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襲撃の計画

 



 ティグレの師匠と倉庫街から別れて数日が経った。


 私達はというと、ギルドの宿でひたすらティグレの師匠からの連絡が来るのを待っているところだ。


 まあ、私は別行動でティグレの師匠から頼まれた殺しの仕事をその間に済ませているわけだが。


 どうやら、私のターゲットに選ばれた奴等は裏で奴隷船の斡旋や薬にまで手を出そうとしていたらしく、それを『モンストルオ』の名前を持ちだしてしていたらしい。


 そりゃ、殺されても文句は言えないな、しかも、聞くところによるとそいつらはティグレの師匠が慈悲で生かしてやった上に仲間にしてやった元『セメンテリオ』の構成員だとか。


 とはいえ、今回の一件で、『モンストルオ』内にいるであろう『セメンテリオ』の元構成員だった奴等は全員密かに粛清という目に遭う事になった。


 やはり外部の人間は信用できないという事だろう。生憎だが、こればかりは致し方ない。また、裏切り者が出てもおかしくないだろうしな。


 裏切りには粛清が待っている。そもそも、何人掛かりでもティグレの師匠とその側近は殺せやしないだろうけどね。


 私が殺れる気がしないのだから、間違いない。


 さて、話を戻すが、そいつらを始末するように言われている私は今、ターゲットであるティグレの師匠を裏切った奴の額に銃口を突きつけてやってる最中だ。



「ね、姐さん! 見逃してくれよ! な! お願いだ」

「悪いがそれは無理だ」



 ガンッという銃声が裏路地で鳴り響き、額に風穴が空いた黒服の男は力なくパタリと死んだ。


 私相手に見逃してくれなんて通用すると思ってたのかね? 


 取り出した愛銃の血を拭き取りながら、ため息を吐き、路地裏を後にする私はタバコに火をつけながら上を見上げる。


 そこには綺麗な空が広がっていた。



「あー…ボチボチ仕事は片付いたし、そろそろティグレの師匠から連絡あってもおかしくはねぇんだけどな」



 めんどくさそうにそう呟く私。


 自分で動いて奴らの所在を見つけた方が良かった気もするが、下手に刺激してこちらの存在がバレたらそれはそれで厄介だ、だからこそ、こうやって暇つぶし程度に頼まれた殺しをこなして連絡が来るのを待っているんだが、どうにも、私の性分的に待つのは合ってないらしい。


 スーナや半次郎も動きたくてウズウズしてるだろうなとは思うが下手にあいつらを連れて目立つのも良くないからな。


 だから、わざわざこうして頼まれた仕事の依頼を私一人でこなしてる訳なんだが。



「さて、一旦ギルドに戻ってみるかな」



 あれからだいぶ時間も経ってるし、そろそろレディストの姉御に連絡が入っていてもおかしくないだろう。


 ついでにこいつを始末した報酬金を姉御から受け取らなきゃならんしな。


 私は吸っていたタバコを指先で弾くように捨てると、スーナと半次郎が待つ宿に一度戻ることにした。




 エスケレトプエルトのギルド。


 ティグレの師匠から受けた殺しの依頼を済ませた私は奴の持っていた血塗れの『モンストルオ』のバッジを片手で投げるように遊ばせながらギルドの扉を開ける。



「ん…?」



 そこには壁に身体を預けるようにして立ってるスーナとカウンターで呑気に昼間から娼婦を片手に酒を呑んでる半次郎の姿があった。


 どうやら、見る限り私が帰ってくるのを待っていたらしい。


 私だけで殺しの仕事はしちゃってたからな、暇を持て余すのも致し方ないと言える。



「おう、遅かったじゃなかか! 大将! おいは暇すぎて姉ちゃんを呼んで酌して貰っとったわ!」

「全く、なんで昼間っから呑んでるんだ貴様は」

「固いこと言わんと、スーナどんも呑まんね」

「呑むか! 馬鹿者!」



 そう言って、半次郎は断るスーナに、ノリが悪かのう、とぼやいて隣で侍らしている娼婦のお姉ちゃんと乾杯とグラスを合わせていた。


 お前、本当に馴染みすぎだろ、と私は心の底では思ってはいたものの口には敢えて出さず、ため息を一つ吐いて、血がついた『モンストルオ』のバッジを弾くようにしてレディストの姉御に渡す。



「おらよ、殺ってきたぜ」

「はい、ご苦労さん、これ報酬」



 そう言って、レディストの姉御は事前に用意していた報酬を私に手渡してくる。


 ちなみに、半次郎が飲んでる分と娼婦に酒を酌させてる分は差し引いた報酬である。


 まあ、微々たるものなので、さほど気にする額でもないんだがな、どうせ、その分働いてもらう予定だし、経費みたいなものだ。


 私はカウンターに座るとレディストの姉御にこう問いかける。



「それで? 連絡は?」

「来たわよ、だからこの二人もこのギルドに来て貴女を待ってたってわけ」

「そういう事だ」



 そう言って、スーナは肩を竦めてレディストの姉御から聞いた話を肯定する様に告げる。


 なるほどな、だからか、こりゃちょっと待たせてしまってたみたいで申し訳ないな。


 とりあえず、奴らの居場所が分かったって事なら話は早い、まずは、襲撃の計画を練る必要がある。



「んで? 場所は?」

「『セメンテリオ』が前、アジトにしてた賭博場跡ね、話によると人数は十人から十三人程度ってとこかしら」

「あぁ、あそこか」

「知ってるのか?」

「まあな、前に『モンストルオ』の兵隊連れてかち込んだとこだ、場所はわかる」



 私はタバコに火をつけて、煙を吐きながらスーナに告げる。


 場所自体はそんなに大した場所ではない、一度かち込んだ事があるから構造もわかるしな。しかしながら問題はやはり、いつ仕掛けるかが重要だ。


 正直言って、この程度なら正面から殺し合いを仕掛けても全然問題は無いんだが、あまり面倒なのも嫌だからな。


 さて、どうしたもんか。



「夜襲でええじゃろ、そんくらいの人数ち言うんならこの三人なら問題はなかろう」

「そうだな、正面からの斬り合いというなら私も異論は無いよ」

「…あーあ、脳筋どもはこれだから」



 私はカクンッとため息を吐いてそう告げる。


 とはいえ、そちらの方がシンプルで良いのは間違い無いし、この街でやるならどうせなら久しぶりに派手に暴れるのも悪くないだろう。


 私は愛銃のシリンダーの中身を確認して異常がないか確認する為に軽く回すと、それを軽く手首を翻して元に戻し、ホルスターに仕舞う。



「それじゃ決まりだな、今夜決行だ。お前ら二人とも武器の手入れはちゃんとしてろよ? 今夜は血だらけになるぞ」

「ハハッ、慣れっこじゃ」

「どうせ戦場よりは流れる血は少ないんだろ? 問題ない」



 そう言って、私の言葉に不敵に笑うスーナと半次郎の二人。


 どうも、しばらくジッとしていたせいかスーナまで好戦的になっているような気がするのは、おそらく間違い無いだろう。


 何を言ってもやはり、二人とも悪く言えば脳筋だが、武人は武人なんだなと私は素直にそう思った。

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