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狼煙

 



 さて、突入した私の銃声が廃教会で鳴り響いた頃。


 外ではそのタイミングと共に半次郎とスーナが外にいるゴブリンとオークに対して奇襲をかけていた。


 構えた日本刀を引き抜いた半次郎は一直線に周りを見渡しているオークに向かって突撃する。


 大きく振りかぶった日本刀と共にオークの目の前で踏み込みを入れ、跳躍した半次郎は声を上げながらそれを勢いよく振り下ろした。



「グォ…?」

「チェェェストォォォォォォ!」



 ガツンとオークの脳天に向けて振り下ろされた半次郎の日本刀は綺麗に頭蓋から真っ二つにオークを切り裂き、そのオークの身体からは噴水のように血を吹き上げた。


 いきなりの出来事に動揺するゴブリン達だったが、半次郎は日本刀を血を振り払うように軽く振ると鬼のような笑みを浮かべながらゴブリン達に視線を向ける。


 そして、そんな動揺しているゴブリン達を歴戦の女騎士であるスーナは見逃さない。


 すかさず、剣を構えた彼女はまるで舞うかのように背後からたった一振りで二匹のゴブリン達の首を跳ねてしまった。



「おぉ、良か腕じゃの」

「はは、正面からオークを真っ二つにしたお前ほどじゃないさ」



 二人はそんな他愛ない会話をしながら、廃教会から出てくる村娘達の姿を目視する。


 どうやら、あの様子を見る限り、自分達の大将は上手いように救出できたみたいだ。


 あとは村娘達をうまく逃してやるだけだが、騒ぎを聞いた森に潜んでいたゴブリン達が沸いて出て来ている。



「外は外で退屈はしなさそうじゃの」

「そうだな、どうする?」

「スーナどんはぁ、ちと、その女子らばぁ見とれ、奴らはおいが全員、殺ってくる」



 そう言って、半次郎は刀を鞘に収めて、スーナに村娘達の護衛をするように促し、ゆっくりとこちらに向かってくるゴブリン達へと歩を進める。


 その目は冷え切ったように冷徹であり、その目を見たゴブリンの何人かは足が竦んでしまっていた。


 そんなゴブリンを見ながら、半次郎は笑みを浮かべこんな話をし始める。



「あー、おいの住んじょった薩摩っちゅうとこはの、殿様が鬼島津っちゅうあだ名で呼ばれとったんじゃ…」

「グブォ! ゴブォ!」

「当然、主が鬼なら、薩摩におるもんは全員鬼子ちゅうわけじゃな、…今から主らに本物の鬼ば教えちゃる、覚悟せい」



 そう言って、日本刀を構えた半次郎は地面を踏み込むと一気にゴブリンと間合いを詰めて首を切り落とした。


 それを目の当たりにしていた他のゴブリン達は一気に半次郎に襲いかかろうとするが、そこからは、虎と鼠との戦いに等しいほど圧倒的な蹂躙だった。


 半次郎が刀を振るたびに綺麗に首や胴体が飛んでいき、ゴブリン達が悲鳴を上げる。


 遠距離から毒矢で仕留めようとするゴブリンも中にはいたが、そうなる前にさっきに気づいた半次郎はゴブリンの落とした武器を的確に投擲し、仕留めて見せる。


 戦闘が始まって10分足らずで、外にいたゴブリン達は全滅してしまった。



「凄いな…あいつ…」



 スーナも思わず、半次郎の腕前に感服してしまった。


 それほどまでに無駄がなく、綺麗な殺陣であった。あれだけの剣の達人はスーナは見たことが無い。


 そして、半次郎が刀を鞘にしまったその瞬間だった。廃教会からド派手な爆発が起こり、穴が開く。



「ウチの大将はぁ、まぁた派手にやっとるのぅ」

「言ってる場合か! おい、お前達! 教会から離れて向こうに移動するぞ!」



 そう言って、派手な爆発を見た半次郎がケラケラ笑う様子に呆れたように声を上げながら告げるスーナ。


 すると、廃教会の中から、銃を担いだロホが姿を表す。


 私は片手にオークの首を持ったまま、つまらなさそうにため息を吐き、それを外にいる半次郎の足元に投げた。



「てんで手ごたえがなかったな、こいつら」

「応! 奇遇じゃの大将! おいもそう思ったとこじゃ」



 これくらいのレベルの仕事なら、本当にそこら辺の冒険者でも余裕で倒せるくらいの依頼である。


 ただ、人質がいるから難易度が上がっただけなんだろうなとこの時、廃教会の中をゴブリンとオークの死体だらけにした私は思った。


 別に苦労するほど、大変というわけでもなかったし、多分、私の場合は人質が助けられんなと判断したらその人質ごとゴブリンやオークを撃ち殺せるくらいの非情さを持ち合わせているのも理由かもしれない。


 とりあえず、なんにせよ、依頼はクリアした、問題はこの救出した村娘達を村まで歩かせる事になるわけだが。



「それなら、さっき、魔法で電報をギルドに飛ばしておいた。あと2時間くらいで馬車がくると思う」

「あん? スーナって魔法できたんだな」

「基本だけだがな、まあ、大したことはないよ」



 そう言って、肩を竦めるスーナ、そんな中、自分達が助かった事に安堵し、村娘達があちらこちらで涙を流して喜び始める。


 そして、彼女達のまとめ役だろう若い女性が私のところに来ると手を祈るようにしながら感謝の言葉を告げて来た。



「ありがとうございます…! あの地獄から助けてくださり、本当に助かりました! なんとお礼をしたら良いか…!」

「あぁ、良いって、それよりも、あんたらにいくつか聞きたいことがあるんだが少し良いか?」



 私はタバコに火をつけながら、感謝を述べてくる女性にそう告げる。


 まあ、聞きたいことというのは言わずもがな、どうやって村が襲撃され、その日、不審な行動をしていた奴が居たかどうかという事である。


 正直言って、私達にとってのメインの仕事はそちらである。


 人為的に起こされた襲撃により失われたものと財産、そして、首謀者。


 私はタバコの煙を吐きながら、その事について彼女からことの顛末を静かに聞き始める。

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