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永久なる魔龍大戦  作者: 0の魔法使い
2/3

勇者と剣と

血飛沫・悲鳴・そして剣と剣がぶつかり合う金属音。

その全てが心臓を鼓動させる。

生の実感。死の瀬戸際。勝利の快感。

全てが狂ったように、剣をぶつけ、そして斬り合う。

終わりなき剣舞。スキが空くのは死を意味し、空かないのは生を意味す。相手は勝利するために戦っているようだが、俺は違う。

殺すために戦っている。

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺ス殺すころすころスこロスコロス殺す!!

さぁ、血を浴びせろ。

一瞬の隙をあえて見せ、相手をとどめへと誘導する、

そして、とどめの瞬間、隙は生まれる。

そう、隙という名の死が。

磁石が反発するように相手の剣を避け、今度は磁石がつくように素早く、命を狩る。

次の瞬間。

鎧がまるで布のように裂け、肉体がまるでチーズのように斬れた。

彼は、死んだ。

突如後ろから飛来した「勇者」に、殺された。

とどめの瞬間、隙は生まれる。

そう「彼」は言った。故に、彼にも隙が生まれた。

1体1という油断があった。

おごりがあった、「普通の剣」じゃ斬れない鋼鉄の鎧を着ていることで。「伝説の剣」勇者のみが使いこなす究極の剣。

彼の戦士を切り伏せた勇者はその剣を振り、血を払った。

しかし、ここは戦場だ。休まる場など無い。

油断してるとでも思ったのだろうか、すぐさま後ろから敵兵が斬りかかる。だが、一瞬のうちに斬り捨てられた。返り血を浴びた勇者は嫌な顔も楽しそうな顔もせず、ただただ無表情のまま次の敵を斬りに行った。

切り裂き、凪ぎ払い、叩き潰し、突き刺し、ありとあらゆる方法を使い敵を倒した。

どんな魔法も彼の前に消え去り、どんな矢も一刀のもとに両断された。

勇者の技量と剣の性能が合わさり絶対不敗を実現させていた。

やがてしばらくたつと、敵は全滅し歓声が上がり勇者を囲む。

しかし、勇者は静かにその場から去る。

その顔は戦っていた時と変わらず、ただただ無表情のままだった。

アヴィッセント大陸連合国軍とガリヴァス帝国との戦いが始まってから

20年ほど時が経っていた。

当初はアヴィッセント大陸最南東の国「パテシアル王国」のみが戦っていたが、ガリヴァス帝国の物量に押され、今ではパテシアル王国は領土の3分の1を残すだけどなっている。

ガリヴァス帝国はパテシアル王国と戦っている間にも戦線を北と西に拡大させ、アヴィッセント大陸自体の半分ほどが帝国に支配されていた。

勇者は元パテシアル王国の最南東に位置していた村「コポゾ村」の跡地で産まれた。

両親は帝国に見つからないように隠れて暮らしていたが、勇者が5つの時に、帝国の兵に見つかってしまい、勇者のみが命からがらパテシアル王国へとたどり着いた。

その後、勇者はとある教会のシスターに拾われ育てられた。

今でも、その教会は彼の帰る場所であり、家と呼べる場所である。


現在


帰宅した勇者は軽装の鎧を外し、防具たてにかけると、糸が切れたようにベッドへと倒れ混み、そのまま眠りについた。

10日間ほど戦い続けていたため、もうしばらく起きる気もしなかった。

それからどれくらいの時間が経ったのだろうか・・・。

体が揺さぶられる。

「うぅ・・・」

ぼやけた瞳に写されたのはまだ幼さが残る同い年のシスター「テリミア」だった。

彼女は勇者が拾われる数年前に教会に預けられた。

「テリミア・・・か・・・」

名前を呼ばれた少女は少し不機嫌そうな声で返事をした。

「そうですよ。帰ってくるなりあいさつもせずに眠り込んじゃって。もう夕飯の時間ですから起きてください。」

布団をひっぺがされた勇者は寝ぼけながら食堂へと足をはこんだ。

食堂へ着くとすでに数人の子供たちが、テーブルに座り会話をしていた。1人が勇者を見つけると他の子供も気が付き、

走ってきて勇者を囲むなり全員同時に「おかえりなさい」と大声で言ってから勇者を椅子へと引きずっていった。

この子供たちは全員戦争などで親を亡くした孤児たちだ。

中には勇者が戦場で見つけ、連れ帰った者もいる。

勇者にとって、ここの孤児たちは妹弟のような存在なのであった(テリミアも含む)。

夕食を終えると勇者は足早に自室へと帰った。

自室にて勇者は自身の愛剣「伝説の剣」を手入れしていた。

どのくらい経ったのだろうか・・・突如としてドアが開き、テリミアが姿を見せた。

「どうした?」

「お風呂はどうするの?しばらく入ってないでしょ?」

「そうだな・・・入るか・・・」

風呂は・・・何日ぶりなのだろうか・・・

約10日間、勇者は体を洗っていなかった。

体を一切洗わずに、血と泥の戦場をくぐり抜け傷つき汚れていた。

勇者自身は特に気にしないのだが、

テリミアや一部の子供から臭い汚いと苦情が出る。

風呂場につくと、他の子供がいるようで、少し騒がしかった。

着替え室に入り、バスタオルや着替えを棚に置くと、

風呂場に入っていった。

勇者が風呂場の戸を開けた瞬間、顔面に桶が直撃した。

騒がしさは止み、静寂だけがその場にあった。

カッポーン

桶が落ちた瞬間、どこか懐かしいような懐かしくないような音が響いた。勇者は少しの間立ち尽くしていた。完全な不意討ちを受け、

どう反応したら良いのかわからなくなっていた。

「ごめんごめん、兄ちゃん。」

へらへらと笑いながら教会1のやんちゃ坊主「キシュファ」が

勇者に対し謝りに来た。

確かに不慮の事故ではあったが、彼こそが桶を勇者に当てた張本人である。

まぁ、そもそも桶を投げることじたい間違っているのだがな・・・

「別に、構いはしない。油断していた俺も悪かった。」

「いや、家で油断くらいしても良いんじゃ・・・」

勇者は素早く全身を洗うと風呂に入った。

風呂に入っている間は、勇者が何も考えず疲れをとる数少ない時間の1つである。

風呂に浸かると、ゆっくりと体の疲れを癒す。

湯から体に温度が伝わり暖められていく。

勇者は別に風呂が嫌いというわけではない、

むしろ好きといえるかもしれない。

ポテッ

風呂を楽しむ勇者の頭に、石鹸が1個落ちてきた。

さっきから遊び続けているキシュファ達が投げた物の1つだ。

以外と怒らない勇者でも、怒るときはある。

現に今がその時だ。

勇者は落ちてきた・・・いや、投げられてきた石鹸をつかむと、

立ち上がり、狙いを定め、少し本気で投げた。

「ぐあぁ!!」

命中した。

少しとはいえ、本気であることに変わりはなく、一直線にかなりの速度でキシュファの頭部に直撃した。

たかが石鹸であるが、以外と固く、当たると結構痛かったりする。

特に、勇者が投げると。

当たった衝撃でキシュファは体勢を崩し、少し後ろに下がった。

しかし、悲劇はここから始まった。

キシュファの足下に石鹸があり、下がった際におもいっきり踏み、

「うわぁぁぁ!」

盛大に転んだ。

風呂場の床は硬く、打ち所が悪ければ骨折、最悪の場合死に至る。

だが、勇者は抜かりなかった。

キシュファの頭が床に直撃する手前で、

頭と床の間に石鹸が滑り込んできた。

そう、勇者の投げた石鹸が。

石鹸が間に入ることにより、衝撃が吸収され、ダメージは少なくなる。

「いってぇ・・・誰だよ、投げた奴。頭打っちまったじゃねぇかよ。」

背後から勇者がそっと近づく。

キシュファは風呂に浸かっていたはずの勇者がいないことに気づく。

だが、気づくには遅すぎた。

勇者がキシュファの頭を掴むと、風呂に投げ込んだ。

そして、一言こう言い放った。

「風呂くらい静かに入れ子猿共。」

その顔は普段感情を顔に出さない勇者には珍しくイラついていた。

キシュファと共にはしゃいでいた子たちは、まるでお通夜のような顔で

風呂に浸かっていった。

勇者はため息をつくと、風呂場をあとにした。

寝間着に着替え、寝室に向かうと、静かに眠りについた。

2日後には再び戦場へと行くこともあり、すぐに寝付いた。

その夜、勇者は夢を見た。

両親が殺され、帝国の騎士に追われる夢を。

だが、そこに助けが入った。片手に本を持ち、もう片方の手に杖を持った、まるで魔法使いのような者が、勇者と騎士との間に割り込んだ。


その夢が意味することを、勇者はまだ知らない。

前書きとは(哲学)。

前書きについてはしばらく保留させてもらうかもしれません。

主人公の名前なんですが、

転生者:村田 カオル

勇者:ラピス・オルテ

です。

ちなみに勇者が体を洗うのにかかる時間は、

頭を洗うのに2秒、胴体を洗うのに4秒、足を洗うのに3秒、

合計9秒かかります。

次回は勇者と転生者が会う!かもしれません(そこんとこ未定)まぁでも多分かなり先になると思います(苦笑)。

大変申し訳ないのですが、見てくださっている皆様。この気まぐれな作者をどうか気長にお待ちくださいませ。

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