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「よくマンガとかでさ、「あら!裏のおばあちゃん」とか言うじゃん? 」


冬ももう間近となり登校時には制服の上にアウターも必要となりだしたこの頃、俺達は今日も学校の屋上で光合成という名目のサボリ中だった。


今までと変わった事と言えばいつものメンバー俺と上田とヒロトと川澄、そこに芽衣が当たり前のように居るということ。


よく(・・)は聞かないけどあるのはあるよね、あの日曜日のアニメ限定かな、で? 今日のテーマは裏のおばあちゃん? いいよ続けて瀬野っち」


上田はいつも俺のとりとめのない一言をこういう風に分かりやすく周りに居る奴らにも伝わるように拡げてくれる。


「上田君って毎回達哉の呼び方違うよね? 瀬野とか瀬野君とか瀬野っちとか」


「そう? 意識したことないけど。 そう言えば瀬野ッピーは苗字変わんないの? 」


「なんだよ瀬野ッピーって! 意識しなくちゃ出ねーだろ」


「セノセノ瀬野ッピー…… 」


「…… 」

「…… 」

「…… 」


「ヒロト、照れるくらいなら言うなよな」


ヒロトは決して前へ前へ出るタイプではないが、たまにこうやって口から漏れるように思い付いた事を呟いてしまう事がある。きっと自分の中で面白いと思ったことを言いたくて我慢出来ないんだろう。 この前初めて聞いたけれどどうやらヒロトは芸人になりたいらしい。 聞いてしまったからには俺も友人として厳しく付き合ってやろうと決めたところだった。


「で? 何の話だっけ?」


「だから達哉のお母さんが再婚したけど苗字が変わらないのかって話でしょ」


「再婚じゃなくて初婚(・・)なんだけどな一応、母ちゃんの名誉の為に言っとく」


「上杉先生と結婚したんだから上杉…… 達哉…… はっ! タッちゃん! 」


「連れてかねーよ! 甲子園」


「な~んだよノリ悪いなセノタツ(・・・・)は」


「違うでしょ、マンガに出てくる裏のおばあちゃんの話でしょ」


川澄が呆れたように笑いながら言った。


「そうだよ! 上田が余計な事ばっかり言うから忘れてたじゃねえか、裏のおばあちゃんの話だよ、あのなマンガとかに出てくる「あら! 裏のおばあちゃん」って声の掛け方だけどな」


「あれ? 俺ワルモノ? よーし、ならここまで引っ張ったんだからきっと大爆笑取れる話してくれるんだよな? ちょっと引っ張り過ぎたんじゃないの? これよっぽどのネタじゃないとスベること間違いなしの雰囲気だぞ? ヤメといた方が良くないか? 」


「瀬野っち、僕もそう思う」


上田とヒロトが言うように随分とハードルが上がってしまっていることは俺も薄々感付いてはいた。 だがもう引き返せない。


「いいか? マンガに出てくる裏のおばあちゃんって声の掛け方な 」


「達哉、もう…… ヤメよう…… 見たくないよ、達哉のダダスベリ」


「瀬野君…… ヤメて! 」


「いいからっ! 裏のおばあちゃんって声の掛け方、アレって主人公達にしてみれば確かに裏のおばあちゃん(・・・・・・・・)かも知れないけど、呼ばれたおばあちゃんにしてみれば「アンタ達が裏だろ」って話ってこと、「私の人生ではいつも私は表だよ、勝手に人を裏へと追いやるんじゃないよ」っておばあちゃんは思ってるよな? 」


「…… 」

「…… 」

「…… 」

「…… 」


「…… 」



「明日晴れるかなぁ? 」


「こんなに澄んだ青空なら大丈夫じゃない? 」


「見て! ひこうき雲」


「本当だ、綺麗な青空にひこうき雲も見れて有意義な時間だったね、授業も終わるし教室に戻ろうか? 」


「そうね、行きましょう」





「…… 」

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