表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/43

3

母ちゃんの話によると元々は婆さんが、介護士をしていた母ちゃんの利用者さんだったんだとか。


それで家に通ううちに光彦さん(この人)を紹介されて付合い始めたらしい。


けれど二人の仲はもっと深いものに感じられた。 結婚しようってんだからそれが当たり前なのだろうけど、もしかしてもっと昔からの知合いだったんじゃないのか? なんてことがあったりして。


光彦さんは母ちゃんと同じ34歳。 俺が知らないだけかもしれないけど、今まで一度も恋人の存在なんて匂わせたことのなかった母ちゃんがいきなり " 結婚する " と言い出したことや、二人ともこの街で生まれ育ったこと、聞いておかなければならないことがもっとたくさんあったと思う。 だけど俺はあくまで無関心を装った。 だってカッコ悪いじゃん? 他人に干渉するなんて。


「来月には引越ししようって言ってるの。 アンタの通学もほんの少し遠くなるくらいでしょ? 」


「ほんの少し? はいはい、ほんの30分程ですよ」


すみれが丘の住宅街には同級生の中にも家があるヤツが居て何度か行ったことがある。 そういえば川澄美樹(かわすみみき)の家もたしかすみれが丘だったような。


川澄美樹は俺たちの学校の言わば " マドンナ " だった。


俺たちの普通科とは授業のスピードが全く違う特進コース(・・・・・)に居るので接点はほとんど無いんだけど、それでも川澄のことを知らない奴なんて絶対に居ないはずだ。 けどきっと川澄は普通科の俺たちのことなんか絶対に知らないんだろう。


「達哉君、何もかもが突然のことでごめんね。 どうかこれから僕たちのことをよろしくお願いします」


深々と頭を下げる光彦さんだったが、そのさらりと垂れた前髪はテーブルの上のスープカップに命中すると、まだその中に大量に残っているミネストローネをたっぷりと吸い込んでいった。


「やだ光彦さん、髪が」


「あっ…… は、はは…… ははは」


「…… ところで俺もやっぱり苗字変わるの? 」


「あっ、それはナオミさんとも話し合ったんだけど達哉君の意思を尊重しようってことで、達哉君に任せます」


「まあ俺は何でもいいんだけど」


「ええ~ いいの? アンタ? 上杉だよ? 上杉達哉になるんだよ? お母さんのこと甲子園に連れて行ってくれるの? 」


「どういうこと? 」


「えっ? 知らないの? やだっ、ジェネレーションギャップだ」


母ちゃんと光彦さんは楽しそうに笑い、それを婆さんも嬉しそうに眺めている。 けれど目の前の凌とかいう俺の妹になるこのガキはいつまでも無愛想なままだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ