賊の話
それから、私は助けた村娘からあらかた事情を聞く事ができた。
結論から言うと、どうやら、私達が村を調査して思った調べた通りの事があの村で起こったらしい。
まあ、予想はついてだけどな、やはり、1番怖いのはモンスターではなく生身の人間って訳だ。
「恋人も殺されて、無念だったな」
「うっ…あ、あんな事になるなんてっ…」
「心配すんな、仇はとってやる」
「えっ?」
私がそう言って、肩をポンと叩くと村娘は目を見開いて驚いたような表情を浮かべていた。
仇は取るし、それに見合った報酬もそいつらから奪い取る。
悪党は悪党らしいやり方っていうものがあるしな、どちらかと言えば、私達はこっちが本業だ。
それからしばらくして、ギルドの馬車が到着し、被害に遭った村娘達はそれに乗せられオベッハプエブロへと向かっていった。
私はその馬車を見送ると、タバコに火をつけ煙を吐く。
タバコを吸っていると、半次郎は刀を肩に担ぎながら私にこう問いかけてきた。
「そんで、どがんするんじゃ大将」
「一度、オベッハプエブロに戻るのか?」
半次郎に同調するようにスーナもまた、私にそう問いかけてきた。
さてな、どうしたもんかね、確かに報酬を貰いにオベッハプエブロに戻るのも手だし、ギルドの方に報告した方が良いのも間違い無いんだが、いかんせん、村をモンスターに襲撃させた奴らが大人しく今回、村から略奪したお金を全て使い込まないという保証はない。
となれば、スピードが大事になってくる。迅速に奴らの居場所を特定して皆殺しにし、そのお金を丸々略奪する必要性があるのだ。
「まあ、待てよ、少し考えてんだ…そうだな」
私はいろんな方法を頭の中で模索しながら考える。
正直、オベッハプエブロに戻ったとて、前線でまともにやり合えるのはここにいる私達くらいだ。
プラダのやつに根回しを頼んでもエスケレトプエルトの奴らに根回しが済むまで二日は最悪掛かる。
ここからオベッハプエブロに戻るまでの日数を考えるとそんな暇も時間もないだろう、なら、今からすべき事は一つだ。
「私らはこのまま馬を走らせてエスケレトプエルトに向かう」
「!? 何っ!」
「ほぅ」
一仕事終わったばかりなのにオベッハプエブロに戻らず、そのままエスケレトプエルトに向かうと告げた私に二人はそれぞれ声をこぼした。
まあ、スーナが驚くのも無理ないわな、根は真面目そうだしギルドに報告して報酬を得ようと素直に考えてたんだろう。
だが、察しが良い半次郎は直ぐに私が考えている事を理解したのか面白いという表情を浮かべていた。
「まあ、もうひと戦するのも嫌いじゃなかど、ほんじゃま、行くかの」
「おい! ギルドの報酬は…!」
「そげんなもんは後で良かが、なぁ大将」
そう言って、とっとと馬に跨る半次郎の姿に笑みを浮かべる私はその言葉に静かに頷く。
スーナは頭が痛いとばかりに渋々、半次郎と同様に馬に跨った。
まあ、気持ちはわかるがな、悪党っていうのはそういうものだ。多分、プラダもこの場にいたらなら同じ判断をしてただろうしな。
私も素早く愛馬のシャンドレに跨がると、スーナに向かってこう告げる。
「ウチは所帯が増えてきたからな、金を多くぶんどれるんならそれに越した事はねぇだろ? そういう事だ」
「…はぁ…貴女って人はもうっ…」
「出発だ、…ハッ!」
そう言って、私はシャンドレの脇腹を軽く刺激してやり、馴染み深い街、エスケレトプエルトに向けてシャンドレを走らせる。
それに続くように半次郎とスーナもまた、私の背後から追従してくる形で馬を走らせ始めた。
さて、後は奴らがどこに潜伏してるのか割り出すだけなんだが、それは、また街に着いてから考えれば良いだろう。
まあ、村を襲撃した奴らからしたら、私らのことは誤算だっただろうな。
「そういえば大将、街にあてはあるんかの?」
「まあな、ていうか、あの街は私の育った街だぞ、たくさんあるに決まってんだろ」
「…犯罪都市か…どんな街なんだ一体」
「行ってみりゃわかる、ビビるんじゃねぇぞ? そこら辺に死体転がってるのなんて珍しくもないからな?」
その言葉を聞いたスーナは余計に嫌悪感が増したのか嫌そうな表情を浮かべていた。
まあ、あんな街には騎士とか滅多に来ないだろうしな、来てもよほどの腕がないと普通に身ぐるみ剥がされたりするような街だし、弱肉強食を体現したやばい街だ。
とはいえ、私にはそれなりにってはあるし、よっぽどのことがない限りは多分、スーナに危険が及ぶことはないとは思う。
スーナなら自分の身は自分で守れるだろうから心配はしてないけどな。
それから、馬を走らせること半日、日が暮れはじめた頃、私達の走らせた馬は無事にエスケレトプエルトまでたどり着く事ができた。




