かべながら腕や足に付けて、自然に切れると願いが叶うっていうもの」

「途中で外したりする物ではないと」

「迷信だけどね」


笑いながら言うと呆れた顔を向けられる。

………なによぉ…

女の子なら絶対に買ってくれると思うけどな~…


「いいねそれ。俺にも作ってよ」

「うひゃぁ!?」


突然背後から声を掛けられて飛び上がってしまった。


「ちょっとラファエル! また気配なく入ってきて!」

「ソフィアって可愛い反応してくれるからさ」

「………」


ニコニコ笑っているラファエル。

その背後にナルサス。

ナルサスがいるからか、イヴとダークがスッと天井と部屋の入り口から私の背後へ移動してきた。

ライトもさり気なく私との距離を詰めてくる。

笑っているラファエルに対し、ナルサスは微妙な顔。

何か言いたそうね。


「………何、ナルサス」

「………ぃぇ…」

「気になるから」

「………女性……として、あの悲鳴、は、如何な、もの、かと…」

「失礼ね!! 余計なお世話よ! それに、私が今更可愛らしく“きゃぁ”とか言っても、皆引くわよ!!」


フンッと顔を背けると、必然的に私の影の方に視線が行く。

………3人が3人とも頷いてたけれども!!

腹立つ!!


「あんた達はあんた達でフォローしなさいよ!!」

「いえ、今更か弱い女性のように悲鳴を上げられても、気持ち悪いです」

「ナルサスより酷い言いよう!!」


やっぱり影らしくないわね!


「そんな事ないよソフィア。俺はどんなソフィアでも可愛いと思うよ」

「ラファエルだけが味方!!」


思わず抱きついてしまった。

ハッとした時には逆にラファエルに抱きしめられていた。


「ぅぁ…ご、ごめんラファエル」

「なんで謝るの? 俺はソフィアから抱きついてきてくれて嬉しいよ」


ご機嫌で抱きしめてくれるラファエルに、私は照れながらも笑った。


「あ、ラファエル見てくれる? 温泉街に置く商品の候補」

「ありがと。見せてもらうよ。さっきのミサンガ?って言ったっけ。俺にも作ってくれる?」

「うん。出来たら渡すね」


ラファエルと隣同士で座り、ライトにメモしてもらった紙を机に置いてもらって、2人で覗き込んで話し合った。


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