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ポエニクスへ

 



 翌朝、私とプラダは荷物を整えて出発の準備をした。


 幸いな事に先日、半次郎とスーナと共に『デプレダドル』の連中を襲撃した際に徴収した馬車があったため、多少の長旅くらいなら問題ないくらいの食料が持ち運べる。


 これなら、向こうに行くための余計な出費をせずに済むという話だ。



「さて、そんじゃ行くとするか」

「そうね、……食べ物はちゃんと積んでる?」

「問題ねぇ、必要な費用もしっかり積んだよ、あと、密造酒とタバコもな」



 そう言って、私は馬車の荷台に乗る。


 レディスト家の土地で作ってる密造酒に加えて最近はタバコも作り始めた。


 せっかくポエニクスに行くんだから、相場を知りたいという理由でこの二つを今回、持って行く事に決めた。高値で売れるようなら今後はそちらにも定期的に運んでいきたいと考えている。


 それから、馬車の運転に関してだが、それについてはプラダに全部任せっきりだ。


 私は馬車なんて運転したこと無いしな、有事の時だけ働かせてもらう感じになっている。適材適所って事だな。


 まあ、そうそう襲われるなんて事もないだろうし、大丈夫とは思うが何があるかわからんからな。



「気をつけるんだぞ」

「ご武運を! 気をつけて」

「私達もお仕事頑張るからね!」

「ボスー! 頑張ってね!」



 そう言って、スーナ、エルフのカリファや元貴族であるマーレイ、半獣のフルシュがわざわざ私達の見送りに来てくれる。


 そこまで心配しなくても大丈夫なのにな、それこそ、私やプラダは極悪な街でも生きていけるくらいの技量を持ち合わせているのだから、ちょっとやそっとの事じゃ死んだりなんてしない。


 関わってきた奴がむしろ死ぬとか、そういうレベルである。


 それから、荷を積んだ馬車はゆっくりと動き始める。


 ポエニクスまでのちょっとした旅だが、まあ、外を見るには良い経験になるだろう。




 それから、暫くして、私は拳銃を片手に男を殺している真っ最中だ。


 半日くらいでまさか変な輩に絡まれるとは思いもしなかったけどね、緑の草原が今じゃ血が辺りに散らばって血と緑が混ざったグロテスクな雰囲気に大変身だ。


 ことの経緯を話すと、ありがちな話だ。盗賊が待ち構えていて私達の荷を狙っていた様なので皆殺しにしてやった。



「あーあ、汚ねぇなほんと…。旅の間は風呂入れねぇんだぞお前?」

「…ご、ごめんなさいっ! すいませんでしたぁ! み、見逃してくだ……あぎゃあ!」



 私はグダグダとうるさい男のデコにナイフを突き刺して黙らせ、そのまま、死体を蹴り飛ばす。


 謝るくらいなら最初から襲うなって話だ。どうせ、馬車に乗ってんのがプラダみたいな女だけと思ってたんだろうけど、そんなうまい話があるかよ普通。


 奴らの命乞いする姿がみっともなくて見てられなかったよ、ほんと。


 私は死体になった盗賊達の身包みを剥がしはじめる。



「よし、こいつらの装備全部剥がしてかっぱらおう」

「…これはどっちが盗賊かわかったもんじゃないわね…」

「ほら、プラダ、お前も手伝えよ」

「はいはい」



 そう言って、私達は盗賊達が持っている金品から服、装備や服に至るまで全部引っぺがして馬車の荷台に積んだ。


 流石に汚そうな奴だったり使えなさそうな物は全部捨てたけどな、できればこういうのも再利用して何かしらの用途に使えればよかったんだが、今回の旅の本来の目的はそれでは無いし別に今は必要ないだろう。


 それからの旅は特には問題なかった、何度か野営する事にはなったが、それくらいだろう。


 まあ、それでもポエニクスまで着くのに二回ほど盗賊と同じように遭遇することにはなったけどね。


 その度に野盗達の身包みを剥がして、ポエニクスで売るものが増えた。


 これはいずれ何かしら手を打たなきゃならないかもな、私の組織の馬車だとわかる旗とか印をつけといたほうが良いかもしれないな。



「ロホー、着いたわよ」

「…ん?…」



 それから、三日目の昼、私達はポエニクスの首都、イスレタに辿り着いた。


 街の様子を見渡してみると、かなり賑やかな市場が広がっていた。


 ドラグニクス帝国の属国になっているとはいえ、凄い活気的な街だなと思った。そして、そのイレスタを象徴する様にそびえ立つでかい城とコロッセオは嫌でも目に飛び込んでくる。


 荷台に乗っている私は懐からタバコを取り出すと火をつけながらめんどくさそうにプラダに問いかける。



「そんで? まずどこ行くよ」

「とりあえず裏の市と、普通の市の両方ね、まずは密造酒とタバコの値段を見ておきたいし、あとは…それ」

「あん?」

「あんたが身包み剥がした盗賊達の物品よ、かなりの量になってて、この馬車の重量カツカツなんだからね」



 そう言って、呆れたようにため息を吐くプラダ。


 実際、その通りだ、金目になりそうな物は全部ぶん取ってきた物だから馬車の馬も悲鳴を上げつつある。


 これは早急になんとかしてやらないとな、流石に馬がかわいそうだ。


 そういう事でまずは盗賊達から奪い取った装備品や金品を全部売っ払う事にした。


 もちろん、金品交渉はプラダの得意分野である。商人達を手玉に取るのはお手の物だし、私もそっちの分野には目が利く方だ。



「この値段で…」

「寝ぼけてんならいますぐ起こしてやろうか?」

「ひぃ!? も、申し訳ありませんっ! これくらいでなら…」

「ふーん、本当にそのくらい?」



 取引に応じた商人達はだいたい皆揃いも揃って涙目になっていた。


 もちろん、ちゃんとした交渉をしようとしている商人にはそれなりにちゃんとした代案を提案をさせてもらったし、逆に足元見ようとした奴に関しては容赦なく恐喝、脅迫、脅しを存分に駆使させてもらった。


 たまに用心棒が出てきたりもしてきたが、目の前で半殺しにしてやったら手のひら返したようにペコペコしたのには本当に笑ったよ。



「うーん、だいたい相場はこんなものか」

「儲かりそうか?」

「良い商人が何人か見つかったわね、割と高価だったからそことの取引を中心に考えても良いかもしれないわ」



 プラダは紙に書き記した相場を見比べながら私に告げる。


 それなら安心かもしれないな、定期的に取引しに行って得意様になればもっと優遇してくれるようになるかもしれない。


 さて、費用もかなりの額を稼げたし、これなら、三人くらい戦闘員を雇ってもお釣りが来るだろう。


 私はプラダにこう告げ始める。



「そんじゃ、そろそろメインのコロッセオとやらに行くとするか」

「そうね、これなら優秀なのを三人から四人くらい雇えそうだしね」



 こうして、売るものを全て売り払った私達は今回の目的地であるコロッセオに向けて馬車を動かし始める。


 コロッセオか…、奴隷市で買った半次郎、スーナくらいに果たして強い奴らなんて居るのか、こればかりは見てみない事にはわからないな。


 出来れば良い人材が居てくれればいいけど。

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