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「で? 一人抜け駆けして告白して、フラれて、落ち込んで、ヤル気がないから授業サボって、屋上でこうやって、寝転がって、イジけて、おでこに乗せた十円玉を手を使わずに口まで持って来ようと顔をぐにゃぐにゃ動かしてるワケだ」


「おう…… 」


「「おう」じゃねえよ瀬野! お前、川澄のこと好きだったんは俺だってそうだぞ? けどさ、せっかく皆で仲間として楽しくやってたワケじゃん? いい雰囲気だったじゃん? 壊したくないじゃん? 普通我慢するじゃん? それに親友じゃん? 遠慮するじゃん? しかもフラレてるワケじゃん? 川澄きっと気まずくて来れなくなるじゃん? 普通考えるじゃん? なのに馬鹿! お前の馬鹿! 」


上田の言葉なんて今の傷心で閉ざされた俺の鼓膜の内には何一つ入って来ない。


「どうしたの? 」


「聞いて川澄さんコイツったらって川澄さん? えっ? 川澄さん? あれ? 気まずくないの? 告白されて断ったんでしょ? 」


ガバッ


" 川澄さん " 俺は閉ざしたその岩戸でどんな音が届こうとも突き返して来た。けれどその語感だけは、その空気の揺れ具合だけで難なく岩戸を通り抜けたのだった。 そして顔をあげるとそこにはいつもと変わらぬ川澄のとびきり素敵な笑顔があった。


「えーっ だって元々屋上は私の息抜きの為の秘密の場所だったんだよ? それに、 馴れてるから私。 毎週のように誰かに告白されては断ってるし」


「うわっ、すげえドヤ顔」


「ふふん、 だからいちいち気にしてなんか居たら私の居場所世界中からなくなっちゃうわ」


「ワールドワイド! 」


「それに瀬野君だって本気だったとは思えないしね。 坂道チャレンジのオマケみたいな感じだったもん」


「あっ…… いや、んなこと…… 」


「んなことある! 瀬野君ってば坂道を目の前にして興奮してただけなのよ、だからノーカウント。 この話はもうおしまい、 一切してはいけません、 わかった? 二人とも、 特に芽衣ちゃんの耳に入れたりしないようにね」


「お、おう 」


「とにかく瀬野、 残念だがたとえノーカウントだったとしてもお前にはもう可能性は残されてないってことだ。 時期をみてもう一度なんて考え起こしても無理だからな、 それに引き換え俺はチャンスが増えたワケで」


「上田君」


「ん? 」


「ごめんなさい」


川澄は上田の方を向くと静かに頭を15度ほど傾けた。


「えええ~ もう終わり? 俺の残されたチャンスもうこれで使い切っちゃったの? 」


川澄は今度は無表情にコクリと顎を小さく下ろしただけだった。

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