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これからのこと

 


『デプレダドル』への夜襲を成功させた私達は奴らの馬車をそのまま拝借し、オベッハプエブロへと無事に戻って来ることが出来た。


 連中から道中襲われる事もなかったから、比較的に安全に帰ってこれたと思う。


 奪った金品についてもアジトについてからプラダの奴に見せたら度肝を抜かれたような顔して驚いていたのは、本当に傑作だったよ。


 馬車にある荷台の中身を確認したプラダは目を輝かせながら私にこう告げて来る。



「凄いじゃない! これ、相当な額になるわよ!」

「だろ? …村の連中全員の仇討ち代としてありがたく奴らから頂戴したよ」

「仇討ち代?」

「あぁ、そのことについても話とかなきゃな、実は…」



 私はこの金品を『デプレダドル』という連中に襲撃を仕掛け、皆殺しにしてぶん取った事をプラダに伝えた。


 それを聞いたプラダは先程の喜んでいた表情が一変し、深いため息を吐いた後、頭を抑えはじめる。


 この事を話して、そういう反応が返ってくるのは私としても想定済みだったけどな。



「…戦争になるわよ? こっちは戦闘員三人しかいないのにどうすんのよ」

「むしろ、私らだけで充分だろ」

「そうはいかないでしょ、ここを襲撃されたら私やマーレイ達じゃとても対処出来るとは思えないし、ラネラさんだけじゃ私達を守り切れないわよ」



 そう言って、真剣な眼差しを私に向けてくるプラダ。


 確かにプラダの言い分も一理あるし、むしろ、その通りだという点の方が大きい。


 私らだけだとこのファミリーを守り切るにはかなり厳しい部分がある。腕が立つ戦闘員はもっと入れておかなくてはいけないだろうな。


 とはいえ、私とて何も考えなしに奴らに襲撃を仕掛けたわけではない、その部分に関しては一応、手は打ってはいる。



「一応、今回はモンストルオから人員を手配してもらえるようにはしてはいる」

「そう、それならまだマシだけど…」

「…が、それでも用心棒はいるなとは私も前々から思っていたんだ」



 それを聞いたプラダは私の意見に同調する様に頷く。


 これから先、もしかしたら『デプレダドル』以上に大人数の盗賊団や組織と殺し合いをすることだって充分にあり得る。


 そう考えた時に、マーレイ達やプラダを守れるような人間が居てくれた方が私としても後ろを安心して任せられる。


 これに関しては騎士であるスーナを配置しておくのも手ではあるが、私と半次郎だけだと出来る事は限られてくるからな。



「奴隷市でも明日覗いてくるか…」

「いや、それならもっといい場所があるわ」

「ん…? なんか心当たりがあるのか?」



 そう首を傾げて問いかける私にプラダは意味深な笑みを浮かべ頷く。


 奴隷市でもスーナや半次郎のような優秀な戦闘員が手に入ったし、別に私はそれでも構わないんだけども。


 すると、プラダは私達が回収した金品と今回得たギルドやティグレの師匠から受け取った報酬に視線を向けるとこう語り始めた。



「お金もある事だしね、どうせならコロッセオから雇いましょう」

「コロッセオ?」

「奴隷達に殺し合いをさせる娯楽施設よ、…そこから優秀な人材もいるでしょうしね…場所はここから馬を走らせて橋を渡ってポエニクス公国に行かなきゃならないけど」



 そう言って、肩を竦めるプラダ。


 ポエニクス公国か…。私はレジバルド皇国から一度も出た事も無いし、ましてや、プラダ達に会うまではエスケレトプエルトから滅多に出た事すら無いのだ。


 それをいきなり、国境を越えてポエニクス公国まで行く事になろうとはね。



「どのくらいかかるんだ?」

「そうね、首都のイスレタまでは大体三日くらいかしらね、オベッハプエブロからはそう遠くないわ」

「そうか」



 考えるように顎に手を添えていた私はプラダの言葉にそう答える。


 三日かそれくらいなら別段、時間も食わないし『デプレダドル』の連中もまだこちらを襲撃するための体制も整っていないだろうから多分、大丈夫だ。


 半次郎とスーナは今回は置いていくしな、何かあっても二人なら対処出来る筈だ。



「じゃあ、決まりね出立は明日?」

「あぁ、こういうのは早い方が良い」

「わかった、なら食料とか必要なものを用意しとくわね」



 プラダはそう告げると手のひらをヒラヒラと返しながら、私の決定に答える。


 ひとまず、用意するものはさっさと用意して、明日の朝一からイスレタに向かった方が良いだろうな。


 さて、そうと決まれば、私も準備するとするか。


 そう思い、荷造りをしようと私が部屋に戻ろうとした矢先、ラネラが私の肩を叩いてきた。



「よぉ、大将、ちょっと見て欲しいものがあるんだが今時間良いか?」

「…ん? なんだ?」

「…こいつなんだが」



 そう言って、ラネラが私の目の前に差し出してきたのはシリンダーであった。


 私はそれを見て、目を見開く。まさか、あの私の銃を一回だけ弄らせただけでここまで作ったのか、これ。


 目を丸くしてる私にラネラは困ったような表情を浮かべ、こんな話をしはじめる。



「いやな、シリンダーってのは出来たんだが…どうにも銃身が上手くいかんでな、よかったら、今晩だけそれを預けてはもらえんかね?」

「いやいや…大したもんだぞお前…。凄いぞ」

「まだまだよ、完成品ができとらんからな」



 ラネラはため息を吐いて肩を竦める。


 以前、ラネラにフリントロック式の銃を扱った事があると聞いて、もしかしたらと思い、実は密かに拳銃の製造をラネラにお願いしていたのである。


 これに関してはマーレイ達の護身用に持たせておきたいという私の思惑があった。銃さえあれば、女であっても引き金さえ引けば人を殺せるしな。


 ただ、この品に関しては私の銃とは違い魔導コアは入っていない為、有限の弾を作って装填しなくてはならなくなる。


 そうなると、薬莢を作らなきゃならないし弾数にも限りが出てきてしまう事だろう。



「…弾丸もな…そのうち量産できる体制を整えるような形にしてもらわんと宝の持ち腐れになっちまうぞ?」

「あぁ、…それについても検討してみる必要があるだろうな、…まあ、今はそれよりも戦闘員だが」



 そんな話をしながら、私はホルスターにある愛銃を取り出すとそれをラネラに手渡す。


 何にしても、ラネラには頑張って貰わねばなるまい、そして、拳銃が出来上がった際には私専用の魔導コア入りの銃も作って貰えるようになって欲しいものだ。


 メンテナンスとか個人的にやってるしな、ラネラにそこら辺を全部任せれるようになればだいぶ楽になる。



「じゃあ、私は明日に備えて用意するよ」

「おう、おやすみ大将」



 私はそう告げるとアジトにある自分の部屋に入っていく。


 このアジトはまだまだ足りないものが多いし、今後はどんどん充実させていきたいと考えている。それに、前にも話だが、本格的に商売が回りはじめるのはもう一つの拠点をエスケレトプエルトに置いてからだ。


 私の目標はとりあえず、自分の船を持つことだしな、それにはちゃんとした資金繰りの経路も作らないといけない。


 これから先、まだまだ、やらないといけない事がたくさんあるなと私は改めてそう思った。

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