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犯罪都市


 


 さて、無事にエスケレトプエルトに馬を走らせたどり着いた私達だったが、問題はここからだ。


 あの村からの略奪者を洗い出さねばならない。


 エスケレトプエルトの街の入り口には、私にはなんて事はない光景なんだが、白骨化した遺体が十字架に張り付けのまま放置されている。


 ある種、これもエスケレトプエルトの観光スポットと言えるだろう。


『Welcome』と書かれた看板とは裏腹にこの街の異常さが街の入り口から滲み出ているのは明らかだった。



「さてと、帰って来たわけなんだが、まずはレディストの姉御のとこに顔出すか」

「レディスト?」

「プラダの姉ちゃんだよ」



 私に問いかけてきたスーナはその言葉を聞いた途端、嫌そうな顔を浮かべた。


 いや、そんな顔しなくても、レディストの姉御はこの街でもかなりの良識人なんだけどな。


 一方で、半次郎はというと結構馴染んでいる様子だった。先程から街に入ってギルドに向かって歩いているのだが、そこら辺にいる娼婦のお姉ちゃん達から逆ナンのように声を掛けられている。



「ねぇ…お兄さん、今から気持ちいい事しない? 安くするから」

「私はお兄さんならタダで良いわよ」

「あははは、…今は仕事中じゃ、また次の機会じゃの」

「やん、いけず」



 私はそんな半次郎の姿を見て苦笑いを浮かべる。


 何というか慣れ過ぎていて、逆に感心するくらいである。


 まあ、元々、こういう場所に慣れているのかもしれないがらしいと言えば半次郎らしいか。


 ギルドにたどり着いた私達は早速、カウンターに居るレディストの姉御の元に向かった。



「あらー、ロホじゃない? お帰り」

「よぉ、姉御、変わりないか?」

「うん、相変わらずよ、何飲む?」

「いつものやつ頼むよ」



 そう言うとレディストの姉御はニコニコと笑いながら、わかったわ、と一言だけ告げるとブランデーをグラスに入れて私の前に置く。


 そして、私の両隣に座るスーナと半次郎にそれぞれ視線を向けながら、こう問いかけた。



「お二人は?」

「あー…私は…赤ワインを」

「おいは焼酎が良いんじゃが、あるかの?」

「えぇ、あるわよ、ちょっと待ちなさい」



 そう言うとレディストの姉御は二人にもお酒を用意してそれぞれグラスをカウンターのテーブルに置く。


 久しぶりのブランデーはやっぱり身体に染みるな、この場所で飲むこのお酒はやっぱり格別だ。


 それから、それをそれぞれ口に運ぶと早速、レディストの姉御は私達にこう問いかけてくる。



「それで? プラダは?」

「オベッハプエブロに残してきてるよ」

「あら? 良い娘だったでしょう?」

「どこがだよ、ありゃ、完全にこっち側の人間だろうが」

「そりゃそうよ、だって私の妹だもの」



 そう言うとレディストの姉御はおかしそうにクスクスと笑っていた。


 いやまあ、そうなんだけども、それでも写真を見る限りではまだ可愛さがあったと思うんだ、完全に騙されたが。 


 とりあえず、その件は今はどうでもいい、とっとと本題に入るとしようかな。



「あのよ、この街に最近、見ない奴らが来てねぇか?」

「新顔ぉ? うーん、この街ではしょっちゅうだからねぇ」

「実はある奴らを私らは追ってんだが…」



 そう言うとレディストの姉御は思い出すように考え込みはじめる。


 確かにこの街じゃ人の出入りなんてのは頻繁にある。それを全て把握するなんてのはよほどの暇人か狂人かどちらかだろう。


 すると、レディストの姉御はしばらくして、私に向かってこんな提案を投げかけてきた。



「ティグレさんのところに行ってみたらどう?」

「うへぇ、かあちゃんのとこはちょっと」

「何言ってんの、たまには顔出しなさい」



 そう言って、レディストの姉御は魔導通信機を使って連絡を取り始める。


 連絡先はもう分かり切ってるけどね、うん、どうせ、ティグレの師匠のとこだろう、私はかあちゃんとか師匠とか呼んでるけども本当にお世話になった人だ。


 以前にも話したが、この街を取り仕切る顔役の一人でもある、『モンストルオ』というマフィアのボスだ。


 まあ、確かにティグレの師匠ならこの街の情報を大体把握してるだろうし、私がこの街に帰って来てるのももう把握している事だろう。



「ティグレさん、会ってくれるってよ」

「場所は?」

「港の倉庫街、ちょっと取り込み中だけど問題ないって」



 私はレディストの姉御の言葉に顔を引きつらせる。


 ティグレの師匠のちょっと取り込み中はご察の通りだ、ぶっちゃけ、一般人ならちょっとどころのレベルではない。


 まあ、大方予想はついてはいるが、とりあえず行ってみるか。


 一方で話を聞いていたスーナは不安げな様子で私にこう問いかけてくる。



「…なぁ…本当に大丈夫なのか?」

「…大丈夫とは思う…多分」



 ぶっちゃけると自信がない、ティグレの師匠だし、大丈夫とは思いたいけども。


 こんな不安げなスーナがティグレの師匠と対面したら彼女が度肝を抜かされてしまうだろう事は容易に想像できる。結構、強烈な人だからなティグレの師匠は。


 こうして、私達はひとまずギルドから出て、指定された港の倉庫街に向かい移動する事にした。


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