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公園に着くと凌がリョウを連れて散歩しているところだった。他に人が居ないこともあり、凌はリードを外してリョウを自由に遊ばせていた。
「ワンワンワンワンワンワン」
真っ先に気付いたリョウが俺に吠えながら駆け寄ってくる。この図体のデカいバカ犬にしてみればただじゃれているだけかもしれないが、毎度々々飛び付かれてマウントポジションを取られた挙げ句に玩具のように扱われる俺にすればたまったものじゃない。
「あっ! 凌ちゃん、こんにちわ」
芽衣の挨拶に凌は頷くこともしない、他人には全く興味がないのだろうか。
「ムキッ、ちょっと達哉! いったい私はあと何度この屈辱を体験すればいいのかしら? あなたの可愛い妹でしょ、しっかり教育しといてよね」
「知らねえよ!そこは女同士なんかこう上手いことやれよ、上辺だけでも、得意だろ? 女って」
「ひっどーい、ちょっと聞いた? 川澄さん、こういう所なのよ達哉の無神経さがよく分かるでしょ? 」
「瀬野君今のはちょっと…… 」
芽衣と川澄が、そして凌も、三人で俺の事を蔑んだ目で見ているのが空気で伝わってくる。
「リョウ、あっち行くぞ」
凌は俺にのし掛かったリョウを呼ぶと広場の方へと一人先に歩いて行った。
「川澄さん、達哉みたいな馬鹿が隣に引っ越して来て迷惑でしょ? 無視しといたらいいからね、あと家中のカーテン閉めておかなきゃダメよ! コイツきっと良からぬことを考えるから」
「なんだよ " 良からぬこと " って、する訳ねえだろ! だいたい芽衣が近所に居た時にそんなことしたことあったか? 一度でも」
「そりゃ私が気付いてなかっただけでバレないように上手くしてたかも分かんないじゃん」
「興味ねえよお前の私生活なんか」
「…… 」
「ほんと仲いいよね二人って」
「別に良くないし」
「別に良くねえし」
ほんの一瞬出来た沈黙にすかさず川澄がフォローを入れてくれたおかげで何事も無かったかのように話は続いたけど、こういう所なんだろう、俺のデリカシーの無いダメな所って。
「そういえば瀬野君、上杉先生って以前三沢学園で中等部を教えてたの?」
「ん? それは知らないけどウチの学校に来る前はしばらく塾の講師をしてたって聞いたよ、なんで? 」
「三沢学園の知合いの子がもしかしたら「あの上杉先生かも」って」
「あの? もしかして問題教師とか? 」
「それがね…… 」
川澄はじっくりともったいぶりなかなか続きを言い出さない、光彦先生はあんな優しそうな顔をしているのに実は暴力教師なのか?それとももしかして教え子の女子中学生に手を出すようなロリコン教師なのか、どちらにしても今の光彦先生からは想像のつかない姿だ。けどそれなら凌が心にあんな風に闇を持っていることも頷ける、実の父親が暴力教師か変態ロリコン教師で学校を首になったというのなら。
「それが? …… 」
「すっごく熱心でめちゃめちゃ生徒達に人気があったんだって、だからその知合いの子が羨ましがっていたの、" あの上杉先生に教えてもらえるなんて " って」
肩透かしを食らったけど正直安心した、一応俺の父親でもある訳だからやっぱり変態ロリコン野郎は嫌だ。けどそれなら凌の心の闇はいったい何が原因なのだろうか? あんな奴でも俺の妹には違いないんだから兄として少しは気にしてやろうと、遠くでリョウと遊んでいる凌を見ながら思った。




