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茜色の空へ

「たつやー ! これアンタの荷物、自分の部屋に持って行って、 それからこれ凌ちゃんの分、アンタの隣の部屋だから運んであげて」


「ったく、なんで俺が(アイツ)の分まで片付けなきゃなんねえんだよ」


「仕方ないでしょ、凌ちゃん今お婆ちゃんの散歩に付いていってもらってるんだから、アンタお兄ちゃんなのよ」


「達哉君、わるいね、何しろ男手が僕と達哉君しか居ないもんだっ! った! っと! うわぁ~ 」


段ボール箱を二つ重ねて階段を登ろうとした光彦さんは最初の一段目で足を踏み外して尻もちをついた。


「大丈夫? みっちゃん、 もう体力無いんだから無茶なことしないでね、力仕事は体力しかない達哉に任せとけばいいのよ」


「聞こえてるぞー 」


10月のある晴れた週末、いよいよ引越しの日がやってきた。 昨日まで俺たちの住む町の上空には台風の影響で灰色の低くて分厚い雲がどこまでも広がっていたが、今日は朝から快晴で空は真っ青だ。


新居となるすみれが丘のこの家は二階建ての4LDKで一階は足の不自由な婆さんの為にバリアフリーにリフォームしてあった。


婆さんは去年70歳になったらしい、何年か前に交通事故に巻き込まれそれから車椅子の生活を余儀なくされてしまったそうだ。


ピーンポーン


「たつやー ! ちょっとー ! 」


階段の往復を8回程して一階に降りてきた時に母ちゃんがまた声を掛けてきた。


「今度は何? まったく人使いが荒いんだよ」


「お客さーん、玄関出て」


荷物の運搬と空気の入れ換えの為に開けっ放しにしていた玄関には芽衣の母ちゃんと父ちゃんが立っていた。 そして二人の後ろに隠れるように芽衣も立っていた。


「タッちゃん、手伝いに来たわよ」


「素敵な家だねぇ、 ああ~、ナオミちゃんともなかなか逢えなくなるんだなぁ」


「またアンタは、そればっかり、タッちゃんお邪魔していい? 」


「あっ、どうぞ」


「ナオミちゃ~ん、 手伝いに来たわよ~ 」


二人が家の中へと入って行ってしまい玄関には俺と芽衣だけが取り残されるとなった。


芽衣とはしげる(・・・)の件以来だった。


「おっす」


「お…… おっす」


気まずそうに芽衣が返事をする。


「これ、差し入れ」


芽衣は両手でたくさんのおにぎりが入った大皿を抱えていた。


「ちょっと早く持ってよ、重いんだから」


「お、おう」


そういって俺に大皿を預けると芽衣はそそくさと皆の居るリビングへと歩いて行った。


「こんにちわ、ナオミちゃん、上杉先生」


「芽衣ちゃんせっかくの休みなのに悪いわね」


「こんにちわ小山内さん」


「そうか旦那さんって芽衣の学校の先生だったんだっけね、芽衣! アンタしっかりお手伝いして点数稼いでおきなさいよ!」


「ハハハハ、 お母さん大丈夫ですよ、小山内さんは十分成績はいいですから」


「はぁ~、しかしナオミちゃんも遂に他人のものになっちゃうんだよなぁ~」


「だからアンタはいつまでウジウジしてるの! もうこの人ったら毎日この調子なのよ」



「ただいまー 」


「ワンワンワン」


「お義母さんたち帰ってきたわ、みんなで差し入れ頂いちゃいましょう」


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