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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

癒着

作者: 猫柳美鳥

 目が二つで、鼻は一つで、唇だってちゃんと付いてる。私だって彼女と一緒のはず。なのにどうして違うんだろう。


「ああ、イオンの辺ね。てことは南中? 美春さんと同じ?」

 先生に話かけられて嬉しかった気持ちが、しおしおと沈んでいく。美春、ミハル、みはる。私の話をしてたんじゃないの、先生。思うけど、黙って頷く。

「わかったわかった、じゃあ本命受かったら一人暮らしか。頑張れよ」

 先生は勝手に私を励まして、勝手に笑っている。本当は、彼女とは違う高校に行きたかった。私はB判定で、美春はA判定。三十位の違いじゃ、離れられなかった。

 失礼しました、一応頭を下げて、扉を開けて出て行く。暗い教室から出たからか、夕日が眩しかった。

「帰ろう」

「うん」

 教室の外で美春が待ち構えていた。窓から差し込むオレンジの光には目もくれずに、美春は歩き出す。美春は私と一緒に帰りたがるし、修学旅行の部屋だって一緒がいいってごねたけど、私に話すことと言えば人の悪口ばかり。一時間でも、二時間でも。

 でも、私は美春が好きだ。なんでだろう、本当になんでなんだろう。小さい頃、ストレス発散に腕を抓られても、待ち合わせに遅刻してこられても。私とけんかした時、共通の友達に死ねって言ってるのを聞いてしまっても。


 鼠色の階段を下りて、ささくれた下駄箱で靴を履き替える。また家の前で立ち話するのかなぁ、お腹すくんだよね。嘆いても家が近所だから仕方がない。

 小学校の頃だったと思う。私は自分の自転車を見つけだすのが苦手で、行ったり来たりして、美春によく怒られた。それが怖くて、ある時自転車に目印のシールを貼った。

「あー。もう死にたい」

 やっと自転車置き場の前まで来たのに、美春はそこで立ち止まってしまう。今日も今日とて、愚痴ぐち。そんな気ないくせに。かわいい自分を殺せないくせに。

「じゃあ、一緒に死ぬ?」

 訊いてみる。健康的な足、校則より少しだけ短くしたスカート。そんで、美春は大人みたいな笑みを浮かべた。無機質な自転車たちの表で、爽やかな風に吹かれて。ぞっとするほど奇麗な笑みだった。

「ユミとなら死んでもいいよ?」

 どっどっと心臓が脈打つ。首を絞められたいような、身体の一番気持ちいところを触って欲しいよな、興奮が駆け抜ける。

 私は何も言えずに、美春も何も言わなかった。大学は違うところを受ける。でもね、滑り止めは一緒だから、もしかするかもしれない。そしたら、どうなってしまうんだろうね。

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