表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/43

限りなく透明に近い闇

「これ」


それは俺が自分の部屋でのんびりと横山光輝の三国志を読んでいた時のことだった。突然部屋に入ってきた義理の妹の(りょう)にプリント用紙を渡されたのだ。


「お前さぁ、ノックもせずにいきなり男子高校生の部屋に入って来るとかマナー違反だろ? もし俺が今こうして読んでる本が『横山三国志』じゃなくて『淫乱若奥様赤裸々白書』とかだったらどうするよ? お前も中1ならそれくらいの配慮が出来るようになれよな」


「馬鹿」


「馬鹿? そりゃ少し言い過ぎじゃないのか? 仮にも俺はお前の兄貴なんだからな? 」


「いいから、そんなことどうでもいいからコレ」


「なんだよ、ん? むむむ…… 三者面談? だったら光彦先生か母ちゃんに渡してこいよ、俺は関係ないだろ」


「父さんは私のことなんか興味無いから、それに、お…… お母さんも忙しそうだし、お前部活もしてないしどうせ暇だろ? お前が来い」


「むむむ…… もうよい、それ以上言うでない」


「お前さっきから喋り方変だぞ。 どうせ漫画の影響だろ? すぐに影響されて、単純だな」


「だ、だ、だまらっしゃい! 」


「キモ」


凌はそう言い捨てて自分の部屋へ戻って行った。しかし光彦先生が娘の自分に興味が無いと言うのはどういうことだろう? 優しいだけが取り柄のような人なのに。頼りなさは(いな)めないけど、それでも赴任して来たばかりなのに俺たちの学校でも光彦先生の国語の授業は面白いととても評判が良い。着任時こそ、その風体から生徒の誰もが全く相手にしていなかったのだけれど、教科書を一切開かずに進めて行く授業のやり方は生徒たちには好評だった。それにそんな型外れな授業でも今のところ特進クラスのカリキュラムでさえ十分カバーしており苦情などは出ていない。


凌の母さんは凌が6歳の時に病気で死んじゃったそうで、それ以来光彦先生と婆ちゃんと3人で暮らしてきたと母ちゃんから聞いた。婆ちゃんも悪い人じゃ無さそうだし、父親に対する嫌悪感みたいなものは年頃の女子特有の悩みなんだろうと、俺はあまり深くは考えずにそのプリントを母ちゃんに渡した。


「え? 三者面談? 行くわよ決まってるじゃない」


「けどアイツ母ちゃんも忙しいから無理だって諦めてたぞ」


「そう、凌ちゃんが…… 」


「ただいまー 」


「ワォーン」


「分かったわ、光彦さん(みっちゃん)帰ってきたから後で相談してみる」


その夜は話はそれで終わった。母ちゃんと光彦先生がどんな話をしたのかは分からないけど、それから何日か経っても凌から文句を言われることも無かったからもう俺の出る幕では無いだろう。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ